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最後のシメは自己中王子?

場所は、城から城下町へと移る。人が賑わう大通りからは離れ、いろんな意味で賑わう場所がある。道を歩くのは綺麗に着飾った女や、その女と腕を組む男。酒と女の臭いが漂う、謂わば色街のような場所。


そこに一軒の店がある。綺麗どこの女に酌をしてもらい酒を飲み、時にはその女と夜を共にする店に、五人の男の集団が来店した。


その中で一際目立つ容姿をもつ男がいる。綺麗な金の短髪に、右は黄緑、左は青の切れ長のオッドアイ。よく整った顔は、店の女たちを一瞬で虜にする。


一人の女が、その集団に近付いた。



「いらっしゃいませ、クリス・アルカナ様」



男ーークリス・アルカナは女の案内に従い、一室の部屋へと案内された。部屋は店の半分を占める広さがあり、豪華な装飾のされた家具が置かれている。


この男専用に作られた部屋を見て、クリスと共に来店した男達は感嘆の声を漏らす。クリス本人は慣れた様子で柔らかなソファに腰を下ろした。男達も後に続いてソファに座る。


それと同時に、部屋に綺麗なドレスに身を包んだ女達が入ってきて男達の隣に座る。次々と入る高級な酒に、男達は騒ぎだした。



「プハッ!しっかし、流石は王子!扱いが全然違いますね」



一人の男がニヤニヤ赤くなった顔でクリスに言う。クリスは表情一つ変えることなく、酒を飲み続けている。


男の言葉に、クリスの隣に座っていた黒髪の女が驚いたような表情をした。



「え?クリス様は王子なんですか?」


「なんだ?知らなかったのか?」



クリスがそう言えば、女は眉尻を下げた。



「すみません、私最近このお店に来たばっかりで。オーナーにも詳しく聞かされずここに・・・・」



おどおどする女に、クリスはクスリッと笑って見せた。見ればかなりの上玉だ、優しくしない手はない。



「気にするな。それによく言われるしな」



王子であるクリスがこんな店に来ると、必ずと言っていいほど言われた台詞。そして続けてこう言われるのだ。



「でも・・・こんな所に来ていいんですか?」


「あぁ、いいんだよ」



女の肩に腕を回し、体を引き寄せる。そして、蕩けるような笑みを浮かべた。



「なんたって、俺はこの国の王子。何をやったって誰も文句を言うことはできない。俺は特別な人間なんだよ」



クリスの言葉に、女は可笑しそうにクスッと笑った。



「あんた馬鹿じゃない?」


「・・・は?」



ニコニコと笑ったまま、女はとんでもないことを口にした。クリスは勿論の事、クリスの連れてきた男達も酒を飲む手を止める。



「今、なんて、言った?」



言われた事を理解できず、聞き返すクリスに女はめんどくさそうに頭をかいた。



「あんた馬鹿じゃない?って言ったのよ。しかしもう少し遊んでやろうと思ったけど駄目だわ。鳥肌が止まんない」



肩を抱クリスの手を叩き落として女は両腕をさすった。確かに、腕に鳥肌がたっている。

クリスは呆気にとられていたが、やがて正気に戻って苛立ちを露にし立ち上がった。



「お前!誰に向かって口を聞いて・・・」


「あんたに向かってに決まってるでしょ?クリス・アルカナ」



ピシッと指を指す女に、クリスの怒りは上昇する。



「嘗めた口を・・・!」


「私はいいんだよ。なんたって、あんたのお父様に許可を頂いてるからね」


「なに?」



突然出てきた父親の名に、自然とクリスは眉間にシワがよった。



「お前、何者だ?」



女はニヤリッと笑って見せると、指をパチンッと鳴らした。

女が着ていたドレスは光に包まれ、やがて光がおさまると袖のないローブの姿に早変わりする。



「私の名前はルナ。あんたのお父様に雇われた教育係よ。よろしくね?」


「教育係?」



女ーールナはソファから立ち上がり、再びパチンッと指を鳴らす。


すると、男達の隣に座っていた女達がカタカタと震えだし、一人がクラリッと男の膝の上に倒れた。男が何事かと女の顔を見れば、つるつるとした人形にみたいになる。いや、女自体が人形に変わったのだ。



「なっ!?」


「人形劇は楽しんで頂けたかな?」



女の言葉が合図のように、次々と女達は人形へと変わっていく。再び呆気にとられる一同を見て、女は悪戯が成功した子供のように笑う。



「いやー、城で挨拶しようと思ったらあんたいないから探しちゃったよ。まぁ、人探しは得意分野だから見つけるのに苦はなかったけどね。

それから店のオーナーに交渉して人形で接待してみたんだけど・・・いかがかな?」


「魔術師・・・」



連れの男の言葉に、否定することなく笑うルナ。クリスはそんなルナを睨み付けた。



「ふざけた真似を・・・おい!」



クリスが男達に顔を向け呼び掛ける。男達は最初戸惑いを見せたが、立ち上がって懐から短剣を取り出す。だが、まだ戸惑ってるようだ。


今度はクリスがニヤッと笑う。



「安心しろ。

・・・

俺の前で攻撃魔法など使えん」



アルカナ王国は、魔術師団に所属しない、魔法を使える一般人には独自の法律が存在する。その中の1つに、人を傷付ける魔法、攻撃魔法を町中で使えないというものがある。例えどんな理由があろうと、使った時点で処罰の対象になるというものだ。

これは魔力のない者が多いアルカナ王国では、安全のためになくてはならない法律である。


その法律を決めた王族であるクリスの前で、堂々と攻撃魔法を使える魔術師などいない。

男達もクリスの言葉にあからさまに安堵し、短剣をルナに向かって構えた。



「クリス様!この女、好きにしていいですか?」


「構わん」



厭らしい笑みを浮かべた男に、クリスは許可を出す。男達の笑みは、ますます深くなった。


その一方で、ルナは怯えることなく無表情の顔を男達に向けた。金に煌めく瞳に、一瞬怯むも相手は女一人。恐れることなどない。


男達は襲いかかろうと、足を進めた。ルナは微動だにすることなく、その場に立っていた。


シュンッと風を斬る音が聞こえた後、男達は違和感に動きを止めた。あともうちょっとでルナに手が届く所で、ズボンがストンッと床に落ちた。


よく見れば、ズボンは斜めに斬られたような跡がある。ズボンから視線を上げると、視線に写ったルナの右手には、いつの間にか銀色のペーパーナイフが握られていた。



鎌鼬(かまいたち)って知ってる?」



唐突な質問。

混乱ばかりする頭が無意識にルナの言葉に耳を傾けていた。



「空気の中に真空の部分が出来た時、そこに触れるとスパッて切れるのよ。私幼い頃、それを知らなくてねー・・・単純だけど、誰かが凄いスピードで切ってると思ってたのよ」



話の流れがまったく見えない。それでも男達は動くことが出来なかった。

その場に流れる空気はとても嫌なものだが、ルナは普通のトーンで話続ける。



「それで、もしかしたら私にも出来るんじゃないかと思って、毎日練習したの。そうしたらね?」



シュンッと再び風を斬る音。全員の目の前にあった机が、真っ二つに斬れて酒やつまみなどを落とした。


つうっと男達の額から汗が流れ落ちた。まさか、そんな筈がないと、ルナの顔を見る。ルナはただ、ニコニコしながらペーパーナイフをクルリと回した。



「今じゃあ、こんなナイフでも綺麗に物が斬れるようになったわ」



男達は逃げ出した。

我先にと扉から出ていき、結局残ったのはルナとクリスの二人だけ。


ルナはソファに座り、足元に転がっていた酒のビンを拾い上げる。



「この国では酒は18からでしょ?あんた、まだ17じゃない」



固まり、動きを止めているクリスに、ルナは顔を向けた。



「あ、ちなみに、あれは魔力なんて微塵も使ってないから。なんなら、ロイスの前で同じことしてあげようか?あいつ、魔力の流れがよめるし」



もうクリスはどう言っていいのか分からなかった。ただ一つ、小さな声で呟いた。



「お前は・・・何者なんだ?」



少し間をおいて、ルナは妖艶な笑みを浮かべた。



「言ったでしょ?あんたの教育係だって」



それが後に、ルナと王族3兄妹の戦いの幕開けだったと、ある者は語った。



最後の王子が登場。


名前→クリス・アルカナ

特徴→自己中、ナルシスト気味


自己中というより、ナルシストに近いんじゃないか?これ・・・・

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