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嫌がらせ

まず最初に、物がなくなるようになった。

シャワールームでは、シャワーを使っている間に化粧水や乳液が消え、食堂スタッフ用の更衣室に置いていた仕事用のエプロンもなくなった。

何かされるとしたらこれくらいはと思っていたから、特別ショックは感じなかった。

ついに来たか…!くらい。

幸い自室は安全地帯なので、私物は全て自室で管理して、公共エリアに置かないようにするだけで対処できた。

置引きができなくなると、今度は根も葉もない噂が流された。

仕事中、なんかみんなこっち見てヒソヒソやってんなー。

なんて呑気に思っていたら、なんとわたしはハイスクールで男をとっかえひっかえしていて、食堂での仕事につく前は風俗店で働いていて、今も影でこっそり売春してることになっているらしい。

仕事終わり、料理長に事実確認されて、そんな噂があるのかと驚いたものだ。


「まさか。そんな百戦錬磨じゃないです」

「だよな。お前艶っぽさが全然ないもんな」


めちゃくちゃ失礼なことを言われたけれど、料理長はあっさり信じてくれた。

料理長だけでなく、食堂のスタッフのみんなもあっさり信じて、すぐに状況を理解してくれた。


「なんかさー、部屋と職場が安全って、すっごくありがたいわ」


就寝前、ジェシカ、ミシェル、ケイトとくつろいでいる時、安心して寝たり仕事したりできることのありがたさを、しみじみと感じた。


「何しみじみしてるのよ」

「んー、今ありがたさを痛感してる」

「友達なんだから当たり前じゃない」


三人の優しさに心が解れていく。

置引きも噂も、あまり相手にしていないつもりだったけれど、悪意にさらされるのはやはりエネルギーを削られる。


「ノアはこのこと知ってるの?」


ジェシカは心配そうに聞いてきた。

ノアには何も言っていない。

多分ノアは気づいてる。

でもわたしが言わないから、気づいてないフリをしてくれている。


「平気だから言わない。理解してて欲しい人達はみんな、ちゃんと本当のこと知ってくれてるし」

「エスカレートしたらどうするのよ」

「ミコトだけの問題じゃないでしょ?」


ミシェルもケイトも、ノアと一緒に解決すべきだと言う。

本当はそれが良いのは分かってる。

でもノアに言うのは、嫌がらせに屈したみたいで嫌だった。


「ハナだけでも」

「ハナに言ってノアに言わなかったら、めちゃくちゃキレられるからダメ」


同様にアレンもダメ。


「このまま収まるかもしれないし、もう少しだけあの三人には言わないで」

「ミコト……」

「酷くなったら絶対に言うから。ね?」


わたしが折れる気がないのが分かってるジェシカ達は、顔を見合せてため息をついた。


「エスカレートするようなことがあれば、嫌だって言ってもノアに言うわよ」

「それと、ノア達に言わなくてもわたし達には言ってね」

「出来る限りミコトのこと守るわ」


三人はわたしの手を握って念を押した。


「ありがとう、約束する」





それからしばらくは、ひそひそと噂される事を除けば何もなかった。

もっと色々、それこそ集団リンチくらいは覚悟してたから、なんだこんなもんかーと拍子抜けしてしまった。

ノアは何か言いたそうに、チラチラとこちらを見ることがあったけれど、わたしがすっとぼけた顔で「何?」と言うと、大抵


「いや、揉んだら手からこぼれる程度には胸あるよなーって」


とセクハラを言って誤魔化した。

そうしているうちに、さらに一週間が経った。


今日もありがとうございました!

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