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「で?実際のとこどうなのよ?」


わたしは今、ルームメイト達に詰め寄られている。

理由はお察しの通り。

ノアとの交際うんぬんだ。

どうやらベーカー中尉が「ノアが食堂スタッフの女の子とデートしてたー!」と、積極的に言いふらしたらしい。

しかもこっそり後をつけて、ラウンジでの会話も聞いていたようで。


「付き合ってないって言ってたけど、もう会話がすっごいラブラブでさー!聞いてるこっちが恥ずかしくなったよー!これはもしかしてあるかもーって思ってるんだよねー」


だそうだ。

何をどう聞いたらラブラブに聞こえたんだよ。

中尉は相手が誰かは言わなかったみたいだけど、話を聞いた人達の中で、ノアとよく一緒にいるのって、第六食堂のあの子だよね?

となり、「ノアとミコト実は付き合ってんじゃね?」という噂が瞬く間に広がった。

こうしてノアのファンに囲まれるのも、もう何度目か。

何であんたみたいなのがノアと噂になるわけ?

と言う美女達の迫力ったらなかった。

しばらくトラウマになりそう。


「お付き合いしてません。する予定もございません」


ルームメイトのジェシカ、ミシェル、ケイトの前に正座して弁解する。

いや、なんで正座してんのわたし。


「でも、最近よく二人で一緒にいるわよね」

「図書館で抱き合ってるのみたって人もいるのよ」

「ラウンジでもカップルシートでイチャイチャしてたみたいだし」


酷い誤解である。

確かに二人でいる機会は多くなったけれど、決して抱き合ってないし、イチャイチャなんてしていない。

腕を引かれて倒れこんだり、おちょくられてただけだ。


「パフェをご馳走になりましたが、イチャイチャなど滅相もございません」

「本当に?ラウンジのカップルシートって、ほぼ個室でウェイターも呼ばなきゃ来ないから、基地内ラブホって言われてるのよ?そんな所に男女二人で行って何もないなんてあり得る?」


げっ、知らなかった。

あれ?

それなのにベーカー中尉はこっそりデバガメしてたの?

もしわたし達が本当に付き合ってて、おっ始めたらどうするつもりだったんだろう。

……怖っ!

まあ中尉のことは置いといて。

かれこれ一時間、こうして尋問を受けている。

もうだいぶ前から足の感覚ないし、同じことばかり聞かれるし、いい加減泣きたくなってきた。


「本当に付き合ってないわけ?」

「誓ってないですっ!」


三人ともしばらく疑惑の目でじっとわたしを見ていたけど、これ以上何も出ないと理解してくれたのか、三人揃って盛大にため息をついた。


「なーんだ、つまんなーいっ」

「そこは付き合っててよー!」

「ノアがどんな風にデレるのか聞きたかったんだけど」


三人共口々につまらないだの、ミコトの浮いた話聞きたかっただのと、好き勝手言ってくれている。

告白だけはされたことは……うん、黙っとこう。

また一時間も尋問されたらたまったもんじゃない。


「ていうか、ノアが攻めか受けかはっきりさせられると思ってたのにー」

「攻めに決まってるでしょ」

「ああいうタイプが受けなのが萌えるんじゃない」


先程も言ったように、彼女達も一応ノアのファンだ。

正確にはノアとアレンの。


「ノアアレ一択」

「アレノア以外あり得ない」


そして彼女達は腐っている。

所謂腐女子というやつである。

メカニックでブロンド美女のジェシカと、後方支援部のロリ顔アフリカ系美女のミシェルはノアアレ派。

わたしと同じ第六食堂で働く、巨乳で男性陣に人気のケイトはアレノア派。

日夜三人で、二人の絡みがどうのこうのと妄想を繰り広げている。

まぁ、二人とも顔立ちが綺麗だし、軍人さんでは珍しく細マッチョでスタイル良いし、ネタとしてはもってこいなんだろうな。

ノアとアレンに教えてあげたら、口から砂吐きそうだけど。


「まあ、でもわたし達はミコトの味方だから」

「二人のこと応援する。ので、ノアからの甘い囁きの内容教えてね。同人誌のネタにするから」

「性癖とかもね」


おい同人誌にしてんのかよ、やめたげてよ。

ていうか、予定ないってわたし言ったよね?

あれ、聞こえてなかった?


「だけどちょっと心配よね」


ジェシカは形の良い眉をひそめた。

ミシェルとケイトも、うんうんと頷く。


「何が?」

「ミコト、ブレイクのこと知らないの?」

「ノアの隊にいる、すごく気の強い子よ。あの子ノアの近くにいたくて、わざわざ後方支援部から移動したのよ」


ノアが隊長をしている隊は、最前線で戦うことが多い。

比較的安全な後方支援部から、最も危険な部隊に移動するなんて、どれだけノアのこと好きなんだろう。

わたしだったらいくら好きな人と一緒にいたくても、そこまではできない。


「今まではハナと仲が良いから、オマケでノア達と一緒にいるって思われてたのよ。ハナっていうバックがいるから、そう簡単に手も出せないし」


だから何もなかったのよ?

そういうミシェルは、ブレイクがノアに好意を寄せる子に嫌がらせをするのを何度も見たと言う。

無視したり、物を隠したり、聞こえるように嫌みを言ったり。

うわー女子って怖いよー。


「今回のことで、ミコトがノアにちょっかい出してるって思ったと思うわ」

「あの子普段第五食堂使ってるのに、昨日はわざわざ第六食堂まで来てミコトのことチェックしてたのよ?気をつけてね」


ジェシカもミシェルもケイトも、何かあれば力になると言ってくれた。

ノアは基地の女性の憧れの的で、そんなノアの近くにいるわたしは、ノアに好意を寄せる人達から見たら目の上のたんこぶ以外の何者でもない。

今まで当たり前のように一緒にいたから、そんなこと考えたこともなかった。

でもそうか、そうだよね。

ノアはイケメンで、強くて、頭も良くて、少し意地悪なところがあるけど優しくて。

おまけに地位も名誉もある。

頭の中脱チェリのことでいっぱいなのが本当に残念だけど、そんなこと知らない人からしたら、完璧な男性。


「分かった、気をつける」


わたしは三人に大きく頷いてみせた。

こうやって理解してくれる人達もいるし、何かされても頑張れそうな気がする!

それにまだ嫌がらせされると決まったわけではないし。

なんて前向きに考えていたのだけれど、ルームメイト達の心配は、この後見事に的中するのだった。


ちなみに、一時間正座していたわたしの足は、解放後しばらく使い物にならなかった。

今日もありがとうございました!

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