第二章 1話〜始まりの印〜
俺はあの工場の硬いコンクリートではなく
柔らかい草の感触のある上で目を覚ました
「いって〜・・・・」
どうやら気絶していたらしい、俺は頭をなでた
何処でぶつけたのか頭の上にコブができている
「ん〜・・・・・ここは・・・どこ?」
俺は立ち上がってあたりを見渡した
1kmくらいあるんじゃないかと思うほど広い草原と
犬のような獣が三匹舌を出しながらこちらに向かっているだけだった
「ん?・・・犬?」
俺は見間違いかと思い目をこすってもう一度見た
しかし見間違いではなく三匹の獣が凄いスピードでこちらに向かってくる
「な、何だ?」
俺は何がなんだか分からないが体が危険だと感じ取ったのか
獣が来る方向と反対に走った
5分程全力で走ったのだが
俺は三匹の獣に囲まれてしまった
獣の一匹が高く飛んできて鋭い爪を立てて俺目掛けて振りかざした
(あぁ・・・こんどこそやられる)
そう思った時また右手の龍の模様が赤く光った
しかし今度は体が勝手に動いたわけではなく
獣達の動きがスローモーションで見えるようになった
(な・・・遅くなった・・・)
(これなら!)
俺は攻撃してきた獣の腹をアッパーで思いっきり叩き
残りの二匹に回し蹴りとかかと落としをくらわせた
獣達の体は吹き飛んだ獣にしてみれば一瞬の出来事だっただろう
一匹は気絶したが残りの二匹は体勢を持ち直し同時に攻撃してきた
二匹はもの凄い速さで鋭い爪を立て振りかかってきた
どうせまたスローモーションで見えると俺は思っていた
しかし二匹のスピードは変わらなかった
「え!?ちょ!」
俺は反射的に目を閉じてしまった
(あぁ・・・終わった・・・)
俺はあきらめてそう思った時
カキィィィィン!!!
鉄と鉄をぶつけるような音が当たり一面に広がった
俺は恐る恐る目を開けた
そこには黒いコートを着た銀色で長髪の男が剣を持って
二匹の獣の攻撃を防いでいた
「大丈夫か?少年」
そう言って銀髪の男は二匹の攻撃を簡単に弾き返した
「あ、ああ?」
俺は何がなんだか分からなかった
「では、少し下がっていろ」
男はそう言い二匹の獣に向かって剣を突き出した
一匹は避けたがもう一匹の足に命中した
攻撃を受けた獣はその場に倒れこんでしまった
避けた一匹が男に向かって噛み付こうと飛び掛ってきた
男はそれを横に避け獣の真横から剣を下から上へと振り上げて
獣の体を真っ二つにした
二つになった獣の体は鈍い音を出して草の上に落ちた
そんな中俺は呆然としていた
足に攻撃を受けた獣がいつの間にかその場から消えていた
「う、上だ!」
俺はとっさにそう叫んだ
男は計算していたかのように上を向いて
目にも止まらない速さで獣を串刺しにした
剣から獣を振り払って俺に近づいてきた
「危ないところだったな、少年」
「あ、ありがとう・・・」
「剣も持たずにこんなところにいるなんて自殺行為だぞ?」
「あ・・・えっと・・・」
「あぁ、私か?」
「私はクレス=レイフォンド、クレスと呼んでくれ」
「あ、俺は衛藤 明です」
「エトウ?・・・なんだって?」
「明、明でいいです」
「ではアキラ何だってこんな所にいたんだ?」
「それは・・・・何かに吸い込まれて
気が付いたらここに・・・・・」
「ふむ・・・転移魔法か何かだろうな」
(魔法?・・・まだ俺は夢を見ているのか?)
「あの魔法って・・・・?」
「ん?魔法も知らんのか?どこの田舎者だ?」
クレスはそう笑いながら言った
「あ・・いえ実は・・・・・」
俺は今までの経緯をクレスに話した
「ふむ・・・・」
クレスは何やら考え込んでいた
「君の言うことは信じる、ただ君の言う怪物は聞いたことが無いな」
「そうですか・・・なぜ俺の話を信じるのですか?」
「ん?あぁ、かつてこの世界アーヴァウスは平和だった
しかしどこからきたのかたくさんの怪物がやってきて町や村を襲った
人々が剣や魔法で抵抗したがその抵抗は長くは続かなかった
沢山の人が死に人類は絶滅の危機に迫った
そんな時一人の男がやって来たその男は右手に龍の紋章を宿し
様々な魔法や剣技を身につけていた
その男はどうやら異世界から来たらしい
その男の活躍によりでアーヴァウスは平和を取り戻した」
クレスは長々と語った
「その話があるから俺の話を信じるのですか?」
「いや、それだけではない」
「その右手と左手にある紋章だよ」
「・・・左手?」
俺は左手を見てみた
「な・・・・」
左手にはいつの間にか青い龍が描かれていた
しかも右手の方は黒ではなく赤い龍へと変わっていた
「力と魔法・・・・さらに龍の紋章とくれば信じもするさ」
「・・・・一つ聞いていいですか?」
「なんだね?」
「紋章とは一体・・・・・」
「紋章は・・・そうだな言ってみれば動物を象った印みたいなものだよ」
「印・・・ですか?」
「そうだ、印が赤ければ力 青ければ魔法だ」
「防御は?」
「緑だね」
「クレス、あなたには何の紋章が?」
「私は隼の紋章だ」
クレスは右手に着けていたグローブを取って手の甲を俺に見せた
そこには赤い隼の印が描いてあった
「紋章には印されてある動物によって身体能力が上がる効果がある」
「私は隼だから素早い攻撃も回避もできるんだよ」
「俺のは何の効果が?」
「それは私にもわからんよ」
「そうですか・・・・・」
「まぁこんなところで話しているのも何だから
ひとまず近くの村へ行こうか」
「そうですね」
そう言って俺とクレスは村へと向かった
「おっと、忘れていた」
クレスはそう言い串刺しにした獣の方へ引き返した
腰に持っていた短剣を使って倒れこんだ獣の毛皮を剥ぎ取って
持っていた袋に入れたそして獣の心臓を剣で突き刺した
すると獣はしだいに跡形も無く風化していった
「あの・・・今のは?」
「あぁこの怪物<ハングリーハウンド>は心臓を刺さないと再生してしまうんだよ」
そう言い今度は二つになった怪物の所へ行き
毛皮を剥ぎ取って心臓を刺した
「では、行こうか」
「あ、はい」
そう言って村へと向かった
「・・・何か忘れているような」
「何をだね?」
「ん〜・・・」
俺は手を組んで考えた
その時いつの間にか目の前に一匹のハングリーハウンドがいた
「あ、そうだ!もう一匹いたんだった」
「ふむ・・・では今度はアキラがやってみてくれ」
そう言ってクレスは自分の剣を俺に渡した
「え、ええぇ〜・・・・」
俺はどうすれば良いか分からずそのまま戸惑っていた
怪物はそんな事はお構いなしに飛び掛ってきた
その時また右手の龍の紋章が光った
俺は少し横に移動し怪物の前に剣の刃を向けて
瞬間的に前へとダッシュした
そして怪物は頭の先から尻尾まで横に真っ二つになった
「おぉ〜、凄いな初めてとは思えないよ」
クレスはすぐに怪物の毛皮を剥ぎ取ってそう言った
俺は毛皮を取り終わるのを見て心臓に突き刺した
「今度こそ村へ行こうか」
「何ていう村です?」
「インガ村だ」
そう言って村へと歩き出した
今回は以前に比べて大分長くなりましたね^^
これぐらいの長さで良いかなど
ぜひ感想を書いてやってください^^