表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lords od destrunction  作者: 珠玉の一品
56/180

出発



 此処は王都ハイファウムの郊外にある、東の城門から少し離れた草原。

 集まったのは二百名の兵士と百台の荷馬車からなる荷駄隊と、彼等とは雰囲気が明らかに異なる四名の同行者達だ。

 そして彼等の表情はあまりにも対照的だった。二百名は隠すことない辟易を貼り付けいるが、それとは対照的に残りの四名は隠しきれない喜悦を滲ませていた。


「そろそろ出発ですか? フーバー隊長」


「あぁ、準備は出来たか?」


「はい、問題ありません。ところで、彼等は何者ですか?」


 部下の質問を受けてフーバーは後方へと視線を移す。

 荷駄隊員とは明らかに服装の違う四名の男女が、荷駄隊の最後方で旅支度を整えていた。


「上からのお達しでな。理由は判らんが、同行させろだそうだ」


「はぁ……」


 片手にヘッドギアを持ち、栗毛の髪を片手で掻き上げる荷駄隊長のフーバー。

 社交的な彼が隊を纏めることは、隊員の誰もが認めている。

 有事に際した場合の実力は未知数だがこの平和な時代にあっては、彼がそれを証明することは難しいだろう。


「ヘルマン!」


「はい」


「お前はあいつらの監視だ。最後尾の荷馬車に行け」


「……はい」


 不承不承に頷くヘルマンが、茶色の短髪を隠すようにヘッドギアを被る。

 ヘルマン・ヘルマン。彼はその冗談のような名前とは違い、無骨な恰好に寡黙な性格という特徴を併せ持つ。

 他の隊員同様バンデッドアーマーに身を包み、王国の紋章が入った簡素なカイトシールドを持ち、腰にロングソードを佩いたヘルマンが無言のまま後方へと苦い表情を向けた。


「集合!」


 他の隊員の装備と違い、胸部にブレストプレートを当てたフーバーが皆を呼び集める。

 そして方形に揃った隊員達を眺めながら、一段と高いところへ立ち大きく息を吸った。


「これより、例年通りこの物資をナファウトの南へと輸送する。片道七日間、往復で十五日だ。注意すべきは野盗の類だが、他にモンスターが出ないとも限らん。監視の目を緩めるな!」


「「「ハッ!」」」


 王国領の街道や草原には、稀にだがモンスターが出現する。騎士団が定期的に見回りを行いモンスターを排除しているため僅かな遭遇で済んでいるが、そもそも彼等の手に負えないような凶悪なモンスターは、基本的に山中から平地へ姿を現すことはない。

 荷駄隊である彼等の戦闘力は良いところで壬級。マンドレイクやダイアウルフの寡兵であれば対応に問題はないだろう。しかしそれが数匹のマンティコアとなれば、彼等だけでの撃退は困難を極める。

 だがそんな心配は必要ないのだ。これまで庚級を超えるような凶悪なモンスターが、この王国に出現したことは無いのだから。


「では、出発!」


 隊長の乗る馬車を先頭に、百台の馬車が一路西へと向かい進発する。

 荷馬車一台に二名が乗車している為、護衛は皆無だ。もし襲撃を受けた場合は、馬車を停めて迎撃するしかない。だが幸運にも彼等は今まで、襲撃はおろか身の危険を感じたことすらなかった。

 何故なら野盗と言えど二百名の兵士に挑むのはあまりに無謀であり、無謀を常とするモンスターは既に排除されているのだ。


「これから十五日間ですか……長い道のりですね」


「そうだな。新婚のお前には辛いところか?」


 隊長の冷やかしに、隣に座る副長が苦笑を浮かべる。


「いえ、そういう訳では……。ですが何故ですかね?」


「何がだ?」


「毎年物資を運んでいますが、何故こんなものを?」


 副長の疑問は尤もだろう。運んでいるのは金銀財宝の類ではなく、ただの食糧や衣類だ。それも何処にでもあるような安物ばかり。

 彼等は何故、王国が物資を届け続けるのか判っていない。運べと言われたから運んでいるだけであり、その詳細な理由は知らされていなかった。


「さあな。だが命令だ。運べと言われれば、運ばねばなるまい」


「そうですね。でも行き先がちょっと」


「そうだな。届け先が華やかな街であれば良かったのだが……特にあんな場所では、な」


 フーバーが肩を竦めながら隣へと振り向く。

 街で女性を愛でながら酒でも飲んで疲れを癒せれば良いのだが、この荷物を届ける先は街は疎か人さえ居ない国境から直ぐの魔国領。

 せめて村でもあれば良いのだが、そこにあるのは閑散とした集積地のみ。それ以外は本当に何もないのだ。


「受け取りに来る美人が唯一の楽しみですね」


「そうだな。あれほどの美人、王国でも見たことが無いな。しかし……あれは人間なのか?」


「さぁ、判りません。ですが見るだけです。どちらでも良いのでは?」


「そうか、それほど楽しみか。お前の嫁さんに伝えておかねばな」


 目を見開いた副長が、フフッと笑みを溢すフーバーを凝視する。

 冗談で言っているのは直ぐに理解出来るのだが、なにせその内容が心臓に悪すぎるのだ。


「じょ、冗談でも止めて下さい!」


「フフッ、悪い悪い」


 額を拭う副長を横目に、フーバーは楽しそうに笑うのだった。




 疾走する荷駄隊の最後尾で、荷台の空きスペースを占拠しているのは探索者の四人。

 彼等は金銭と引き換えに、ありとあらゆる依頼を請け負う。その範囲は遺跡の調査から聖遺物の捜索まで。可能とさえ判断すれば危険を顧みることなく何でも引き受けるのだ。

 当然、彼等はその仕事に誇りを持っている。常々「命を賭すのも厭わない」と豪語しているそうだが、幸運にも彼等が命の危険に晒されたことは今まで皆無だった。


「ねぇリーダー、その報酬って絶対に貰えるの?」


「あぁ、調査が終われば間違いなく支払われる」


「だって前金が、金貨二十五枚だよ? 一人二十五枚! ただの調査でこの金額って、ちょっと怪しくない?」


「お前はもう少し声を落とせ。それに、詳しいことは事前に散々説明しただろ?」


 少々声が大きい女性を宥めるのは、このチームのリーダーを務めるアルフレート・ゲゼル。

 ブロンドのマッシュに不似合いなレザーアーマーを当て、腰にロングソードを佩く身長百七十cmの三十歳。

 そしてアルフレートに質問しているのは、赤の外はねミディボブにバンデッドアーマーを纏う身長百六十五cmのアーチャー、シャルロッテ・クナーベだ。


「いや、聞いていたけどさ。だって成功報酬が一人につき五十枚でしょ? そんな美味しい話、絶対に怪しいって」


「これも説明した筈だが、依頼者の身元は確かなようだ。お前達も感じただろう?」


「それだけの理由がある……ということかしら?」


「そうだ、ビアンカ。俺達には判らないし知らされてもいないが、この調査はとても重要なのだろう」


 金貨一枚は、異世界の価値で約十万円。前金の二十五枚と成功報酬の五十枚があれば、一年は遊んで暮らせる額だ。

 それが只の一度で稼げるとあれば、彼等でなくとも不審に思うはず。そう、青の三つ編みにグレーのローブを纏ったビアンカ・ペシェルが冷静に分析する。

 だが、彼女の推測は本当に正しいのだろうか? そんな疑問すら挟むことなく、これ幸いとばかりにアルフレートは彼女に追従した。


「でも、目的も目的地も不明、なのよね?」


「あぁ、おおよその場所は判っているが、詳しい場所まではな……行ってみないと判らん」


「例の遺跡ね。でも本当にあるのかしら? 御伽噺の類って聞いてるけど」


「彼はあると言っていた。それも近衛兵団の調査結果だそうだ。間違いないだろう」


 近衛兵団の調査結果が何故あの男の口から出たのか、アルフレートには判らない。

 おそらくだが依頼元である紳士の背後に、何処かの上位貴族が関わっているのだろう。もしかすると何らかの形で王国が関与しているのかもしれない。だが、それを口にすることは流石の彼でも憚られた。

 口が軽くて良いことなど何もない。話すことにより危険が及ぶのであれば、言わないまま済ます方が賢い選択というものだ。


「でもさ、あのおっさん。かなり胡散臭かったよね? 本当に大丈夫なの?」


「あぁ確かに怪しかったな。だが大丈夫だ。彼の雇い主である紳士の、金払いの良さは俺が保証する」


「その紳士とは知り合いだったの? リーダー」


「いいや。だが彼に俺達を紹介したのは信用が置ける人物だ。心配ないさ」


 ビアンカの問いに漠然と答えたアルフレートが、振り返りながら小さくなった城門を眺める。

 この仕事を彼に依頼したのは、さる紳士に雇われたという身なりは良いが何処か胡散臭い、そんな印象を与える男。

 その男が持ち込んだ内容は、モンスターが生息し活動する魔国領の調査と、その内容に見合わないほどの破格の報酬だった。


「出現が予想されるモンスターはオークにコボルト、最悪でもオーガやリザードマンで間違いないわね?」


「あぁ、そうだ。仮にそれ以上のモンスターが出ても、単体ならば問題ない。もし手に負えない事態となれば、予定通り川を下って撤退だ」


 ビアンカの念押しにアルフレートが確信を持って断言した途端、暗く沈みかけた彼等の輪に安堵の空気が漂った。

 彼等は王国で言うところの戊級の探索者であり、万全の状態であればキマイラ単体を容易に撃退出来るほどの実力者だ。


「ナファウトから川沿いに南下するんだよね?」


「モンスターは水を嫌うからな。少々歩き辛いだろうが、それが一番安全で間違いがない」


 前向きな言動で皆を誘っているアルフレートだが、本音を言えば彼は乗り気ではなかった。

 話をしに来た男が胡散臭かったこと、シャルロッテの言う通り報酬が破格であること、そしてそれが魔国領であることが主な原因だ。未だモンスターが犇めく魔国へ、少人数で乗り込むなど狂気の沙汰である。

 だがアルフレートは苦悩の末に、この仕事を引き受けることに決めたのだった。


「エンリコ・アイヒマン――」


「ん? 何か言った?」


「――いや、何でもないさ。シャル」


「男のくせにハッキリしないわね」


 女性は兎角文句が多い。ハッキリしないのは、風情や哀愁とは無縁な世界で生息し、躊躇や現金を好んで渇望する女性達の専売特許だろう。

 買い物如きに何故あれほど時間を費やせるのか不思議で堪らないが、女性達は貴重な時間を無駄に浪費し、かつ殊の外楽しむという理解不能な悪癖を、誰に憚ることなく誰彼構わず押し付ける。

 相談をしないと自分の進むべき道さえ決められない、そんな愚劣な思考を理解することなど男である限り永遠に不可能なのだ。


「擦れ違いの平行線か……」


 アルフレートの呟きに、怪訝な表情を向けるシャルロッテ。

 自分に聞こえないのも、自分の知らないところで納得されるのも、自分がそれを理解出来ないのも気に入らないのだろう。

 だがアルフレートはそれを察してなお、それ以上の説明を続けようとはしなかった。


「それで、二ヶ月で間違いないのかしら?」


「あぁ、目的地に変更が無ければ往復で二ヶ月だ。だが最果ての村で馬を調達出来れば……」


「もっと早く帰って来れる?」


「そういうことだ。ま、行ってみないと判らんがな」


 ビアンカの再確認にアルフレートが、当初の予定に加え日程短縮の検討案を伝える。

 結論はシャルロッテに奪われてしまったが彼女の言う通り、王国の西端にある村で農耕馬あたりを借用出来れば日程の大幅な短縮が可能だろう。

 彼等の生産基盤となる農耕馬だ。短期間の借用であっても村人は当然渋るはず。だがアルフレートは村人達の迷いを、金の力で断ち切れると確信していた。


「いくら掛かるのかしら?」


「さぁな。だが金貨一枚くらいで貸してくれるんじゃないか?」


「辺境の村でしょ? 金貨なんて見たこと無いんじゃない?」


「シャル、それは流石に……馬鹿にし過ぎじゃないか?」


 いくら辺境と言えど王国領なのだ。物流もあれば人の交流だってある。交流には貨幣が必要不可欠であり、流石に貨幣を知らないなんてことはないだろう。

 アルフレートはそんな思いでシャルロッテを窘めたのだが、シャルロッテへの援護射撃は意外なところから飛んで来たのだった。


「……村じゃ金貨なんて見ないぞ」


「そうなのか? マテウス」


 マテウス・ヴェールホフ。茶色の短髪に無骨な表情、マッチョな体躯にスケイルアーマーを纏った身長百八十cmの三十五歳。

 彼は非常に口数の少ない男だった。今日起きてから今まで、挨拶以外の言葉を発したのが初めてだったほどだ。


「あぁ、俺の村じゃ金貨なんて見なかったな」


「そ、そうなのか。じゃ高額の取引きはどうしてたんだ?」


「そもそも高い物など売っていない。だから必要ない」


「な、なるほど」


 滴る冷汗に気付いたアルフレートが、右腕だけで乱暴に額を拭う。彼を馬鹿にするつもりなど微塵も無かったのだが、シャルロッテの戯言がまさか現実だとは思いもせず油断してしまっていた。

 アルフレート、ビアンカ、シャルロッテの三人は街で生まれ育っている。だがマテウスだけが彼等とは違い、村で生まれ山に育てられていたのだ。


「だからマテウスは旅慣れているのかもな」


「何もない田舎で生まれ育ったから?」


「ハッキリ言うんじゃない、シャル。まぁ、そのお陰で助かってはいるがな」


 彼等は戦乱後の平和な世の中に生まれた為、不便な旅には慣れていなかった。

 探索者になった当初は野営の勝手が判らず、テントを張れば中に朝露が流れ込み、焚き火を起こせば枯葉に飛び火する始末。

 そんなお粗末で散々な状況だった彼等の助力となったのが、後からチームへと加入した元村人、マテウスだ。彼が持つその面での豊かな知識により、快適な野営生活と臭みのない食事にありつけた事は、彼等の探索者生活にとって一番の幸せだったのは間違いがない。


「魔国までは荷駄隊と一緒だから心配ないが、魔国領に入ってからは俺達だけだ。頼りにしてるぞ、マテウス」


「俺の取り柄はそれだけだ」


「何言ってんの、マテウスー。戦闘でも頼りにしてるってば」


「よ、よせ! 抱き付くな!」


 調子に乗ったシャルロッテが無防備なマテウスへと抱き付く。先ほどの失言を気にしているのか、調子が良いだけなのかはわからない。だがマテウスは非常に嫌がっているようだ。


「もう少し大人しく出来ないのかしら? マテウスが嫌がってるでしょ?」


「はぁ? 嫌がってる訳ないじゃん。マテウスだって本当は嬉しいんでしょ?」


「そんな凹凸のない体、喜ぶ男性が居るのなら見てみたいわね」


「ハァ!? 黙れちんちくりん。あんたなんて醜い体形をローブで隠しているだけでしょ!」


 中肉中背のビアンカと、起伏の少ないシャルロッテが、世にも下らない言い合いを開始する。

 どちらも魅力に乏しいスタイルだが、それを世間では目糞鼻糞と言うのだろうか? どちらの体形も褒められたものではないし、一部の好事家を除き一般的な需要は期待薄だろう。

 だがそんな彼女達の機嫌を取る為だけに今この場で下手なお世辞でも言おうものなら、鬱陶しい勘違いを始めるか、馬鹿にされたと怒りだすか、何方かなのは間違いないだろう。


「はぁー、二人共止せ。だがシャル、その体形のお陰で上手く弓を使えるんだろ?」


「は? なんで?」


「起伏が少ないお陰で、弦が当たらないんじゃないか?」


「……何処に?」


 半眼で睨むシャルロッテの極寒の視線が、彼女の真意を察しきれないアルフレートへと突き刺さる。

 口を両手で押さえたビアンカの両肩が、小刻みに震えているのは気のせいだろうか? シャルロッテから距離を取ったマテウスは我関せずを貫いている。


「いや、だから胸に」


「……当たるんですけど」


「え!? マジで?」


「どうやら、今直ぐ死にたいようね」


 額に青筋を立てたシャルロッテが「ゴゴゴ」という擬音を放つかのように、揺れる荷台の上でゆっくりと立ち上がりかける。


「ちょっと、危ないでしょ!」


「そ、そうだぞシャル! 危ないから座ってろ、な!」


 憤懣遣る方無いのを気力だけで押さえ付けたシャルロッテが、頭から湯気を吹き出させつつも眼光鋭く座り直す。

 迂闊な発言は自分の寿命を縮めかねない。そう心へと刻み込んだアルフレートが、技巧さを全く感じさせない力技で強引に話題を切り替えた。


「だが、弓使いって凄いよな。俺なんて手首が痛くて無理だったぜ」


「あぁ、そうね。私も一度だけ試したけど、頬が痛かったわ」


「手首? 頬?」


 怪訝な表情でシャルロッテが首を傾げる。

 弓とは、引いた弦が元の位置へ戻ろうとする力を作用させることで矢が放たれる武器だ。

 弦の軌道上に手首や頬があるのであれば、弦が当たるのは自明の理。そう二人は解釈しているのだが、彼女の反応から察するにどうも違うらしい。


「二人が使ったのってこの弓?」


 シャルロッテが取り出したのは愛用のロングボウだ。彼女は速射性能よりも一撃の重さと射程距離を重視している。

 なにせシャルロッテは近接戦闘が笑えるほど不得意なのだ。敵に接近することなく戦うしかない彼女へと残された選択肢は、魔法かロングボウしかなかった。だが残念ながら彼女は魔法を使えない。

 それでも馬に跨っての機動的な戦闘が出来れば、例えショートボウと言えど十分な戦果を望めたかもしれない。だが彼女は馬に乗ろうとはしなかった。


「あぁ、そんな感じだな」

「そうね。そんな感じかしら」


「初心者がロングボウなんて使うから。ショートボウにすれば?」


「い、いや。弓を使うつもりは無いしな……」

「そうね。遠距離の物理攻撃はあなたに任せるわ」


 二人の興味の無さを見たシャルロッテが、若干苛立たしさを滲ませながら視線を逸らした。

 アルフレートが話題を振ったから応じてあげたのにこの仕打ち。シャルロッテでなくても納得が出来ないだろう。

 溜息を溢してシャルロッテが弓柄に視線を落とす。ロングボウは親指を突き出して握りさえすれば、弓返りの効果で手首を弦自爆することはない。

 そもそも矢が弓柄の右側にあるのだ。リリース時に弓に対して回転運動を与えることで矢が真っ直ぐに飛ぶなど、彼女からすれば当たり前のことだった。


「なんだかなー」


 シャルロッテは微かに見える遠い西の山を見つめながら、弓を元あった背後へと仕舞う。

 仮にモンスターが出たとしても、王国領内であれば先行する部隊が排除してくれるだろう。

 遠く一部の山裾を覆う噴煙に微かな違和感を覚えながらも、一行は西へと向かって進み続けた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ