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無双天魔王は学園教師  作者: 星河
一章~最強の男~
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第八話

 神也が三笠学園に就職してから半年が経った。

 何事もなく――という訳にはいかず、大事件が起きた。

 三笠学園が管理権を有するゲートで生徒たちの演習が行われた。

 生徒が演習で使うゲートであるため、低級であり、教師や指導を学園から依頼されるハンターも来る。

 だから心配いらない――そう思っていたのは学園の全員だ。

 しかし、平穏な時など神也には存在しなかった。

 持ち受け授業がない時は職員室で事務作業をする神也はいつも通りその日も事務作業をしていた。

 そして突然神也に嫌な予感というものが訪れる。

 「嫌な予感がする」とF級ハンターに言われたところで鼻で笑われるのがオチだ。

 だが、神也が言うとそれは『予感』ではなく『確信』に近い何かだと神也の実力を知る者は言うだろう。

 そうは言っても周囲数千キロを気によって索敵、把握出来る神也だが、特に何も起こっていない。

 否、起ってはいるが、至極些細な事件やハンターの喧嘩などだ。つまり神也には関係のない事。

 嫌な予感は拭えず、念のために三笠に伝えた。

 三笠は神也の実力を知る一人である。

 故に神也の予感を信じて警戒をする事を約束した。

 しかしそこで神也がある事を思い出す。

 演習に出ている生徒たちだ。

 ゲート内で何か起きても外からは感知が出来ない。

 魔力の濃度などは分かるが、仮にゲート内で犯罪行為が行われていても外からは分からない。

 それをよく知っている三笠は神也の言葉にすぐ反応し、演習を担当している担当教師に電話を掛ける。

 しかし、何コールしても出ない。それも派遣している三名の教師だけでなく、雇った指導ハンターも。

 様子を見ていた神也は電話が繋がらず次々と電話を掛ける慌てた様子の三笠を見て、すぐに理事長室の窓から飛び出していった。

 飛空術で今回の演習先のゲートであるE級ゲートにまっすぐ飛んでいく。

 学園から演習先まではおよそ120km。

 僅か二分で到着する。

 ゲート前には本来誰も居ないはず。

 にも拘らずガラの悪い反社会的な男たちがゲート前を陣取っていた。

 ゲート前の輩の前に着地すると、神也に気づいた輩が身構える。

 「ここは俺が予約してんだよ。失せな」

 身構えながらも余裕を見せている男は下卑た笑みで神也に言う。

 「生徒たちはどうした?」

 神也の言葉に男たちは一斉に笑い出す。

 「お前学園教師だったのか! 悪いな、生徒たちはゲート内で監禁している。良い女も結構いるしなぁ」

 神也は次第に沸々と怒りが湧いていた。

 しかし、今は生徒の安全の為に我慢しなければならない。ここで本気を出してしまったらゲートが壊れる危険性もある。

 「全員無事か?」

 神也の声質は低く、重厚で、常人には身震いが走るような怒気が含まれていた。

 「当たり前だろ。俺たちはビジネスでやってんだ」

 悪びれもせずに笑い続ける男たちに最後の質問をする。

 「引率教師と指導ハンターは?」

 神也の言葉に眉をピクリと一瞬だけ動かした男だが、先ほどまでの下卑た笑みに戻った。

 「俺たちの邪魔をするから殺した」

 神也は分かっていた。これは【嘘】だと。

 武林世界での長年の経験で嘘を見抜いたり表情から感情を読んだりすることが得意だ。

 そしてその経験から男たちの言葉は嘘だと判断した。

 「もういい。死ね」

 突然の言葉に一瞬固まる男たちだったが、すぐに爆笑に変わる。

 「おい、先生さんよ! あんたに大した力がない事は知ってるんだよ。まぁ生徒にいる良い女はお前にも回してやるから――」

 男の一人が神也の右肩に手を置き、笑いながら言うが、その男の表情が次第に変わっていく。

 神也の肩に置いたはずの手が綺麗さっぱり『消えて』いる。鋭利な刃物で斬られたかのように。

 そして遅れて手首から血が噴き出す。

 「ギャァァァ!」

 何が起きたのか理解できない男たちは身構えると同時に右手が無くなった男に回復魔法をかけている。

 「汚い手で俺に触れるな。彼我の差も理解できないゴミが」

 神也は完全にブチ切れていた。

 神也を雑魚だと思い込んでいるのには理由がある。

 実力を極めている神也は自身が発するオーラや気を完全に鎮めることが出来る。

 つまり、優れた感知系の魔法やスキルでも神也の実力は一般人程度としか思えないのだ。

 だがそれは一定以上の実力を持つ者には通じない。

 その一定以上の実力者というのはこの世界には存在しない事は誰も知る由もないのだが。

 


 突然雑魚だと思い込んでいた学園教師が人間とは思えないオーラを噴出させている。

 【犯罪組織・外郷戦線】は日本で重要指名手配されている犯罪組織。

 外郷戦線は海外の勢力と共謀し、日本で犯罪を行っているとされている。

 暗殺、強盗、人身売買、営利誘拐、婦女暴行など枚挙に暇がない。

 尊あ外郷戦線幹部の義弟、襖武ふすまたけしは恐怖のあまり小便を漏らしていた。

 人外のオーラを浴び、その瞬間に気づけば一緒にいた他の六人が一瞬で殺されたからだ。

 目の前の男は一歩も動いていないのに、全員が首を鋭利なもので切断されている。

 「お、俺の兄貴は――」

 『俺の兄貴は幹部だ』とでも言おうとしたのだろうが、最後まで言えることなく他の者と同様無慈悲なまでにあっさりと首を切断された。

 神也は地球に帰還してから初めてのマジ切れだった。

 



 ゲート前を陣取っていた輩を殲滅し、ゲート内に入った神也。

 ゲートの入退場を監視している先ほどの連中の一員らしき男が数名、侵入者の報告を入れようとしていた。

 神也からその男たちまではおよそ二百メートル。

 普通は間に合わない。『普通は』

 コンマ一秒も掛からずに距離を詰め、まさに今報告をしようとしていた男たちは呆気にとられる。

 「死ね」

 一言、神也の呟きが男たちが聞く最後の言葉となった。

 常人には何が起きたのか理解が出来ぬうちに死んでいく。

 それが例えS級であっても神也の前では同じである。

 気をゲート内すべてに広げ、状況を確認する。

 モンスターは全て倒されているようで、人間は生徒が四十五名、教師と思われる弱った様子の者が二名、賊が十五名、指導ハンターが三名。

 教師三名のうち二名が重傷なのに、指導ハンターは一切弱った様子はない。

 これから分かることはハンターも賊の一員という事だ。

 何より指導ハンター蛾いる場所は賊たちと同じ場所。

 つまりはそういう事だ。

 ますます憤怒の感情が強くなる神也だったが、全力で戦ってしまったら生徒に危害が及んでしまう。

 そうした理性はまだ残っていた。

 


 飛空術と隠密術を併用し、見つからないように上空から賊を確認する。同時に生徒たちの様子も。

 生徒たちは泣きじゃくる子やこの世の終わりといった表情をしている。

 対して賊は美人の保健教諭や美少女生徒を嘗め回すように見ており、皆が恐怖していた。

 「今助けるよ」

 神也は真っすぐと降下する。

 突然現れた神也に賊だけでなく、生徒たちも驚く。

 「中村先生、怪我をしている先生の治療をお願いします」

 神也は保健教諭の中村に笑顔で言う。

 中村は治癒魔法を高度に扱える魔法職で、A級ハンターだ。

 実戦が怖いという臆病な性格故にハンターとしては活躍していない。

 しかし、子供が好きという事で学園の面接に行き、その場で合格となった。

 中村は神也が入職した翌月に入植した。

 しかし、中村は神也の実力を知らない。

 それどころかこの場の生徒も神也の実力を知らない。

 この演習を受けている生徒は二回生であり、ゲートの実戦を主に行うため、神也との接点がないのだ。

 「何だ? イケメン先生が助けに来たってか?」

 下卑た笑いが辺りに響く。

 その声を発したのは気による感知で感じていた、賊の中では最強の男だった。

 その男は外国人のようだが、日本語をペラペラ話している。

 「学園教師ってのは儲からねぇんだろ? 今からでも遅くねぇ。せいぜい下級ハンターだろうから見習いからになるが、学園より稼げるぞ」

 リーダーらしき外国人が神也を勧誘する。

 その勧誘に生徒だけでなく中村までも恐怖に染まっていた。

 「ん? そういやゲート前を見張ってる奴らとゲートの外を見張ってる奴らは何してんだ?」

 突然現れた男がどこからやって来たのかを思い、見張っている連中を思い出す。

 「そいつらなら全員死んでるよ」

 神也の言葉に男は真顔となる。

 そして無線機を取り出し、見張りを行っているはずの者たちやゲートの外の者たちに連絡を取ろうとする。

 しかし、当然応答はない。

 「ほぉ。お前下級ハンターじゃねぇんだな。まぁ上級であっても関係ねぇ。俺はS級の中でも最上級の実力者だからな。聞いたことあるだろ? 外郷戦線総長ブシドラ・レンファーを」

 男の言葉に神也以外の全員がハッとする。

 ブシドラ・レンファーは世界的に指名手配されている男で、世界各国で犯罪を行っている。

 中でもその国の重要な人物や企業、組織にダメージを与えるような犯罪をよく行っていて、世界中で警戒されている。

 何よりもその実力を恐れられているのだ。

 S級を単騎で二人殺せる実力者として知られていて、日本のS級も一人この男によって殺害されたことがあった。

 そして一説ではブシドラはアメリカ政府の支援を受けて犯罪を行っているという。

 しかし、神也はそんなことどうでも良かった。

 今はただ生徒たちの安全の為に賊を全て殲滅する事しか頭になかった。

 「まぁ良い。部下たちを殺したことは不問に付す。但し、俺の部下になれ。さもなくば強烈な痛みを与えながら殺す」

 ブシドラは真顔のまま神也に提案をする。

 しかし、神也は逆に警告と提案を返す。

 「俺からも最後のチャンスだ。今すぐ生徒たちに土下座して詫びろ。さもなくば死ね」

 神也は無表情だが、怒りが滲み出ている。

 しかし、ブシドラからしたら神也は敵ではないと判断しているため、神也の言葉は『戯言』にしか聞こえないのだ。

 「はぁ。しょうがねぇな。じゃあ俺が自ら殺してやるよ」

 ブシドラが異空間から長剣を抜く。

 アーティファクトによる空間収納だ。

 取り出した長剣は【遺物級】というゲート内で滅多に出現しないランクの物だ。

 「先手を譲ってやるよ」

 ブシドラは自信満々に神也へ先手を譲る。

 しかし、神也にとってブシドラは他と同様雑魚でしかない。

 離れた場所で見ている生徒と中村、中村によって回復した教師二人が心配そうに見つめる。

 「俺に先手を渡したこと、地獄で悔め」

 【無形剣・意気馭剣】

 気による無形剣を幾十、幾百、幾千、幾万と作り上げていく。

 常人やそこそこ程度のハンターでは何が起きているのか分からない。

 【気】を感じ取れないからだ。

 しかし、上級の上級であるブシドラには『見えていた』そして絶望する。

 生まれて初めて感じる『恐怖』がブシドラの心を埋め尽くす。

 そして幾万の無形剣がブシドラに向かって飛ぶ。

 



 突然鳴り響く轟音と砂煙が周囲を包み、やがて収まる。

 生徒と教師に地面の破片などが飛ばないよう、あらかじめ神也が結界を張っていたため、誰も怪我をしてなかった。

 そして一同は驚愕する。

 ブシドラと指導ハンター含む賊すべてが一瞬のうちに死に絶えていたのだ。

 「何が起きたの……」

 ブシドラは全世界に指名手配されている。

 それを知っている神也はわざとブシドラの顔は傷つけないように体のみを無形剣で串刺しにした。

 他の賊も同様に。

 生徒と教師たちはF級だと思っていた教師が起こした目の前の惨状に理解が追い付いていなかった。

 「みんな、とりあえずゲートの出口まで行こう」

 神也はみんなを安心させるために笑顔で言う。

 「助かったんだ……」

 ここで死ぬ、売り飛ばされて家族に二度と会えないと思っていた一同は口々に安心の言葉が出ていた。

 ゲート出口に着き、まだ出ないようにと言いながら神也は三笠に電話をし、ここで起きた事と生徒、教員全員無事であることを告げる。

 三笠は既に協会に連絡済みだったようで、既にここへ向かっているとのことだった。

 更にブシドラ一味が犯人だったという事で、協会だけでなく、警察も向かうことになる為、もうしばらくゲートに待機してほしいと言われ、神也は三笠に言われたことをそのままみんなに伝える。

 腹が減っているであろう生徒たちに虚空収納から出した保存食を渡す。

 生徒は感謝しながら渡された保存食を食べているが、中村が神也の横に立ち、顔を赤らめながら感謝の言葉を神也に告げる。

 一件落着と思われた事件だが、この事件により神也は更なる大きな事件に巻き込まれることになるのだった……。

明日は祝日の為、事前の告知通り明日も投稿します!

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