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七夕の日

作者: 一日一説

 年に一度の七夕の日がやってきた。

 小さなボタンを押すと、はーい、とややくぐもった、拡声器を通したような声がひっそりと返ってくる。

 きたよー。そう返事をすると、ちょっと待っててー、と声がして、プツリと音声は途切れた。かわりにドタドタという足音が近づいてくるのがわかる。

 丸い銀のドアノブがそろりと回って、重い鉄の扉がゆっくりと開く。

「菜々子ー! よくきたねー」家主の声が弾む。

「やっほー。みどりもう来てる?」

「うん。さっき来たとこだよみどりも」

 きれいに片された玄関も三人分の靴がそろえばそれだけで窮屈に感じた。都心のアパートなんてどこもこんなものだろう。毎年ここに来るたびに思う。


「じゃあーみんな揃ったことだし、乾杯しますか!」

 桜色のやわらかいラグに座って丸テーブルを三人で囲む。グラスになみなみと注がれた柑橘系のカクテルを傾けて、本日の主役を祝った。

 そのまますぐに部屋を暗くして、バースデーケーキにキャンドルを灯す。二人がバースデーソングを熱唱し終えると、一人が勢いよく火を吹き消した。

 ここまでが特別な一日の演出だった。あとはいつもどおり。仲良しな女子会が深夜遅くまで続いた。


 年に三回。あたしたちは必ずこうしている。

 今日、4月8日は田村七夕の誕生日だ。そして次回は5月4日。坂下みどりの誕生日。

 そしてあたしたちはまた、ここに集まるだろう。

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