行先
キャラケンダと対峙していた気障ったらしい変態と、その周りを取り囲んでいた十一人の下卑た男達の頭蓋が、花火のように一瞬にして弾け飛んだ。
直ぐ近くに居るサマンサ、ロザーリエ、チャールズの頭部には何ら影響を与えることなく、男たちの頭部だけを粉砕せしめたのだ。
その爆散に至った根本的原因を目で追えた者は誰もいない。キャラケンダの主であるカミュでさえ、変態がいきり立てた股間の膨らみに集中力を奪われ、その攻撃を見届けられないでいた。
「見事だな、石斛」
「滅相もございません。単に武器を振り回しただけにございます」
謙遜ではなく本当になんとも思っていないのだろう。キャラケンダは至って真面目な眼差しで主君の言を否定する。
あれほど戦闘に自信を持っていたロザーリエでも敵わなかったカルエン、そしてそんな彼と戦闘力に大差無い配下達を相手に、彼女は余裕を残したまま一瞬にして勝利を収めたのだ。
おそらく、アスラ麾下の四名の中では彼女が最強。そう睨んだカミュがキャラケンダへと疑問をぶつける。
「石斛は、玉簾や鬼灯たちの中では一番強いのか?」
「それこそ滅相もございません。わたしの戦闘力などたかが知れています。アス――いえ、ギュウマオウ様配下の中で、私は間違いなく最弱です」
「そうなのか? ふーん。あの四名の中で最弱だったのか」
「……最弱? あの戦闘力で? 四天王の中では最弱ということ?」
キャラケンダの控え目な自己申告を聞いたカミュが首を傾げる。一方のロザーリエは今も続く出血を忘れるほど目と口を大きく開いた後で、首を傾げながら大きな独り言を呟いた。
自分を凌駕するほどの飛び抜けた戦闘力を誇る女性が、その所属する集団の中では最弱と言うのだ。
謙遜に決まっている、いや情報操作(ミスリード)に違いない。ロザーリエは自分の心を守るために、都合の良い解釈で問題を先に延ばす。
「いや、違うぞロザーリエ。四天王は三蔵の配下だ。それよりも石斛、私にはよく判らないがお前は一般的に見て相当強いんじゃないのか?」
「わたしよりも戦闘力が劣る者など、アスタ――いえ、サンゾウ様麾下の者達ぐらいです」
「ふーん……三蔵の配下は弱いのか。逆に強いのは誰の配下だ?」
「狂気的な意味で言えば、間違いなくパパイヤ様麾下でしょう。一切の情け容赦がありませんから」
なるほど、気をつけねばな……と呟くカミュを見ながら、呆然としていたロザーリエが我を取り戻して首を傾げた。
セッコクと呼ばれる女性は間違いなく、少年に仕えている者の話をしているはず。だが一方の少年は初めて聞いたような態度を今も崩さない。
もしかして彼は配下の女性を揶揄っているのか? そんな可能性を脳裏に浮かべるロザーリエであったが、少年の眼差しが真剣なまま崩れないことを認めて、余計な一言を口にする危険は犯さなかった。
「話を戻すぞ、石斛。そこで屍を晒している変態達だが、此処から東の地に巣があるらしい」
「はい、わたしも聞いておりました」
「早速で悪いが、掃除して来てくれないか? 汚物はさっさと片付ける必要があるだろ?」
「で、ですが……わたしがお側を離れると、御身をお守りする者が誰も居りません」
笑顔で気軽に尋ねたカミュへと、キャラケンダが真剣な眼差しで抗議する。
「それはそうだが……。お前の配慮を無下にする訳ではないが、心配するほどの危険は特に無いと思うぞ?」
「お言葉を返すようで恐縮ですが、もし御身に万が一のことがあったら……」
いくら鈍感なカミュでも、その先は聞かずとも予想が出来る。
だからカミュは皆までは言わせずに、優しくキャラケンダへと問いかけた。
「では、この場に牛魔王を呼ぶか?」
「あ……いえ、ギュウマオウ様もお忙しい身。態々お越し頂くのは申し訳ないと言うか何と言いますか――」
「ではプリクラかパパイヤでも呼び戻そう――」
「畏まりました! 速攻で片付け、直ぐに戻って参ります!」
カミュの言を遮る形で、悲壮感に溢れたキャラケンダが決意の所信を表明する。
本来であればかなり不敬な彼女の物言い。だがカミュは彼女の必死な形相に圧されて、その無礼を咎めるまでには至らない。
そんなキャラケンダをカミュはジッと見つめる。その瞳は謎の自信に満ち溢れており、任務の失敗など微塵も疑っていない表情だ。
「か、彼女一人を向かわせるのですか? いくらなんでも危険でしょう!?」
「ん? 余裕だろ?」
「はい。まかり間違っても危険は無いかと……」
「だそうだ。では石斛、頼んだぞ。あ、それと移動手段だが、バイコーンを一体貸し出そう。馬車から切り離してくれ」
「で、ですが……」
なおも食い下がろうとするサマンサを、ロザーリエが優しく引き剥がす。
キャラケンダの行動を決められるのはカミュだけ。関係の無い二人が口を挟むべき問題ではないのだ。
そんな戸惑う主従を視界の隅に捉えながら、キャラケンダは馬車に繋がれたバイコーン二体のうちの一体を切り離した。
「そっちの用事が済んだら、直ぐに後を追いかけてくれ」
「畏まりました。所用は即座に終わらせます」
「気をつけてな」
はい、と微笑みながら跨ったキャラケンダが、鞍の無いバイコーンを器用に操って東へと駆ける。
馬を駆けるメイド。そんなカミュの呟きは誰に届くことなく、午後の爽やかな風に掻き消される。
次第に小さくなっていくキャラケンダの後ろ姿とバイコーンの揺れるポニーテイルを、サマンサとロザーリエは疲れきった表情でただただ静かに見守った。
「カール=ハインツ……強敵だった。そして個性が強過ぎたな」
「ハインツ? お前、何言ってんだ? エルンストだろ?」
「あぁ……そうだった。シュナイダー的なキャプテン的な何かと勘違いしていたよ」
「相変わらず何を言ってんのか判んねー奴だな。お前は」
辟易とした表情で肩を竦めながら、チャールズはカミュを見据える。
ホバリングしてカミュと視線を合わせるグレムリン。そんな彼を見ながらカミュはフフッと笑みを溢した。
この幻獣、自分に劣らずおっさん臭い言動が多いな、と思いながら。
「しっかし、あの女は強かったな。間違いなく俺より強いよな?」
「さあ? よく判らないが石斛とお前の強さに大きな差なんて無いんじゃないのか? チャールズがどれだけ強いのかは知らんが」
「いや、勝てる気がこれっぽっちもしねえよ……。となると、あのおっさんの目論見は見事に外れた訳だ」
「目論見?」
チャールズの冷静な自己分析を聞いていたカミュが、小さな翼で空を飛ぶ生物と視線を合わせる。
そして彼の口から出た気になる一言に首を傾げていた。
「ああ、あの辺境伯のおっさんな。だってよ普通、見ず知らずのお前に大事なことを頼むと思うか? そのお嬢様をブレノーアイまで送り届けろなんて」
「そういえばそうだな。余程、私が紳士的に見えたんじゃないか?」
「違う、違う。お前が保有する戦力……まあぶっちゃけて言えばあの女と馬だな。それをカウンティに向けたかったんだ」
「カウンティ? あぁ……ブレノーアイまでの途上にある都市の名前だったな。そんなものがアルベルトの目論見なら、別に私は気にしないが?」
チャールズの困り顔を受けて、特に問題はないとカミュが優しく応じる。
だがチャールズは困り顔のまま頭を掻き、言うべきか否かを悩むように重々しく口を開いた。
「まあ、お前ならそう言うと思ったよ。そう予測したからこそアイツはお前に託したんだ。今もモンスターに囲まれているカウンティの開放をな。でも想定外だったのはセッコクだったか? アイツの並外れた戦闘力だ」
「石斛の戦闘力では不満だったか?」
「イヤイヤ、逆だ逆。想定よりも強過ぎたんだ」
「強いと何か問題があるのか?」
要領を得ることが出来ないカミュは、チャールズへと率直な疑問をぶつけ続ける。
ぶつけられたチャールズは、カミュの察しの悪さに苦笑を送るだけだ。
「そこのお嬢様も、お付きのお下げ女も、強さは俺と同じくらいだ」
「お下げとはなんですか、お下げとは」
「だからもしお前が心変わりした場合は、三人で処分……いや拘束するつもりだったんだが……。まあ当てが外れた訳だ。お前の従者があんなに強いなんて、ほんと想定外だったぜ」
ロザーリエのツッコミは空を切る。
「なるほどな……だが心配はいらないぞ? 私は約束を違えないし、サマンサとロザーリエは無事にブレノーアイへ送り届ける」
「まあお前には期待しないが、お前の配下には期待させてもらう。で、このまま野盗の駆除が終わるのを此処で待つのか?」
「いや、我々はこのまま進もう。カウンティが襲撃されているのであれば、早く到着するに越したことはないからな」
カミュの即断を聞いて、二人と一体が目を見開いた。
「お前、ちゃんと俺の話を聞いていたのか? カウンティはモンスターに囲まれているんだぞ? 今はあの女と馬一匹分の戦力が欠けてるんだぞ!?」
「あぁー、その前に……バイコーンを"匹"で数えないように。なんか怒ってるっぽいぞ?」
「ああ、そうだったな。馬だから"頭"だ――ッ!?」
その瞬間、バイコーンの馬体からドス黒いオーラが立ち昇った。
カミュの表情に変化は見られないが、サマンサ、ロザーリエ、チャールズの顔はみるみる青ざめていく。彼等の身体がブルッと震えたのは、寒さを感じたからなのか。それとも恐怖を感じたからなのか。
そんな二人と一体の目に見える急激な変化だったが、気遣いの足りないカミュには酌んで貰うことが出来ない。
「いや、頭じゃなく"体"が正解じゃないか? それにそのバイコーンの戦闘力は、おそらく石斛と同程度。先ほどの話が本当であれば、このバイコーンはお前達よりも遥かに強いぞ?」
「あ、ああ……そうみたいだな。すまなかった」
ホバリングしながら一礼と共に謝罪するチャールズ。そしてその姿を見下すように睨み続けるバイコーン。
だがその怒りも、カミュが背中を撫でたことで一気に霧散する。しかしバイコーンの形相はまったく変わっていない。けれど彼の発するオーラは一気に和らいでいた。
その様子を見て胸を撫で下ろしたチャールズへと、状況がまだ飲み込めていないカミュが小首を傾げて更に説明を続ける。
「石斛が居なくなって心細く感じるのは判る。だが私もそれなりに戦える――はずだし、戦力が足りなければ援軍を呼ぶから安心するが良い」
「安心するが良いって……援軍なんて何処から呼ぶんですの?」
やっと復活したサマンサが訝し気な視線をカミュへと送る。
唯一の供だったセッコクは別行動を取っており、彼の供なんて唯の一人も見当たらない。
そしてロザーリエに至っては変態との戦闘、更にツッコミ無視という精神的ダブルダメージが残っている所為か、その怪訝な表情は冴えないままだ。
「ほうれん草が大好きなおっさんを呼ぶ要領で念じれば、助けはあっという間に来てくれるぞ?」
「何を言っているのか全く判りませんが、援軍は当てに出来ないということですね?」
「ん? 私は呼べると言っているんだが……」
「この人数には多少の不安があります。ですがわたくしもロザーリエも戦えますので、先ずはカウンティへと近付き様子を見ることにしましょう」
何故か話の通じないサマンサを不思議そうに見つめながら、カミュは散漫になっていた意識を南へと向ける。
カウンティを囲むモンスターがどれ程の数に上るのか不明だが、それがマンティコア程度のモンスターであればカミュの障害とは成り得ない。
拳に力を込めて力強く頷いているサマンサの説得を諦めたカミュは、左右に首を振りながら目の前の馬車へと乗り込んだ。
「あ、そうそう忘れていた。バイコーンよ、ロザーリエの傷を治してやってくれ」
カミュが優しく馬体を撫でると、バイコーンの額に黄色の魔法陣が浮かび上がる。
その瞬間、下らない会話で暫く放置されていた、浅くはないロザーリエの傷が逆再生のように塞がっていった。
そのあまりにも異常な光景を見て、サマンサとロザーリエは言葉を失う。
「……うそ」
「うむ、流石だな」
ロザーリエの傷が回復したことに満足したカミュは、バイコーンの前脚の付け根をポンッと叩く。
「ではついでに、そこのゴミも消しておいてくれ」
嘶いたバイコーンの額から一陣の風が巻き起こると、周囲に転がっていた十二体の亡骸が塵と消えた。
その様子を唖然と見守るサマンサとロザーリエ。この光景を見て彼女達は何を思うのか。
二人は口を開いて固まりながら、やがて驚愕に塗れた表情で悟ってしまう。この馬のような生物は実は魔獣であり、疑う余地なく自分達よりも遥かに強いのだと。
「ま、魔獣……」
「どうした? 早くしないと置いていくぞ?」
「え? あ、ええ。そうですわね、行きましょうか」
「貴方達は一体……」
呆然自失のロザーリエがやっとの想いで口を開くが、其処から出てきたのは只の質問に留まっていた。
彼女が本当は何を言いたかったのかカミュには判らない。だから彼は聞いたままの意味で素直に答える。
「私たちか? ただの旅のおっさんとその馬だが?」
「あなたがおっさんなら、私はお婆ちゃんと呼ばれてしまいますね。不愉快な回答を望んではおりません。言いたくなければ黙っているのがよろしいかと」
「ん? 機嫌を損ねてしまったか? まぁ他意はないんだ。許してくれ」
「……もう良いです。直ぐに出立しましょう。服もボロボロですし」
真面目な質問を冗談のように返されて、ロザーリエの不機嫌さが急上昇する。おそらくだが、自分の仕事着が斬り刻まれたことも不機嫌の一因となっているのだろう。
だが当のカミュは自分が冗談や嫌味を言ったつもりは微塵もない。
「私の知っている地域では、ワザと服を破いて着こなすようなパンクな者が居たぞ?」
「……ぱんく?」
「あぁ。それが何故お洒落なのか理解が出来なかったが、お腹や太腿のところを破いて素肌を露出させると、ファッションセンスのパラメーターが上昇する仕様だったな」
「私はシューベルト様が何を言っているのか理解出来ませんが? それに服を破ってお洒落だと言い張るような、そんな頭のおかしい人がこの世に存在する訳がないでしょう!? もう良いです。日が暮れる前にカウンティへ到着したいので、直ぐに出立しましょう!」
彼女の怒りに困惑を隠せないカミュ。そんな彼が現実逃避のように記憶にある故事を独り言のように呟く。
「吾、日暮れて途遠し。吾、故に倒行して之を逆施す。倒行逆施、伍子胥だったな」
「……一体何を言っているのですか?」
カミュとサマンサに続いて客車へと乗り込んだロザーリエが、眉間に皺を寄せて不機嫌そうに首を傾げる。
「ん? お前が言った「日が暮れる」で思い出したんだ。今の話に何一つ関係はないがな」
「トウコウギャクシ? それはどういう意味なのですか?」
「興味があるのか?」
カミュの質問にサマンサがコクリと頷く。
「簡単に言えば、道理に逆らって行動を起こす、との意味だ。屍に鞭うつの語源だったはずだな」
「屍に鞭うつなんて……物騒なお話ですね」
「そうだな。そして私も途の途中に居るが、この途は果たして何処に続いているのだろう?」
「カウンティではないのですか?」
不思議そうに尋ねるサマンサを見ながら、カミュは安堵感と共に苦笑を漏らした。
「何が可笑しいのですか? 今、わたくしを見て笑いましたよね!」
「いや、笑ってなどいないさ。少し……いや、かなり安心しただけだ」
「むぅ……馬鹿にしているのですか?」
「誤解だ、誤解。チャールズ! 馬車を進めてくれ」
可愛らしく頬を膨らませたサマンサを煙に巻きながら、カミュはロザーリエの提案に沿って出発を促す。
そして馬車は御者台に座ったチャールズが手綱を引くことなく、バイコーンの意思だけで南へと動き出した。二体が一体になっても、馬車を牽く力強さに遜色は見られない。
その最奥に座すカミュは野盗に襲われた経緯を踏まえて、上顎を大きく跳ね上げたまま馬車を走らせている。客車の視界前方を大きく解放したのは、周囲を常に警戒できるよう配慮した為だ。
「って言うか、この馬車の乗り心地が異常ですわね。この草原をこの速度で走らせているのに、何故車体が安定しているのでしょうか?」
「さあ……どんな技術なのか判りませんが、私も初めて体験する乗り心地です」
揺れを体感させることなく疾駆する馬車に乗車し、二人は顔を見合わせて辺りを見回す。
上顎をフルオープンさせながら道なき道を走らせるなど狂気の沙汰。高さが増した分だけバランスが崩れるのは自明の理、のはずなのだが……。
そんな常識は当て嵌らないとばかりに、一頭立ての馬車は安定した走行で一路南を目指している。
「ほぉ、初体験か。貴重だな」
「シューベルト様が仰ると、卑猥に聞こえてしまうのは私の気のせいでしょうか?」
「いや、当たらずとも遠からず、だと思うぞ? おっさんは下ネタが大好きだからな」
「またおっさんなんて言う……。余程下らない冗談が好きなのですね」
サマンサは溜息を吐きながら、呆れ顔でカミュを見つめた。
ロザーリエはこの話題への興味が薄れたのか、忙しなく興味深気に辺りを見回している。
「風が入って来ないのは魔法的な力ですか?」
「さぁ……そうなんじゃないか? 良くは知らないが」
「知らないって……あなたの馬車ですよね? やはりあなたは何処かおかしい……いえ、何か足りないのでしょうか?」
「ふむ……調子が戻ったのは何よりだが、少々辛辣にして失礼に過ぎるのではないか?」
怪訝そうなロザーリエの視線を受けながら、何故この女性は言葉が冷たいのかカミュは思い悩む。
生前は一切縁が無かったツンデレ属性。そんな面倒な性癖に困惑しながらも、彼はやがて一つの結論に辿り着く。逆に考えれば興味が無ければ言葉も厳しくならないはずだ、と。
つまりロザーリエは自分に大きな興味、或いは好意を抱いている可能性が高く、そしてそれが途轍もなくウザったいことに彼は改めて気付いた。
「そうでしょうか? 私はそうは思いませんが」
「ふーむ。ま、どうでも良いことだな。先は長い、気楽に行こう」
「……」
「どうしたのですか? ロザーリエ」
即座に不機嫌となったロザーリエの顔を覗き込みながら、サマンサが可愛らしく小首を傾げる。
なんでもありません、と一礼するロザーリエに、そうなのですか? と食い下がるサマンサ。
暫く二人の遣り取りを見ていたカミュだったが、出口の見えないその遣り取りに飽きたのか、二人に向けていた意識を虚空へと逸らした。
そして何処からともなく取り出した金属を手に、着座した姿勢のまま良く判らない作業を開始する。
そして一刻後、カウンティへと辿り着いた彼等は、夕暮れが近づく草原の中で壁とモンスターと異常に囲まれる都市を見つけるのだった。