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第5話・訓練と交流の日々その1・Bパート

8/9 8:34 黒岩との会話を少し修正・誤字修正

「むぐ……ふぁんふぇふぁいもっふぉのふぇいにゃくを……ぐぬ」


「食べるか喋るかどっちかにして下さい」


「んぐ……パイロットの契約をした理由か、求められたから、じゃダメなのか?」


 食堂で黒岩さんと朝食を一緒にとる。テレビで観たこのある”宇宙食”みたいのではなく、きちんとした食事で、今朝はアジの干物に納豆、漬物、味噌汁にご飯といった純和風だ。何気に嬉しい。


「求められた?」


「誰にでもできる仕事じゃなくて、でも俺にはできる素質があるって神宮司さんに言われてな! 前の職場じゃ誰でもできるような仕事ばかり、上司からも『替わりはいくらでもいるんだ』なんて言われてた俺にだ!」


 他にも若い時期に荒れていて喧嘩に明け暮れ、さんざん大勢の人を悲しませたり迷惑をかけた分、その償いができる仕事でやりがいがある、なんて少し重い話も聞くことができた。実家にはまだ中学生の弟と妹がいるから、設備のいい私立学校に行かせてやれるな! なんて話は聞かなかったことにしておく。


「――ところで、琥太郎」


「なんですか?」


「神宮司さんとは、ホントに何も(・・)ないんだよな!?」


――――


 朝食後、部屋に戻って夏休みの宿題(・・・・・・)を進め、軽い筋トレをした後再び格納庫へ。実機による模擬戦の申請をしておき、相手が決まるまでの間自機のコクピット内で昨日のフィードバックを行う。シミュレータ内で動作のリプレイ(再現)をし、『このときは、こう動かしたかった』という細かい調整をしていく。地味な作業だが、この繰り返しによって確実に命中率、回避率が向上するのだ。


「――20番機、ボクは8番機の結城 葵(ゆうき あおい)だ。手合わせ、いいかな?」


 音声と同時にサブモニタが表示され、通信相手の姿が表示される。細身というよりはむしろ華奢な体格をしていて、中性的な顔立ち、黒い髪は肩まで伸びている。声も高めだが確か渡された候補生一覧には女性はいなかったはずだ。調整済みの設定を保存し、通信に応じる。


「はい、白根 琥太郎です。よろしくお願いします」


 順番にエレベータでステーション上空に出る。一定距離をとった後、向き合った。なんとなく、”フェンサー”を操作して、礼。


「ハハハッ、君、面白いね! ――行くよッ!」


 黒岩さんのときと同じように両腕にライフルの状態で連射しながら突っ込んでくるが、直前で急停止、流れるような動きで武装を変更してヒートナイフの三段突きから牽制のキックで後退、再び距離をとる。こちらはシールドとナイフで攻撃を捌くのが精いっぱいだった。

 再び相手が突っ込んでくる。攻撃パターンが同じ……落ち着いてよく見ながら捌く。このような複雑な連続操作を繰り返し行うのは本来なら至難の(ワザ)だ。しかし――


「――”マクロ”機能、使ってるんですか」


「さすがにバレるよねー。でもこの機体、ゲームと違ってすごいんだよ! モード切替込みでマクロ250個も登録できるんだ!」


「そんなに使い分けられる人、いないですよね」


 ゲームでも特定の動作の組み合わせをレバーのボタンに登録して自動再生する”マクロ”機能があった。格闘ゲームのコマンド連続技のようなものだ。楽な操作で連続攻撃を叩きこんだりもできるが、変化に対応できないので使い勝手が悪いとされていた。


「昨日一日、マクロ登録に使っちゃったけど、その成果試させて――ねッ!」


 さっきまでと同じ攻撃の出だしだが、あくまで初見のつもりでよく見て対応する。予想ではどこかでパターンを変えて意表をついてくるはずだ。三段突きの最後にそのまま勢いを利用して倒れこむようにして前転、伸ばした左脚の(カカト)が降ってくる!

 両腕をクロスして受け止めようとしたのに、衝撃が襲ってこない。フェイントだ、と気づいた時には既に逆回転で姿勢を戻していてその両腕には再びライフルが握られている。胴体を狙った至近距離での連射を必死で躱すも避けきれず、数発が掠った。


「ダメージ、小破判定」


 システムからのメッセージで疑似レーザーの当たり判定。小破というのは移動や攻撃には支障ない程度の破損状況。模擬戦でもそれ以上のダメージ判定が出ると操作に制限がかかって状態を再現するようになっている。


「ここまでにしようか。まさか小破で抑えられるとは思わなかったよ。もう少しコンボの派生を見直さないとだな」


「……最後のほうのあびせ蹴り、ガードしてなかったらそのまま振り抜いてましたよね?」


「そうだね、普通のマクロだと全部のパターンを登録するんだけど、これなら短いパターンをたくさん登録して組み合わせられるから」


「ゲームではマクロ使ってなかったんですが、使い方、教えてくれませんか?」


「んー、いいけど、あまりおススメはしないかな」


「どうしてですか?」


「ボタンの組み合わせが複雑でさー、5個同時押しとか、もう、指つりそうなんだよね」


「なるほど、とりあえず、戻りましょうか」


 他の候補生は、どんな戦い方をするんだろうか。明日以降も、できるだけ多くの人と模擬戦を経験したいな。


(つづく)

なんかあれよあれよという間に10万PV達成です。ありがとうございます!

スマホでの読者の方も多いようですね。

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