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幕間12 チーム・サヴォイア家

「ちょっと、ハルトくん」

「やめておけルイーザ。こうなったら男は聞かないよ」

「え?え?」

 レーゲンハルトが先行するのをルイーザが止めようとしたので遮った。今のレーゲンハルトの雰囲気は大渓谷でわたしがボロ負けした時のオルダーニと似ている。

 何を言っても止まらんだろう。

「では、私たちが道を開きましょうぞ」

 事情を察したオルダーニが話をまとめる。

「陛下は竜の足止めを、私と姫様は左右の敵を倒した後合流します。姫様、初めての敵です。油断なさらないように」

「はっ、はい」

「ルイーザ、無理に倒そうとするな」

「でも、わたくしだって王家の一員ですのよ?」

「だからだよ。王家の一員だったら生き残る事を最優先にするんだ。強くなりたいんだったらまずは生き残れ」

 オルダーニが意味ありげな視線を送ってくる。

 くすぐったい。

「は、はい。わかりました、姉様。……ドゥエスタ・ディ・クッチーナッ!!」

「うむ」

 わたしは槍戦斧(ハルバート)を振り上げた。

「スパーダ・ディ・ヴルカニス」

 わたしの魔力が槍戦斧(ハルバート)に伝わり燃え上がる。まだ少し竜血(りゅうけつ)の影響があるようだが、ほぼ満タンまで魔力が回復しているから何の問題も無い。

「行くぞ」

「ギャオオオオオオオオオオッ!」

 翼を広げて飛び上がる。先行するレーゲンハルト追い抜いて死竜に肉薄した。

「フェブレ・ラッジョ」

 馬鹿正直に噛み付こうとした死竜の顔面に熱線を食らわせて怯ませる。顔を背けてがら空きになった首にスパーダ・ディ・ヴルカニスを叩き込むとあっさり首が落ちる。

「何の改良もしていないのか?これじゃあ1分も持たないぞ?」

 距離を取るわたしに向かって尻尾が向かってくる。

「っ!そういや関係ないんだったな」

 頭を落とされたところで死竜は止まらない。

 しかしだから何だというのだ。

「わたしを誰だと思っているっ!!!」

 斜め下から襲ってきた尻尾を縦に割る。さらにその尻尾の周囲をらせん状に回って輪切りにする。

「ラーヴァ・フューメ」

 スパーダ・ディ・ヴルカニスを解除して、尻尾を丸焼きにする。

「ふんっ!」

 さらに胴体を輪切りにしようとスパーダ・ディ・ヴルカニスを再展開して突撃したところで不可思議な現象が。

「ギャオオオオッ!!」

「何っ?」

 斬りおとしたはずの頭が復活している。

 さらに妙な魔力の流れを感知して視線を巡らせれば尻尾まで回復を始めていた。そしてその尻尾に伸びる魔力の源は……。

「あれか……」

 左右に現れた不思議な生物。その生物の手から伸びた半透明の糸が死竜の尻尾に伸びて縫合するように動いている。

 その糸を断ち切ろうとスパーダ・ディ・ヴルカニスを叩き付けたが、その時にはもう尻尾は回復してしまったようで、何の抵抗も無く虚空に消えた。

「オルダーニッ、ルイーザ距離をとれっ!!

「「っ!!」」

 2人が動くのを確認して手を天井に突き上げる。

「(あくまで探り。全力で打たない方がいいな)エルツィオーネ・ヴルカーノ」

 死竜と謎の生物に対して炎の雨を降らす。死竜のほうは的が大きいこともあって問題なく命中した。

 しかし、不思議な生物……もう魔物でいいだろう。こっちはそう簡単にはいかなかった。

 身体の周囲にあの異国の白い姫のような魔力障壁を展開させてこちらの魔法を防いでいる。それどころか……。

「魔力を……吸収している?」

 こちらの炎ははじかれる事も、ブリューナクのように無効化されることも無く魔物中に取り込まれている。さらにさっき見た半透明の糸が死竜のほうに向かい、燃えた部分を回復させてしまった。

(死体を回復って……、もはや意味がわからんな)

 わたしは飛ぶのを止めて床に下りた。そこにオルダーニとルイーザも集まってくる。

「そうだ。レーゲンハルト……」

 奴の姿を探すと、わたしたちが戦っているうちに前線を抜けたようで、死竜の後方にその姿があった。

「全く無茶な……。まあいい、今は目の前の敵に集中するか」

「振り出しに戻ってしまいましたな」

「こっちの攻撃がぜんぜん効きませんの……」

 敵を警戒しつつも作戦会議だ。

「攻撃が効かない?」

「なんか防御に徹しているようでして……」

 ルイーザが困ったような顔をしている。おそらく最初は警戒して敵の出方を窺っていたのだろう。しかし動きがないので攻撃してみたが、ほとんど効果がなかったというところか。

「私の方も似たようなものですな。多少傷は負わせましたが、決定打にはなっておりません」

 オルダーニにしては珍しく手際が悪い。この敵とは初見だからか。

「こちらは入り口に居たのと大して印象は変わらない。攻撃は聞いているようだが、あの魔物どもに瞬時に回復されているようだな」

「となれば……」

「ああ、左右の魔物を先に倒してしまうべきだろう。ただその間中央の死竜を抑えておく必要がある。……役割交代だ。オルダーニとルイーザは死竜を頼む。わたしが左右を叩く」

「はいっ!」

「御心のままに」

 早く倒さねば。そうそう簡単にレーゲンハルトが死ぬとは思えんが、頭に血の上った奴を放っておけん。

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