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第5話・訓練と交流の日々その1・Aパート

 翌朝、妙に早くに目が覚めてしまった。部屋を一人出て、格納庫に向かう。訓練機の1番、昨日戦った黒岩さんの機体の場所に行くと、あの女性が言っていたように整備を行っている最中だった。様々な機械が取り付けられて自動化はされているものの、十人ぐらいの若い整備スタッフがあちこちで作業をしているのが見える。


「あの、整備の様子見学してもいいですか」


 近くで腕組みをして立ち、監督をしているらしい年配の男性に聞いてみた。


「ん? パイロット候補生……にしてもガキじゃねえか。ああ、お前が例の20番機のヤツか」


 老け顔のせいでここ数年は初対面の人に子ども扱いされないことが多かったので、ガキと言われたことが不思議と嫌でなかった。雰囲気が、バイト先の整備工場の社長に似ているかもしれない。


「パイロットは休むのも仕事のウチだぜ? あんま面白いモンでもないと思うが、まあ、好きにしろや」


「はい、ありがとうございます」


 作業をしているスタッフの邪魔にならないぐらいにまで近づいて、機体の足首部分の点検の様子を見せてもらう。ホントは上の、腕や機関部の整備も見たいんだけどな、とチラチラと上を気にしている様子に気づいたのか、先ほどの男性が話しかけてきた。


「リフト使って、上がってみるか?」


「お願いします!」


 むき出しのエレベータのようなリフトで、機体胸部付近に取り付けられた足場まで一緒に上がってきた。


「おう、進捗はどうだ」


「はい、あとは消耗ユニットの交換と動作チェックです」


 左肩の関節部で作業をしていたスタッフと会話を交わすと、こちらを指さした。


「その作業、コイツにやらせてみろ。お前は横で教えてやるんだ」


「ええっ、オヤっさん!? そちら、パイロット候補生の方じゃないですか!」


「いいからやらせてみろって――おいお前、やってみるよな?」


 もちろん、体験させてもらった。”オヤっさん”と呼ばれていたのは技術部長の重田(しげた)さんという人で、地上(した)宇宙(うえ)を行き来しながら仕事をしていて、先週までの俺の研修成績も知っているようだった。最初は戸惑っていたスタッフの人も、俺の立場やバイトの話をすると興味深そうに聞き、作業内容を親切に教えてくれた。作業を監督しながら語ってくれた重田さんの話では、このステーションの建造や”フェンサー”の設計にも初期から関わっているという。職人っぽい外見ながら中身はすごい技術者のようだった。


「――重田さんは、異星人による侵攻の可能性はどのぐらいあると考えているんですか?」


「そうさな、異星の宇宙船の話は聞いていると思うが、あれにあった通信装置らしき機械が受信している特定パターンの信号の間隔が、徐々に短くなっていてな。要は発信源が近づいてきてるわけだな。情報部の試算では、早くて2年後にそれが地球圏に着く、と」


「でもオヤっさん、映画とかじゃ友好的な異星人ってのもいますよね」


 スタッフの人も会話に混ざってきた。


「そりゃお前、戦わずに済むに越したことはないがな、外交ってのはナメられたら付け込まれる。あと2年で恒星間航行は無理にしても、この星を守れるだけの準備はしないとな」


「俺、異星人との戦いになったら、”フェンサー”でちゃんと戦えますかね……」


「昨日、君が乗った20番機を点検したよ! 損耗がすごく少なくて、模擬戦をやった後とは思えなかったよ? 大した腕じゃないか!」


「そういうことを聞きたいわけじゃないんだろ? まあ、俺も平和な時代で生きてきたから命のやり取りなんてわからんし、ましてまだガキのお前には荷が重いかもな」


「オヤっさんの口癖ですよね、『俺達が扱ってるのは殺し合いの道具だが、せめてでかい棺桶(カンオケ)にならんよう全力であたれ』って」


「はは、それじゃなにが何でも生還しないとですね――っと、これでいいですか?」


「む、きちんと出来てるな。お前、パイロットがもし無理なら技術部でも人員募集中だからな、覚えとけ」


 その時、下からすでに聞きなれてきた声が聞こえてきた。相変わらずでかい。


「技術部長ぉーっ! やはり今日中には無理だろうかー!? 一刻も早く実機訓練したいのだが!」


「馬鹿野郎! 訓練といえど半端な整備状態で出せるか! 大人しくシミュレータでもやってろ!」


「ぐ、無理を言って済まない! ……ん? おお、そこにいるのは琥太郎じゃないか! おおい、一緒に朝飯(アサメシ)に行こう!」


「お前も、あれ(・・)ぐらい図太くなったほうがあれこれ悩まずに済むんじゃないか?」


「ははは……参考にするために、お誘いにのってきます。いろいろありがとうございました」


 俺はそう言って重田さんとスタッフの人にお辞儀をし、コクピットの横のワイヤーを使って床まで一気に降りる。意外とこれがスリルがあって気持ちいい。


「ご一緒させて貰いますよ――って、ああ、黒岩さん、手を洗う間ぐらい待って下さいよ!」


(つづく)

昨日の投稿でも書きましたが昔に書いたホラーショートも投稿しましたので、お暇でしたらお立ち寄りください。

http://ncode.syosetu.com/s1803d/

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