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第2話・モノはお試しインターンシップ・Bパート

ブックマーク数って、このお話しの続きが気になるって思ってくれてる人って考えていいんですよね!?すごく嬉しいです。

「――泊まり込みの、就業体験(インターンシップ)? 夏休みとは言え4週間もあるじゃないか」


「宿泊費から一切無料(タダ)、って本当に大丈夫なのかしら」


「大丈夫だって、ちゃんと学校の許可も通ってるんだから」


 あれから5日後、現在暮らしている伯父の家での夕食時。

 先日、喫茶店で神宮司さん(彼女)から聞かされた話は、今伯父さんが口にしたインターンシップだ。俺がまだ高校生だということで、ひとまずこういった形を取りたい、という話をした3日後には正式な書類が学校の進路指導室に届き、担任に呼ばれた。

 分厚い封筒の中身をみるに、宇宙防衛(・・・・)といった内容は伏せられ、件の会社(フソウ)の宇宙開発事業部の見学と仕事体験、といった無難な内容にまとめられていた。スカウトされたことにそこまで乗り気ってわけでもないが、4週間家を離れられるのは大きい。


「あーいっそ夏休みの間ずっと居なければいいのにねー」


 こちらを向くわけでもなく、しかし明らかに聞こえるように言っているのがわかる呟きが隣の席から漏れる。

 いつにも増して不機嫌そうな顔を隠そうともしない、キツめの整った顔立ちをした同い年の従姉。


「こら、春香」


「――フン――ごちそうさま」


 そう言って自分の分の食器だけさっさと片づけてダイニングから立ち去る。伯父さんはいつものように困った顔で。

 

「琥太郎、すまんな、いつもあんな調子で……」


 5年前、小学6年生の夏に両親が死んだ。父の兄にあたる颯太伯父さんの家に引き取られることになったとき、私立中学の受験を控えていた従姉の春香は反対していたらしい。今なら分かるが思春期はじめの女子にとって親戚とはいえ同世代の男子と一緒に暮らすというのは相当なストレスにもなっただろう。受験に失敗した上、クラスメイトから変な噂を立てられたり、からかわれたり、なんてこともあったようだ。

 だからって、髪まで茶色に染めて、あんなにやさぐれなくてもいいものだ。とは言えちゃんと一緒の食卓にはつくし、家事の手伝いもしっかりこなしているから根っこまでひねくれてるわけでもないんだろうけど。


「ま、暫く顔を合わせなくなるから少しは冷静になれるかも。ともかく、このインターンシップの書類、よろしく」


「わかった、まあ、いい経験になるだろう。頑張れよ」


――――


 そうして、夏休み初日――。着替えやらを詰め込んだスポーツバッグを担ぎ、郊外の駅に降り立った。時刻は昼前、ジリジリとした日差しが照り付けている。あまりの眩しさに顔をしかめながら腕時計を見ようとしたのとほぼ同時に、目の前に白いスポーツカーが停まった。


「2週間ぶりですね。では、行きましょうか」


「はい、お願いします」


 迎えに来てくれた神宮司さんの車の後部座席にバッグを放り込み、助手席に座る。


「神宮司さんって――」


奈央(ナオ)、でいいですよ。というかあんまり自分の苗字、好きじゃないんですよ」


「――奈央さんって、防衛省の職員なんですよね。髪とかそういう格好とかって、大丈夫なんですか?」


 以前会った時とちがい帽子がなく髪を下しているが、服装は似たような挑発的なものだ。改めて見ても外見の雰囲気は従姉(春香)に似ている。


「私のいる特務局ってところは現場ですから、そういうのはあまりうるさくないんですよ。この格好も、個人的な好みもありますが、何より動きやすさ重視ってことで……っと、見えてきましたよ」


 フロントガラスの向こうには拓けた土地に工場のような建物群、そして奥には作りかけのジェットコースターのような建造物が見えていた。あれは、たぶん。


「マスドライバー……本当に、宇宙に出るための施設なんですね……」


「ご名答です。公開直前の情報だから教えちゃいますけど、”軌道エレベータ”も建造中なんですよ。物資はともかく、普通の人が宇宙(そら)に上がるにはマスドライバーでは加速が激しすぎるんです」


「この期間中に、俺、もしかして本当に宇宙に上がったりって出来るんですか?」


「それは、前半の訓練やテストの結果次第ですね。エレベータが完成すればいいんですが、それまではお金が結構かかりますからね」


「俺、今更ですけどすげーやる気出てきました……!」


「フフ……頑張って、下さいね? 私の推薦を無駄にしないでくれると嬉しいです」


――――


 初日は施設の見学と宿泊棟の使い方なんかの案内だけで終わったが、翌日からが実にハードだった。昔の宇宙飛行士の訓練程ではないんだろうが筋トレに体力テスト、反射神経のトレーニング、宇宙に関する講義などが目白押し。その中でちょっと面白かったのは、宇宙船や機械の整備だった。バイトの経験が意外と応用が効いたため、教えてくれていた人も飲み込みがいいって驚いていたみたいだ。

 2週目に、訓練用の戦闘機に乗せてもらう。最初は後部座席で見ているだけだったが、すぐに交代して操縦をさせて貰えた。初めて味わう本物の重力加速度(G)にも慣れてきた頃……


「基礎教育課程、全て評価A以上、申し分ないです。3週目からは、宇宙()ですね」


 2週間ぶりに顔をだした奈央さんが、こう告げた。


(つづく)

 

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