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吉田乖離はロリコンである

「好きです。私と、私と付き合って下さい‼︎」


ストレートな告白。


「ごめんね。中学生より下にしか興味が無いんだ。背と胸を減らして、何なら時間を遡って告白してよ。」


「最っ低‼︎このロリコン‼︎」


張り飛ばされた頬を撫でることなく、涙を流しながら走り逃げた女性をただ眺める。

体育館裏という立地と、舞い散る銀杏の葉に少し出来すぎだろ、と溜息を漏らした。

ビンタと涙の理由は理解していた。しかし、良心の呵責など全くなく、もう日常の一つに過ぎない。

整った顔立ちだとは思う。告白されることも少なくなかった。高校に入学してからは。

誰の恋も実ることはなかったし、寧ろ軽蔑の対象にしかならなかった。何せ相手が幼女じゃなかったから。おかげで友達は少ない。理解のある中学校からの友人が数名と、ロリコンな部分に関わりのない遊び仲間としての同級生が数名。勘違いしないで頂きたいが、普通に遊べる。幼女に全てを捧げてはいない。出来るならそうしたいが、最近のお巡りさん、怖いから。

そんな日常より、これから始まる非日常が楽しみで仕方なかった。


【インスタートオンライン】

ログインした人間にその人の特徴にあった職業、スキルを保持させるある意味完全プレイヤー依存のフルダイブ型のロールプレイングゲーム。まぁ、VRMMOだな。

ゲーム内のスキルはあくまで自分の力として、自分の存在と大きく掛け離れたものは行使出来ない。

外見はあくまでゲームキャラとして変えられる。

運営主催の大会もあるみたい。

分かっていそうで、その程度の情報しか分からない。

忘れていた。何より大切な事。

対象年齢はA。全年齢対象。

つまり、幼女と一緒にプレイもあり得る。

そう、あり得る。

βテストも行われず、情報公開の更新はなく、ただそれだけの情報を持って今日発売となった。フラゲを防ぐ為と、その世界を平等に、かつ思う存分楽しんでもらう為という理由で、サーバーの開始は日本時間の明日の正午となっている。明日は土曜日で、学生にも楽しんでもらうための配慮だろう。

それでもキャラクターの作成だけは出来るようで、帰ってからキャラメイクを予定だった。


「おかえりー。どうしたのー、その顔。」


出迎えてくれたのは妹。部屋から顔を覗かせる様は大変可愛らしいのだが、母には嬉しく、俺には悲しく、今年は俺と同じ高校に入学する為受験だ。


「あぁ、ただいま。いや、ビンタ喰らった。」


「まーた、酷い振り方したんでしょー。」


「告白してきたのがお前だったら考えたけどなぁ。」


「はいはい。ロリコン乙乙。」


部屋の前を通る際、駄目な兄貴に溜息をついた妹を部屋を見る(勿論やましいことではない)とインスタートオンラインと書かれたパッケージが目に入った。平積みされた参考書の上に置かれているのは問題かもしれないが声は掛けない。またゲーム内で会うかもな、思っただけだ。同級生達とプレイするのかもしれないし。俺よりは間違いなく友好関係は広いだろう。

階段を上がり、ダイブ用のヘルメット通称【ロゼコン】で頭を囲った。ちなみにロゼコンとは、Lose consciousness意識を失うを意味する英語をほぼそのまま読んだもので、ご注文はウサギではない。意識を失うってどうなんだと思わなくもなかったが、電源ボタンを押した。

「リンクスタート」

という言葉でもダイブ出来るのだが、ゲームを始める時は、電源ボタンを押すのが何と無く流儀だと思っている。家庭用ゲーム機の時代からそれは続いている。勿論、電源ボタン以外でゲームが起動出来るようになったことも最近の事のように思うのだけど。

そんなことを考えている間に意識は深層へと落ちていく感覚があり、部屋の照明はだんだん遠く、暗くなっていく。

落ちた先には、宇宙の様な空間が広がっていた。そこには一匹、いや、一人の妖精がいて、恭しく礼をした。妖精=幼女。

これからもよろしくお願いします。


「はい。ルリです、こちらこそよろしくお願いします。」


どうやらルリと言うらしい、俺の考えが伝わってるのか?


「はい。プレイヤーの脳波から思考を推測するプログラムがあります。」


「へぇー。」


便利だなぁ、じゃ幼女の妄想もおちおち出来ないということか。


「はい。ではキャラクターメイクを行います。名前を記入してください。」


そのはいは口癖なのか分からないが、ルリの目線が鋭くなったことに恐怖を覚えた。

目の前には金ピカのコンソールがあり、星が輝く宇宙の中でも一際異彩を放っていた。

因幡日向イナバヒナタと入力する。本名の吉田乖離ヨシダカイリとは何の関係も無い名前にした。因幡に関しては特に理由はないが日向というのは幼女の名前にも、また、普通の男の名前にも使えるという素晴らしい名前だからだ。少し憧れがあった。ローマ字入力だけでなく、漢字入力も可能になっていて良かった。運営母体がアメリカなだけに心配していたが少し安心した。


「はい。次に性別の選択、そして外見の特徴をお願いします。」


女の子で幼女キャラにするのもいいなと思った。事実キャラクターの外見は簡単に作り出せた。思い描くだけでキャラクターのメイクは終わる。茶髪のショートヘアーに大きな瞳。140センチほどの身長に、細い足。いや脚。当然の如く控えめに控えめを重ねた胸。日向のイメージは全力で幼女だった。

しかし、幼女になりすまして幼女を守るのは善か。答えは否だ。

なりすましているのがばれ、軽蔑されるのが何よりも怖い。もしかすると自殺しかねないかもしれないくらいに。

だから男性を選択し、外見を全く変更しないままキャラクターメイクを終了した。


「はい。これがあなたです。」


職業ロリコン

スキル《純粋無垢の守護者》

YesロリータNoタッチ…幼女には触れない。ただ愛でるのみ、これが掟。

半径100m以内の幼女の場所への転移。

全世界の幼女の悩みを察知出来る。

幼女を守る際のステータスの大幅向上。

幼女のステータスの閲覧。

幼女の判定は各々の裁量次第。

幼女としないんならいいぞ。お前がそれでいいならな。


「よっしゃあぁぁぁあ‼︎」


スキルを確認し、大きくガッツポーズをし、その場で飛び跳ねた。最後の言葉とか掟とか、謎な部分もあったにはあったが、そんなことは最早どうでも良かった。

嬉しい。これで幼女の力になれる。

ちなみに俺の幼女の基準は小学生から中学生まで、そして合法ロリも幼女に含まれる。

どうせなら多く助けたいしな。

まるで天にも昇る想いだった。


「はい。文字通り天に昇っています。」


「へ?」


冷静な返答を受け、下を見ると、あんなに目立っていたコンソールが、何処ぞの星と同化する程小さくなっていた。


「あ、無重力なのか。作り込まれてるなぁ。」


「はい。ログアウトはあのコンソールからしか行えません。ここままだと、一生漂い続けます。」


「それはやばい‼︎今の内に妹の姿を目に収めておかないといけないんだ‼︎」


もうすぐ高校生となってしまう妹の最後の晴れ姿。まだ見足りない。


「はい。分かりました。でもよろしいのですか?」


「?いいから降ろして下さい。」


忘れていたが高所恐怖症だった。

ここは落ちる心配はないけどね。


「はい。では降ろしますね。」


ルリの手が俺の腕に絡められ、薄く小さな羽が震えた。コンソールまで着いた。あーあ、至福の幼女タイムが…

ルリの腕が離れた途端、身体に電流が流れた。


「ッ‼︎痛ったぁ…」


一瞬だったが、静電気を何倍にも強めた電流が体を駆け抜けた。マジでなんで?


「はい。スキル《純粋無垢の守護者》です。あなたは幼女に触れました。自分で幼女を名乗るのも恥ずかしいですが。」


無表情で、説明するルリ。恥ずかしいと言った時だけ顔を赤らめる様。

あー、可愛い。心がぴょんぴょんします。


「にしても、ルリが電流に巻き込まれなくて良かったよ。おっと、そろそろ飯の時間かな。」


「はい。お気遣いありがとうございます。ではまた明日会いましょう。」


「うん、明日を楽しみにしてるよ。」


コンソールを操作し、ログアウトのボタンを押した。

ベットに横たわる自分の重みが感じられた。

瞼を開けると飛び込んでくる照明の明かりがあった。

隣には我が最愛の妹(妹は一人しかいない)吉田詩柳ヨシダシヤがいた。俺を揺すっている。ゲーム中でも、外部からの刺激は分かるからなぁ。


「お兄ー。ご飯ー。アカウント作ってないで早く食べよー。」


なんかバレてる。買ったことは伝えていないはずなのに。


「なんで知ってるんだよ。お前はもう作ったのか?」


「お兄こそなんで知ってるのー?私の部屋に忍び込んで下着でも盗んだの?」


「何故そうなる…今日見えたんだよ、お前の部屋の前通る時に。せめて参考書の下に置けよ。母さんに叱られるだろうが。お前が。お前が怒られるのを見るのは嫌なんだよ。」


詩柳が叱られるのは、自分が叱られるより何倍も心が痛む。まあ、良くも悪くも(大抵の場合は悪い)幼女のことしか頭にない為、自分に降りかかる親の怒声は何の事は無い。まあ、面倒臭いのは事実だが。


「っ〜、う、うん、まあいいよ、一緒にごはん食べよー。」


「おう。」


「とー、見せかけてー、どーん‼︎」


詩柳がたった今重みから解放されたベッドに飛び乗った。うつ伏せで。本人は意識してないだろうけど、最近ちょっと膨らみ始めてしまった蕾が俺のベッドに薄い衣一枚隔てた位置に存在している。いくら貧乳にしか興味がないと言っても、吉田乖離ヨシダカイリは今夜寝られそうにない。

下手したら壁で頭を打つんじゃないかと心配したがそんなことはなかった。


「おーにーいーさーまー?」


⁉︎

詩柳が敬語になった。

不味い。


「は、はい、何でしょう…詩柳さん?」


「此方の肌色成分多めのパッケージをしたDVDは如何なされたものでしょう。」


それか‼︎⁈

不味い、俺の秘蔵のコレクションが。


「友人が置いて行ったものかなぁ…なんちゃって…」


「なんちゃって?では違うのですね?貴方様の所有物なんですね。」


「は、はい…」


墓穴を掘ったー⁈

吉田乖離死す、

皆次回作に期待してくれよな。


「ま、いいけどねー。こいつの存在は知ってたしー。後でディレクターズカット版にして渡してあげる。」


「知ってた…だと。」


「うん、内容も見たしー。だから、私のお風呂シーンがあったのも知ってるよー。そこらへんを消して、お兄の大好きな全年齢対象版にしてあ、げ、る♡じゃ、早く降りてご飯食べよ〜。」


「はい…」


沈んだテンションで階段をとぼとぼ降りる。


(本当にあったんだ…)


「別にあたしのお風呂のは残してあげてもいいんだけどね。」


ボソッと呟かれた妹の声は兄に届くことはなかった。


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