表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/37

幕間9 白の竜

 白い暴風雨。

 ついで黒い雨。

 私が認識できたのはそんな感じでしょうか。

 竜血(りゅうけつ)の影響下にありながらエルフリーデ様の圧倒的な魔力が場を支配しています。

「あれが真祖……」

 あの白銀の鱗から察するにエルフリーデ様はシルバードラゴンの真祖。故に攻撃力には秀でていないはずです。

 おそらく盾で殴っているようなものなのでしょうが、彼女が動くたびに魔物が細切れになり、黒い雨となって降り注ぎます。

 我々が歯が立たなかった魔物をものの数分で片づけてしまったエルフリーデ様は、竜の姿のまま我々に魔力を送ります。

「これは……」

「傷が癒えていく……」

 シルバードラゴンは防御と癒しに秀でていると聞きます。しかしこの回復力は異常です。

「ロリエルッ!無事っ!?」

「ええ……」

 最初に腕を折られた親衛隊も不思議そうな顔で折られた箇所を撫でて確認しています。

 他の隊員たちも各々負傷箇所を確認して安堵の声を上げているようです。

 いつの間にか頭上の魔力が消えています。しばらく見上げていると竜人状態に戻ったエルフリーデ様が瞳を閉じたまま私の前に降りてきました。

「っ!エルフリーデ様っ?」

 そのまま力なく倒れていらっしゃいましたので、膝を折り胸で受け止めます。

「つ、つかれたぁ~」

 だらしなくほにゃっとした顔で呟きました。そこに居るのは最強と謳われる竜ではなく、年齢通りの女の子。失礼いたしました、姫様のようです。

「ふふふっ、お疲れ様でした。我々の傷を癒していただきありがとうございます」

「ん~。竜になったら、うまくいくのに~」

「はい?」

 何かもごもご言っていましたが疲れているのか、再び私の胸に顔をうずめました。角が少し食い込んで痛いのですが、彼女の助力が無ければ我々は全滅していたでしょう。

 甘んじて受けます。

 あ、あの。断じて痛みが気持ちいいとかそういうのはないんですよ。

 ごほん、話が逸れましたね。魔物を倒したことで緊張が少し解けてしまったのでしょう。

 失礼かとは思いましたが労いをこめて後ろエルフリーデ様の後ろ頭を撫でました。気持ち様さそうな声が胸に響いてくるのでそのまましばらく撫で続けます。

「んっ!行かなくちゃ」

 エルフリーデ様が唐突に顔をあげました。

「もう、よろしいのですか?」

「うん、早くハルくんに会いたいし」

 そうでした。街中は未だ戦闘の最中です。

「そうですか……。そうですね。私も早くルイーザ様にお会いしとうございます」

 心配でもあり、兵を立派に指揮する姫様を見たいという期待もあり。

「同じだね~」

「はい」

 エルフリーデ様の手をとって立ち上がります。

「マリア様、全ての溶解液の放流、完了いたしました」

 タイミングよく親衛隊から声がかかります。比較的水深の浅いところがピンクから紫に変わっています。

「ご苦労。作戦の完了を確認。総員、警戒しつつ撤収。竜血(りゅうけつ)の無効化を確認しながらヴァルチェスカ城へ帰投します」

「「「「はっ!」」」」

「マリアさん……?」

 エルフリーデ様が不思議そうな顔で見上げておられます。言葉が分からなかったのでしょう。

「それではエルフリーデ様、レーゲンハルト様のところへ帰りましょう」

「うんっ!!」

 白銀の翼を広げて嬉しそうに滝壺へ降下していくエルフリーデ様を先頭に、私と親衛隊は姫様の元へ飛び立ちました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ