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第6話・訓練と交流の日々その2・Aパート

「日々」とか言っておいて1日しか経ってなかったので、続編です。

それに伴い前話のサブタイトルも修正しました。

 格納庫で自機から下に降りた結城さんは、先に戻った俺が待っているのに気づくとこちらに歩いてきた……が、足取りに違和感を感じる。滑らかなんだけど規則的過ぎるというか……近づいて来ると、ウィーンという微かな機械音が聞こえる。


「歩くのが遅くてごめんねー、何しろ、片足コレだからさー」


 そう言ってズボンを捲って見せてきた右足は、金属製の、機械仕掛けのものだった。

 

義足(ぎそく)、ですか。でもここまで滑らかに動くものでしたっけ? テレビで観たのはもっとぎこちなかったような……あっ」


「そそ。フソウで研究中の最新試作義肢だよ。モニター協力で使わせてもらってるんだ」

 

 とりあえず、一緒に格納庫を出て、休憩スペースのベンチに座る。自動販売機のようなドリンクサーバ――無料だけど――で出した飲み物を飲みながら話す。


「ボクは高校まで空手をやっててね、これでもそこそこいいところまで行ったんだよ。でも骨の病気でやむなく切断――ああ、そんな顔しないでよ」


「それでその義足を?」


「いやいや、普通のまともに動かないやつさ。それで空手も出来なくなって、ゲーセンで遊ぶことが増えてね、そこにあのゲーム(ヴァナリアス)の登場さ。最初は観てるだけだったんだけどね」


「ペダル操作もかなり必要ですよね?」


「そう、だから最初はプレイするの諦めていたんだけどさ、説明書見たら”マクロ”機能ってあるじゃない? あまり使ってる人いないみたいだけど、コレだと思ったんだよね」


「右足の操作をマクロで代用したんですか?」


「ほかのプレイヤーは”必勝コンボ”みたいな特定の状況に気持ちよく連続で攻撃をするのに使ってたみたいだけど、28個のマクロ領域、右足を使った操作や使いまわしの効く短い動作の登録に全部つかったよ」


「状況に応じて選んで使い分けるってすごく難しそうなんですけど」


「いやー、楽しかったねー。ゲームでは近接戦闘ばっかり練習してさ。普通は射撃メインなんだろうけど性に合わなくてね。課金で蹴り技用の格闘ユニットつけたり」


「あ、もしかして結城さんのハンドル名って……”IRON LEG(アイアン レッグ)”ですね? 個人対戦ランキング上位の……」


「おっと、大当たりー。 まあそれで、ボクにも例の”オフ会”の招待が来たんだよね」


「”オフ会”!? なんですかそれ?」


「あ、そうか君は別口だったよね。ここの候補生のほとんどは、今年の頭にあったハイランカーの会で集められたんだ。さらにそこから選抜されたわけだけど」


「なるほど、そんなことが……でも、失礼ですけど、その足で選抜されたっていうのは……」


「まあ色々大人の都合があるんだろうねー。君はいざ戦闘になったら、生還するのも大事だけど、必ず五体満足(・・・・)で戻れると、思うかい?」


 急に振られて、びっくりした。正直、宇宙空間ではコクピットにまで攻撃が届いたら生命維持に関わるだろうから死ぬか生きるかのどちらかしかないような気でいた。でもパイロットスーツの緊急止血機能などを考えれば、手足を失うような怪我の可能性もあるってことだ。


「それでこの義肢の研究に協力すること、”フェンサー”のマクロ機能の突っ込んだテストをすること込みで、パイロット候補生の契約をしたんだよね」


 たぶんテストパイロットや整備士兼任で、前線に出ることはないだろうけどね、と結城さんは付け加えた。


――――


 翌日からも他の候補生の人たちと模擬戦を重ねる。黒岩さんとも再戦したが、前回同様の大胆な動きに加えて機体に負担をかけない、余力を残した操作もある程度モノにしていて驚かされた。攻撃は鋭く、状況判断がはやい。射撃も格闘もレベルが高くて短時間で中破判定を取られてしまった。

 終わったあとに結城さんの話をしたら「マクロ機能の達人!? 面白そうだ!」と言って早速対戦を申し込んでいた。そして多彩に変化する連続攻撃に翻弄され、見事に大破判定で敗れていた。おまけに強引に逃れようと無理な操作をしたためか、また整備で機体使用不能になったと大声で騒いでいた。

 重田さんの話では、この練習機で集めたデータを元に実戦用の機体を試作中なのだとか。実戦ではもっと思い切り動かしてもそうそう消耗しないようにせんと、動く棺桶になっちまうからなあ、などと言っていた。

 4週間目には5対5、10対10といった団体による模擬戦なども行う。黒岩さんはさすがトップランカー、集団戦でもその実力は抜きんでていると感じた。その一方で結城さんは集団戦は苦手なようだったが、うまく避けながら1対1の状況を作るのが上手かった。ちなみに俺は毎回避けに徹し小破以下で抑えつつ反撃、というスタイルで中間ぐらいの評価だったようだ。

 集団戦後には会議室でリプレイを見ながら動きについてお互い欠点を指摘し合ったりと、毎日充実している。


(つづく)

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