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Lords od destrunction  作者: 珠玉の一品
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襲撃



 カミュの命を受けたバディスが、川を越えた山間の岩肌に比較的大きな洞窟の入り口を見つける。

 他に建物が見当たらない現状で考えられるのは、野盗が建築物ではなく自然に出来た居住可能区へ身を潜めている可能性。

 バディスは一足飛びに洞窟の入口を潜ると、何の警戒もせずに自然体で奥へと進んでいった。


「誰だお前? 此処が何処かわかって入って来たのか?」


 そして如何にもな山賊風の男がバディスを誰何する。


「我輩は主君の命でゴキブリ退治に来た者である」


「あ゛ぁ!? それは俺たちのことを言ってんのか?」


「一から十まで教えねば理解し得ないとは、莫迦なのであるか?」


 バディスの一言で顔を真っ赤にした野盗が、何かを言いたいが直ぐには言えない、そんな状態でワナワナと手を震わせながらビキビキと青筋を立てる。


「ところでお前は見張りをしているのか?」


「……死ね!!!」


 キレた野盗(見張り)がバディスに襲い掛かった。あまりのキレっぷりに腰に帯いた剣の存在を忘れ、素手で殴りかかって来る始末。

 右拳を大振りしてくる野盗の右へ回り、バディスは紳士の笑顔で視線を合わせた。そしておもむろに突き出した左手で野盗の汚い顔面をアイアンクローで優しく包み込むと、その体を高々と持ち上げる。


「うがぁ!! は、離せ!」


「離せと言われて「ハイそうですか」と言う莫迦はお前くらいなのである」


 バディスのアイアンクローを剥ぎ取ろうと、野盗は大いに暴れる。だが、その強固なロックを外すことなど常人には到底不可能だ。宙吊りにされた野盗が大人しくなるのは、それから間もなくのことだった。


「離して欲しくば先ず我輩の問いに答えるのである。此処に居るゴキブリは全部で何匹だ?」


「……あぁ? ぜ、全部で三十六人だよ! 話したんだから、もう離せよ!」


「三十六人とはお前を入れてか? 他には?」


「そうだよ、俺を入れて三十六人だ。他には攫った女を何人か監禁している。それ以外は居ない!」


 アイアンクローから逃れるのに必死な野盗が、軽い口で洗いざらい全てを話す。嘘や言い忘れの可能性も考えられるが、後で監禁されている女達に聞けば良いだろう。


「そうか。では離してやる」


 バディスの一言に全身の力を抜く野盗。解放されると野盗が思った矢先、彼の頭蓋骨がバディスの握力で壮絶な悲鳴を上げた。そしてその直後に野盗の頭部が爆散する。


「離すと言っても潰してからではあるが」


 掴んだゴミへの嫌悪感を露わすかのように手を振うバディスが、含み笑いとともに独り言を漏らした。バディスは約束を違えたつもりは一切ない。約束通りにちゃんと離したのだ、一度潰した後で。

 足元に横たわる野盗の衣服で手に付着した血と脳漿を拭い、バディスは洞窟の奥へと歩みを進める。その顔は喜悦に歪んでおり、抑えきれない愉悦がその歩調から察せられた。




 洞窟の中ほどへと進んだバディスが、野盗の一団と対峙していた。洞窟内では篝火が灯っているが、その配置は(まば)らであり全体を照らすには数が足りていない。暗闇が大部分を覆う洞窟内の広場には、十二人の汚らしい男達が無秩序に並んでいた。彼らはそれぞれ手に持つ獲物をちらつかせながら、たった一人で入って来た闖入者を物珍しそうに観察している。

 野盗達が油断するほどの圧倒的な人数差、だが先ほど入口の男から聞いた人数にはまだ遠く及ばない。バディスは首を傾げて疑問を口にした。


「これで全部ではなかろう。残りは何処に居るのであるか?」


「あぁ!? なんでお前にそんなこと教えなくちゃなんねーんだ? っていうか、テメェ誰だよ?」


「我輩はハチベエ、此処へは掃除に来たのである」


「はぁ? 掃除? っていうか、なんだそのカッコいい名前。本当の名前か!?」


 野盗の素直な感想に気を良くしたバディスが、改めて主君のネーミングセンスの良さに感服する。


「ほぉ……汚い身なりの割に、耳の穴は奇麗なのであるな」


「まあな。耳の穴だけはいつもかっぽじってるからな!」


 胸を反らして自慢する野盗に頭痛を覚え、思わずバディスが眉間を抑える。戦闘力も低いが知能も低い、地位も低いし稼働率も低いのだろう。改めて彼らが何のために生存しているのか疑問にさえ思う。

 バディスは主君に仕えるためだけに存在し、主君が命ずるままに命じられたことを只々完遂する。それが彼の本懐でありそれ以外に望むものなどあろうはずが無い。だが彼らは?


「で、何処を掃除すんだ?」


「まぁ全部であるな」


「そうか? じゃあ頑張れよ! ……って言う訳ねぇだろ!」


「それが普通なのである」


 腕組したバディスがさも当然のように応えた。野盗の恫喝は彼に何の痛痒も齎さない。

 不動のバディスを他所に、彼を取り囲んだ野盗十二人が一斉に凶器を手に身構える。


「テメェ……こんな所に一人でノコノコと入って来たんだ。死ぬ覚悟は出来てんだろ?」


「こんな処で死ぬ覚悟など持ち合わせていないのである。逆に聞くがお前達は死ぬ覚悟があるのか?」


 どうやって眼前の男前を嬲り殺そうか思案に暮れる野盗が、バディスの質問を鼻で笑いながら激高した。


「ハァ? 当たり前だろ? 覚悟なしでやってられるか!」


「そうか。良い心掛けである」


「安心しろ、直ぐには殺さねぇ。たっぷり甚振ってやるから存分に後悔して死ね」


 野盗の話の終わりを確認して、バディスは右手を翳して静かに唱えた。


「――<範囲型即死(エクステンシブダイ)>」


 バディスの右手から放たれた紫色の光が辺りを照らすと、先ほどまで殺る気満々だった野盗達があっけなく崩れ落ちる。

 範囲型即死、それは闇属性と風の適正を併せ持つものだけが使用可能な、最上位の即死魔法である。レストエスが使った<突然死(サドンデス)>の上位互換ではあるが、一度で複数の対象を補足出来るメリットに対し、対象が高位になる程レジストされ易いというデメリットも併せ持っていた。

 だが辛級以下の実力しか持たない野盗が相手では、級差によるレジストなど彼らの死傷には全く支障がないのだが。


「名前の素晴らしさを気付けたことに免じ、楽に殺してやるのである。その幸運を喜ぶべきであるな」


 生存を放棄してしまった元野盗を見下して、バディスが己の慈悲深さを語り聞かせる。

 だが誰一人としてバディスの自己満足を聞くものは居ない。バディスはその顔に哀愁を湛えながら、入って来た方向とは逆の洞窟の奥へと歩き出した。そして当然ながらバディスを見送るものは誰も居ない。

 バディスは一つだけ溜息を溢して闇へ消える。そして広場は静粛に包まれる。


 だがバディスは戻って来た。十二体の遺体が散乱する広場へと。

 顔は赤く染まり、戻り足は早歩き。トイレを我慢していた少年のような表情と行動に、溢れ出す違和感が半端ないバディス。だが彼は戻って来のだ。


「……掃除を忘れていたのである」


 広場の入口で立ち止まったバディスが、右手を翳して詠唱した。


「<旋風嵐(ウィンドストーム)>」


 広場を包み込む旋風嵐が球形に螺旋を描くと、部屋一面に散乱していた元盗賊達が飲み込まれる。そして「ドシュッ、ザシュッ」という残酷な風切り音が止むと、広場には再び静粛が戻された。

 其処には盗賊だったものの残骸は、ひと欠片さえ残されていない。結果に満足したバディスが踵を返して先へと進む。篝火さえ消されてしまった真っ暗な洞窟の中を、ただ一人だけで。




 洞窟の最奥へと進んだバディスが、野盗の一団と再び対峙した。暗闇が大部分を覆う最奥の広場は先ほどの広場よりも明らかに広く、広場の内壁には小さな入口が四つ据えられていた。おそらく小部屋へと続く入口だろう。小部屋の探索を後回しと決めたバディスが、先ずはと居並ぶ汚い男達に相対する。


「誰だテメェ、どうやって此処へ入って来た?」


 首領と思しき一番体格の良い男が、一番頭の悪い疑問を投げ掛ける。途中の広場で会った男の部下らしき野盗達が、余程の無能でなければ強引に入って来たことは明白。考えが何故ソコに至らないのかバディスは不思議に思う。


「丁度良い。此処に居るのが全部であるな?」


 眼前には二十三人の汚らしい男達が無秩序に並んでいた。彼らは先ほどの一団と同じくそれぞれ獲物をちらつかせながら、たった一人で入って来た闖入者を物珍しそうに観察する。

 こういう人種は何故行動が同じになるのだろう? バディスはちょっとだけ考えてみた。だが直ぐに彼は悟る、こんな下らないことに時間と脳細胞を費やすだけ無駄なのだと。

 野盗達が積極的に油断するほどの圧倒的な人数差、だがこれで全て揃ったはずとバディスは疑問に安堵を乗せた。


「あぁ!? なんでテメェにんなこと教える必要があんだ? っていう誰だよ?」


「我輩はハチベエ、此処へは掃除に来たのである」


「はぁ? 掃除? っていうか、なんだその超カッコいい名前!?」


 野盗の素直な驚嘆に気分最高潮のバディスが、生まれ変わった気持ちで主君のネーミングセンスの良さに心酔した。


「まぁ……仕方無い。先ほどと同じに、一思いに葬ってやるのである」


 バディスは暗闇に薄れる天井を見上げ、大きな溜息をついて詠唱した。


「――<範囲型即死(エクステンシブダイ)>」


 効果は即座に現れた。糸の切れた人形のように、二十三人の野盗がその場に倒れる。重なり合う死体はまだ温もりを残し、静粛だけが冷たさを運ぶ。


「<旋風嵐(ウィンドストーム)>」


 そしてその温もりを即座に掻き消すように、バディスは風魔法を詠唱した。

 正直に言えば、本当は遊びたかった。だが名前を褒められては、虐殺の欲求に火が灯らない。おそらくこれも主君の思し召しであろう、バディスはその慧眼にただただ感服するのだった。


「さて、残りは性奴隷であるな」


 バディスは向かって右の小部屋を伺うが、其処には無数の武器、食糧が乱雑に置かれており、倉庫として使用されているのが一目瞭然だった。特に目を引いたのが部屋の一番手前に置かれた、この塒には似つかわしくない衣類や日用品。彼らの人数と比較すれば、余りにも多過ぎる物量にバディスは違和感を覚える。

 特に隠れ部屋らしきものも見当たらない倉庫を後にしたバディスは、反時計回りで他の小部屋の確認に勤しむ。二番目の部屋は首領のものと思しき小さな部屋、三番目がベッドだけが置かれた簡素な部屋。そして最後の部屋には、攫われて来たであろう五人の女性が茫然と座り込んでいた。

 バディスが小部屋へ入っても彼女らは動き出さない。確かに彼女らの目には絶望が浮かんでいる。だがそれだけではないだろう。近くに座る女性の足首に目を向けたバディスが、なるほどと理解した。彼女らは両足の腱が一本残さず断ち切られているのだ。


「動けぬのであるな?」


「――……あ、あぁ」


 女性の一人が俯いた顔を上げて、此処に連れ込まれてから初めての野盗以外の男性を見つける。彼女の表情に直ぐに変化は起きなかったが、じっとバディスを見つめる淀んだ瞳から次第に涙が零れ、小さいながらも嗚咽が漏れ始めた。

 彼女の嗚咽に気付いた他の四人もそれと同じ様に、やつれた表情を驚愕から号泣へと変えていく。諦観なのか安堵なのか、はたまた怒りなのかはわからないが、彼女達はずっと泣き続けた。


「これで全部か? 全員揃っているのであるか?」


「――……はい」


 バディスの問いに、女性の一人が消え入りそうな声で答える。彼女の言う通り、此処にいるのがこの洞窟に潜む生存者の全てであるとバディスも確信した。

 当初は五人と思ったのだが、よく見れば六人居たようだ。女性の一人に向けた視線をそのお腹へと移し、バディスは彼女達に慈悲の目を向けるのだった。


「……た、助けて頂いてありがとうございます」


 女性の一人が涙ながらに深々一礼すると、その他の四人も彼女に追従して一礼した。


「我輩が解放するのである。準備は良いか?」


「はい……特に荷物はありませんので」


「であるか。では早速、始めよう」


 女性達は動かぬ足を引きずるように、腕の力だけでバディスの元へと集まりだす。


「無理はしなくて良いのである」


「あ、ありがとうございます」


 涙を溢れさせながら感謝を告げる女性達に頷くと、バディスは右手を突き出して彼女達に祝福を与えた。


「――<範囲型即死(エクステンシブダイ)>」


 効果は即座に現れた。糸の切れた人形のように、五人の女性とまだ見ぬ一名がその場に倒れる。重なり合う死体はまだ温もりを残し、静粛だけが冷たさを運んだ。

 バディスは女性達との約束通り、苦悩が身も心も苛む生き地獄からの解放を、一切の苦痛を与えることなく彼女達に齎したのだ。肉体的にも精神的にも病んでいたであろう彼女達は救われたはず。それを彼女達が本当に望んでいたかは知らないが。


 バディスは虚空を見上げ、主君からの命を心の中で思い出す。主君の命は、塒に居る者の”皆殺し”だった。洞窟の外に出掛けている者が居れば見落としや見逃しの可能性もあるだろう。だが複数が証言した通り、此処に潜んでいた人間とバディスが屠った人間の人数が一致している。討ち漏らしはないと確信するバディスは、その凛々しい顔へと微笑とともに安堵を浮かべた。

 そして事切れた女性達の新たな旅路に、バディスは風魔法を手向ける。一陣の暴風が去った跡には、一切の苦痛も、一切の禍根も何一つ残されていなかった。


 洞窟の最奥にある広場を見回したバディスが、作業の完了に笑みを溢す。満足気に一つだけ頷いた彼は、省みることなく颯爽と洞窟を後にした。


 だがバディスは戻って来た。無数の物資が散乱する小部屋へと。

 顔は赤く染まり、戻り足は早歩き。トイレを我慢していた少年のような表情と行動に、溢れ出す違和感が半端ないバディス。だが彼は戻って来のだ。


「……回収を忘れていたのである」


 そして、物資の全てが回収されたこの洞窟からは、野盗の居た痕跡の一切が消えてなくなった。




 バディスが野盗の一団を屠り尽くしたその時、一人の少年が川に挟まれた山間の隘路をトボトボと南に向かって歩いていた。

 ここは二つの川に挟まれた王国にも魔国にも属さぬ緩衝地帯。凶悪なモンスターが出現するこの難所を一人で歩くのは非常に危険な行為だ。左右を見回しながら歩き続ける彼の表情は涙に濡れており、内心に固めた決意をその表情から窺い知ることは出来なかった。


「うぅ……ヒッ、ヒック」


 見た目は中学生くらいだろうか? 留めきれない不安を幼さの残る顔一面に広げている少年だが、彼は何故こんなところを歩いているのか。しかもたった一人で。

 黄褐色の背嚢を背負った少年は溢れる涙を右手で拭いながら、バディスが暴れているであろう洞窟へ、一歩、また一歩と歩みを進めている。

 この辺りでは見掛けない珍しい服装に身を包む少年。当然だがこの先にバディスが居ることなど少年は知る由もない。


 水面から顔を出す石を蹴りながら、支流となる小川を飛び越える少年。一切の力みを感じさせないその跳躍は、重力に逆らう蝶の如き華麗さで少年を彩っていた。

 ただ不思議なのはモンスターが多く住むこの隘路を、少年が無傷で歩いていること。荒れ狂う暴力から満身創痍で逃げ惑っているのであれば話はわかる。だが彼は一切の傷を負っていない。それどころか、その着衣に一糸の乱れも認められなかった。

 たまたまエンカウントしなかったのであれば、それは大きな幸運に恵まれた、もの凄い確率による奇跡の体現だろう。だが彼は本当に遭遇しなかったのだろうか? 彼は幸運の星の下に生まれついた訳でもなく、知覚能力がずば抜けて優れている訳でもない。


 そんな泣きべそをかいて途方に暮れていた少年が、遂に紳士の様相を呈した変態と回顧した。正にこれしかないという最高のタイミングで。


「こんな処でどうしたのであるか?」


「うぅ……バ、バディズざーん」


 少年は疾風のように駆け付けると、バディスの胸元にその純朴そうな顔を埋めた。少年が垂らす涙と鼻水と涎は、バディスの衣装に一滴残さず吸収される。


「それよりも何故泣いているのであるか? カメオウ」


「か、カミュ様と……会えないんです!」


 カメオウの頭を優しく撫でながら、バディスは苦笑を浮かべてその時を待つ。何故彼が此処にいるのか、先ずはそこから聞き出す必要があるのだ。

 暫くして漸くカメオウの嗚咽が止まった。バディスはカメオウの背中を二度ほど軽く叩くと、密着状態の体を離して改めて先ほどの質問を投げかける。


「こんな処でどうしたのであるか?」


「――アスラさんから言われたんです」


「何をだね?」


「カミュ様に会いに行けって」


 涙目と涙声で訴えるカメオウの話は要領を得ない。彼の説明下手を思い出したバディスは、解決を図るべく話の誘導を試みる。


「アスラとはフィードアバンで会ったのであるか?」


「はい」


「そこで此方に来るように指示された……そういえば、このまま南下すればセントラルレガロであるか。なるほど」


 腕組して顎に手を当てていたバディスが、独り言の後で表情を明るくした。


「この川に沿って南下すれば主君に会えると、アスラから言われたのであるな?」


「そうです」


「だが予想時間を過ぎても主君には会えない。どうすれば良いかわからず困っていた、であるな?」


「その通りです!」


 バディスの的確な憶測に、カメオウは目を輝かせて相槌をうつ。そんな彼の姿に自身の推測が間違っていないことを確信したバディスが、北を向きながら今後の方針を伝える。


「主君は川の東側を北上されており、こちら側には居ないのである」


「え!? そうなんですか?」


「うむ。ただ……おそらくではあるが、この先で主君は川を渡られるであろう。こちら側にな」


「どうしてわかるんですか?」


 小首を傾げたカメオウがバディスへ問う。その質問を受けたバディスがカメオウの肩に手を置き、優しく押しながら体の向きを踊るように反転させた。


「我輩が主君とお会いしたのは向こう岸。最終目的地はイクアノクシャルであるから、川を渡るのは間違いないのである」


「なるほど! じゃあ、戻りましょうか?」


「であるな」


 カメオウは満面の笑みで見上げながら、バディスの手を握って安堵感とともに切迫感を伝える。

 そしてそのまま幼い笑顔を輝やかせながら、カメオウはバディスを引いて北へと急ぐのだった。






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