どちらまで?
誤字脱字あるかもしれません。
残酷な描写あるので気を付けてください
どこかへ消えてしまいたい。
この世界は私に優しくなかった
私の目は虹彩異色症だった。実は気味悪がっていたけど自分の子供だと両親は育ててくれた。
しかし目を合わせてはくれずそうして育った。
小学校に入ると皆から気味悪がられ果ては菌扱いされる。
いつも一人だった。
唯一の在りどころは猫のミル。
小3のときに出会った。
しかし中2のときミルが殴り殺される現場に居合わせてしまった。
やっていたのは高校生だろうか
助けることもできず見殺しにしてしまった。
助ける勇気が出なかった自分を責めた。
いつも心配するかのように私に寄り添ってくれたミル。
最近は歳のせいか動きがのんびりしてきたのを見て辛かった。
けど、こんな唐突にしかも殺されるなんて
自分の居場所を失った気がした。
いじめは加速し傷が耐えない。
家族は冷えきっていた。
そんなある日家に帰ると争うような声が聞こえた。
また言い争っている。
最近はいつも言い争っている両親達。
もう見慣れてしまった。
しかしいつもとは違うことが起きた。
何かが倒れ割れ、とにかくすごい物音がして驚いた私は慌てて争っているリビングへと駆け込んだ。
何事かと周りをみると人が倒れている。
父だった。
周りには血の水溜まりができなにかの破片が飛び散っていた。
なにも考えられなくて呆然と立ち尽くした私の前で母が奇声を発していた。そして近くに置いてあった包丁で喉元を刺すと床に倒れた。
盛大に血が飛び散り私の顔にかかる。
それをなにもできずにただただぼんやりと見ていた。
気づけば全て無くしていた。
家族も
居場所も
将来も
大切な人も
最初から無かったのかもしれない。
産まれたときから………
このことはニュースに盛大に上げられた。
お通夜などは全部親戚に任せてずっとぼんやりとしていた
学校になんて戻れるわけがない。
まだ中学生の私を引き取る引き取らないで争う親戚。
遺産があればいいが逆に借金があったようだ。
そりゃあ誰だって引き取りたくない
夜になり家にあったミルの形見である首輪だけをもって私は家からでた。
消えてしまいたい。
この世にいても良いことなんてなにもない。
死んでしまおう。
駅のホームに行き飛び降りるのもありだ。
どこか高いビルでもいいかもしれない。
車に引かれるのもいいかも。
道路に灯った明かりが車が後ろから来たことを告げる。
運転手には悪いけどもう疲れたんだ私。
次はもっと楽しい人生を
歩みたい。
道路を飛び出した私を光が包み込む。
ミルにまた会いたいなぁ。
ガチャ
「おや、お嬢さん。お客さんですかい」
そんなのんびりした声が聞こえて閉じていた目を開けた。
前には銀色の車が止まっている。
私のギリギリのところで
灰色ではなく光輝く銀色の車に目を奪われた。
「まぁまぁそんなとこで立ってないでどうぞお乗りください」
呑気な声に流されついつい乗ってしまった。
車のなかは革でできているのかツルツルしている
明らかに高級車だ。初めて乗った。
それにしてもこんな高級車に引かれようとしていたのかと思うと申し訳ない。
運転手は40代くらいのおじさんだった。
ミラー越しに私を見ながらのんびりした口調で問うてきた。
「お嬢さん行き先はどうしますんかい。」
そんなこと言われてもお金は持ってきていないし流されて乗っただけ。
どうすればいいかわからなくて居心地が悪い。
「そうですかいそうですかい。それでは発車いたしましょか」
なにも私は言っていないのに突然発車する車。
慌てて止めた。
「ま、待ってください!私お金なんて持ってないしそれに!行き先つげていませんよね?!」
初めてこんなに大きな声を出したかもしれない。
私は座席をたち運転席と助手席の間に顔を出す。
こちらをミラー越しにキョトンとした顔をする運転手。
「おやおや、危ないですなぁ。ちゃんとシートベルトをしないと死にますよ。」
そう言われて確かにと思いシートベルトをする。
っていやいや、それどころではない。
つい流されてしまったがいまどこに向かっているのか?
「どこに向かっているんですか」
深呼吸をしてからできるだけ落ち着いた声で質問する。
「あなたが心から行きたいと思っている場所ですわなぁ」
「私が……?」
もしや天国にでも連れていってくれるのかと思いつつなんだかもうどうでもいい気がしてきた。
このままあの殺伐とした環境から出れる場所なんだったらどこへでもいい気がして。
「私お金持ってませんよ」
「そうですかいな。それならあなたが一番大切だと思ってるもんでいいですわ」
……大切なもの。
たまたま持ってきたミルの首輪でもいいのだろうか。
でもこんな古いものでお金の代わりになるとは到底思えない。
「何でもいいですよ。それが安全な道標になるしなぁ」
手放すのが惜しいがこれしか持ち合わせがないので仕方がなくそれを運転手に渡した。
「ほぉこれはこれは……ほんとに最新機能は楽だなぁ」
渡した首輪を見ながらそう言う運転手を見ているとカーナビに首輪を近づけた。
「これで迷わず行けるとは。楽だなぁ」
のんびりした声で言うものだから次の瞬間に起こったことが把握できなかった。
首輪が一瞬にして消えたのだ。
そしてカーナビが突然光だし目的地を表し出す。
何が起こったのかわからなかった。
首輪がどこに消えたのかとかいろいろ意味不明すぎて混乱していた。
「……今のなんですか?」
「今のですかい?最新機能のナビですわい。迷わず行けるとは楽ですなぁ」
何度も同じことを繰り返し言っているとかツッコミたいけど運転手のペース流されてこういうものなのかと思ってしまう。
なんだか疲れてしまった。
はぁと目を瞑り車の振動を感じる。
「そうだい。シャインの新曲が出たんだったなぁ」
独り言を言った後車内に流れ出した曲。
女の人の声だった。とっても澄んでいてなにか外国語のようだけど聴いていると心が穏やかになる。
不思議と何をいっているか段々わかり始めてきた。
いつもあなたとそばにいたけど
ずっと一緒にいられないとわかっていたけど
突然私は先に行ってしまった
あなたのことが心配で、あなたの声が聞きたくて
あなたに抱き締めてもらいたくて
もう会うことはないのでしょう
でもいつか会うことができたら
今度は離れない
どうか忘れないで私のことを
いつかあなたを迎えに行ける時まで
この曲を聴いていた私はいつの間にか泣いていた。
涙が止めどなく流れてなぜかミルが思い浮かんで。
一番あそこに心残りなのはミルのことだった。
ずっと頭から離れなくて、もういないのはわかっていたけれどもしかしたらって何度も訪れて。
ミル。
もう一度会いたい。
今度は絶対に助けるから。
今度は絶対に守るから。
会いたい。
「着きましたよぉ。」
運転手の声に顔をあげるといつの間にか着いたらしい。
運転席から降りた運転手は後ろに乗っていた私の方のドアを開けた。
「どうぞ」
託されたので降りる。
降りるとまず目についたのは白亜の城だった。
日本にこんなことはない。
ここはどこだ。
運転手を見るとニコニコしながらこちらを見ている。
世界にこんな綺麗な城があったのかとかまず外国にあの時間で行けるわけがないとか混乱する。
「お、きたきた」
ゆっくりと正面の城門が開かれる。
中から出てきたのは白い髪をした男の人だった。
「……どうして君がここに?」
すこし遠くだったのでわからなかったがとても顔が整っていて綺麗な人だった。
どうやら私のことを知っているらしい。
「あぁ、そんなことはどうでもいいな。会いたかった」
ぽけーと男の人を見ている私を突然抱き締めた。
男の人のいい香りと逞しい体がわかって顔が赤くなるのがわかる。
さっきよりなお混乱してパニックになる。
「導きですなぁ。青春ですなぁ。」
そんなのんびりした声が後ろから聞こえ運転手がいるのを忘れていた。
腕から抜け出そうと力をこめるが離さないとでも言うかのように抜け出せない。
「逆の立場になるとは……あぁ、望んでいたんだよこの日を」
男の人はワケわからないことを言うし運転手は呑気だし。
どうすればいいかわからない。
けど、私は気づいていた。
嘘だと気づかない振りをしていただけで。
なんだか懐かしい匂いだとか言っている意味とか雰囲気だとか。
あれだけ望んでいたのだ。
わからないわけがない。
けど説明くらいやっぱりほしくて抱き締められたままだけど運転手に聞く。
「ここは?」
「ここはですなぁ、お嬢さん。先程も言ったように心から行きたいと思っている場所ですわ」
「……ミ、ル?」
「……もう一度その名を呼んでもらえる日が来るなんて」
もう一段階抱き締める力が強くなる。それと一緒に私の心もギュッと締め付けられて
確かにもう一度ミルに会いたいと思っていた。
けどまさか会えるなんて。
消えたいと思っていた。
死にたいと思っていた。
けどけど……
夢なんじゃないかって思う。
ミルが人間になってて、私の知らない世界にいて、私を抱き締めていて
そのうちまた現実に戻るんじゃないかって怖くてたまらない。
でももしこれが夢だとしてもいまだけはこの幸せを噛み締めたいと思った。
落ち着いた私はミルに離してもらい運転手さんに礼を言った。
すると運転手はあののんびりした声で
「いえいえこちらこそごちそうさんですわ。お嬢さんこそお幸せになぁ、よい導きがあらんことを」
ニコニコ笑って窓から手を降り、
「まぁこれからも異世界タクシーご贔屓に。ほんならなぁ」
と言ってあの銀色の車で去っていった。
…………ちょっと待ってよ!運転手さん!!!
異世界ってどうゆうことー?!!
固まった私はそれからなんやかんや城に連れ込まれいろいろあってミルといつの間にか結婚してた。
私の人生は始まったばかりのようだ。
「またのご利用お待ちしております」
どこかでそんな声が聞こえた気がした。
後日談とか続きはあるかもしれないしないかも。