家鳴り
初投稿なので拙いところもあると思いますが、楽しんでください。何卒よろしくお願いします。
—「響子、あなたの名前は響子よ」
柔らかな日差しの中、ほかのどの赤ちゃんよりも大きい産声を上げた赤ちゃんは、そう名付けられた。
「響子が奏でる音が、いつか世界中に響き渡るんだ!」
共に音楽関係の仕事に就く両親からの期待を込めての名前だった。響子は優しい両親の元で楽しく暮らし、音楽を楽しんで生きていく————
はずだった
「響子!あなたはなんでこんなことも出来ないの?」
母親のヒステリックな声が部屋中に響き渡る。両親の、ピアノを思う存分弾いて欲しいという期待から新居建築時に防音室を作ったが、世間へ漏れるのを防いでいるのはピアノの音ではなく、母親の罵声ばかりである。
「ご…ごめん、お母さん…も…もう1回弾かせて…!」
引っこみ思案な響子は親の罵声に耐えるのが精一杯で反論の余地すらなかった。大きかった声はすっかり小さくなっている。
「その言葉が何回目だと思ってるの?!こんなんじゃ、またお父さんに報告ね!」
「ま…まって!おかあさん!」
響子の顔には無数の痣ができていた。その痣の原因は…
「響子!まだそんなことも出来ないのか?!いい加減覚えろ!」
父親からの暴力だった。容赦のない拳が小さな響子の顔面に降り注ぐ。響子は抵抗もできず、泣き続けるばかりであった。
「こんなので泣いているようじゃ、まだ指導が必要だな!」
そう言うと父は部屋を出て防音室の扉の鍵を閉めた。
「前回は3日も閉じ込めたが、それでも駄目だった。
なら今回は4日だな」
「そうね。さすがに4日も閉じ込めればもう観念してピアノは上達してこれ以上監禁しなくて済むわよ」
両親は音楽のことに関して妥協は許さない性格であった。そのため娘に求めるものは大きく、ピアノが全く上達しない響子に苛立ちを感じていた。
防音室の中、響子は泣き続けていた。
「おとうさん…おかあさん!」
両親を呼ぶ声はか細く、2人に届くはずもなかった。
「うう…いたいよぉ…おなかへったよぉ…さみしいよぉ…」
響子が両親を呼ぶ声はだんだん小さくなり、響子の泣き声が響いていた防音室は、やがて静寂に包まれた。
母親の言ったように、防音室に閉じ込める必要はなくなった。4日後、響子の亡骸を見つけた両親は青冷めたが、我に返ると、急いで防音室から死体を取りだし、床下に埋めた。元々、音楽に集中させていて外にはほとんど出していなかったので、響子の存在を知る隣人はいない。両親は事件の隠蔽に成功した。響子がピアノを頑張っていた防音室にはさらに施錠をし、響子の思い出の品は全て捨て、2人は再び自分の仕事に集中することにした。 固く閉ざされた防音室は未だ静寂に包まれている。
数日後、夕食を食べている両親は奇妙な音を耳にした。誰もいないはずの防音室から音がしたのだ。2人は気のせいだろうと無視をしようとしたが、やはり聞こえるのだ。それも1種類ではない。扉を叩く音や獣のようなうめき声、さらには処分したはずのピアノの音さえ聞こえる。ことの異常さに気づいた2人は、数日後、家を売却し、全く離れた場所に引っ越した。その後の新居では奇妙な音もせず、幸せに暮らしたという。
「おとうさん、おかあさん、どこにいったの?響子はここにいるよ。ねぇ、おかあさん、おとうさん…!」————————————————————————
ある地域では、深夜になると何も無いところから音が鳴ったり、気配を感じたり、誰かから呼ばれているような気分になるという。さらには原因不明の病が流行し、何人もの犠牲者が出てるという。人々はその音が病気の前兆だと考え、「家鳴り」と呼び、恐れているそうだ。昔その地域に、娘を虐待し、死に至らしめた親が住んでいたことを誰も知ることはない。
—本作品は短編小説です。作者の次回作にご期待ください—
短編小説「家鳴り」どうでしたでしょうか。今回は短編小説となっていますが、長編小説も制作中です。短編小説も、また出します。それぞれの小説に、繋がりがあったりなかったりするかもしれません。今後もよろしくお願いします。




