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無双天魔王は学園教師  作者: 星河
一章~最強の男~
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第七話

 穂浪を弟子に取ってから早二か月が経過していた。

 穂浪は錬丹術を極める為に仕事を辞めて神也の教えを受けている。

 その間の生活費や家族の養育費は師匠である神也が負担している。

 当初は神也の金銭支援を断ったのだが、『師匠の務めだ』と言って半ば強引に承諾させた。

 その甲斐もあり、僅か二か月で穂浪の錬丹術師としての実力は相当なものとなっていた。

 最初の内は簡単な丹藥しか作成出来なかった。

 師匠である神也は錬丹の技術よりもまずは『知識』を叩き込んだ。

 薬剤の効能、成分、組み合わせ。

 すべてを教える事は時間的に不可能だったが、実用的であり、一般人、ハンターによく使われるような、使われるであろう丹の材料や知識を徹底的に教えた。

 そして同時に肉体と精神も鍛えた。

 錬丹術師に肉体の強さは不要――そんな一般的な考えを神也は吹き飛ばした。

 『錬丹術師に限らずすべての職では肉体が基本である。錬丹方法がどんなものだろうと体力がなければ低品質の物しか作れない』

 この言葉を受けて肉体の鍛錬も自主練で行っている。

 そしてある程度の知識が頭に入った段階でいよいよ錬丹の修行に移った。

 ここまでの期間は僅か三週間。

 錬丹の修行はそれまでの三週間とは比べ物にならない程の厳しさだった。

 無丹炉錬成を基本とするように指示され、修行中に行う錬丹は全て無丹炉錬成で行われた。

 三昧真火を使えない穂浪は初期スキルの【火炎術】で行うしかないと考えていたが、そこで異変に気付いた。

 最初の三週間は自身のステータスを見るのを禁じられていたために気づかなかったが、神也からステータスを見るように言われ、見てみると初期スキルが進化していたのだ。

 【火炎術】が【ほむら】に。【凝縮】が【封丹】に。そして【藥材選択】が【藥材選別】に変化していたのだ。

 神也曰く、『スキルは使う事でも進化するだろうが、どんなスキルであろうとも最大限の効果を発揮するのは知識がカギとなる』という事だった。

 錬丹術のスキルを持っていない神也だったが、虚言という訳ではなく、実際に自分が経験した事なのだ。

 錬丹術の勉強を始めた当初、武功による火炎で錬丹していたのだが、『何故火炎が必要で、温度などは関係ないのは何故なのか』と疑問に思い始めた神也は徹底的に研究を行った。

 そこで辿り着いたのは使用する【火の質】だったのだ。

 温度は無関係という訳でもないが、そこまで重要ではない。それよりも大事なのが【質】であり、質が高ければ自然と温度も火の密度も上がる。

 武林世界で尊敬を集めていた錬丹術師は火の密度に着目していて、密度を大事にしている者たちは須らく火の質が一級品。

 そして密度を上げたければ質が重要。

 それに気づいた事で一種の【悟り】を得て三昧真火を獲得したのだ。

 完全な独学で気付きを得てそれからも暇さえあれば錬丹術を研究した。

 結果、知識、気づきが何よりも大事だと感じ、天魔神教の弟子たちにも気づきを与える為に様々な工夫を行った。結果としてその教えは正しく、弟子たちは大幅に成長をする。

 そして穂浪も武林世界の弟子たちと同じようにただ単純に教わるだけでなく、課題を出されて自分で調べ、考え、答えを出す。これを続けていたことで悟りを得てスキルが進化した。

 穂浪は改めて目の前の自分よりも年下の偉大な師匠に感謝をした。

 師匠である神也にはまだまだ程遠いが、世の錬丹術師の中でも十分上澄みと言えるほどに成長していた。

 そして錬丹の修行が始まった。




 当初こそ無丹炉錬成に苦戦し、失敗作や超低品質ばかりだった穂浪だったが、それでも神也についていけば必ず成長すると信じ、修行を続けた。

 神也は弟子に助言など滅多にしない。気づきを自分で得る為に。

 自身で成長を感じられなければそれは師匠や弟子という関係ではなくただの傀儡となり果てる。

 これは神也の持論だ。

 だから神也は穂浪の錬丹をただじっと見ているだけで口出しは一切しない。

 穂浪の錬成した丹を意義深げに観察する。

 そしてその丹を何かの力によって空中で分解し、消す。

 それの繰り返し。

 しかし穂浪もただ黙って錬成するだけではない。

 錬成が終了した後に質問をすることもある。

 質問に関しては基本的に神也はすべて答える。

 但し、錬丹術の核となる質問や自分で気づきを得て欲しい分野の質問に関しては答えず、ヒントだけを与える。

 そうした修行を続けていくうちに少しづつではあるが、成功する丹も出てくる。

 それも低級品ではなく、成功品と言える中位の物が出る。

 そしてそれは時間を経る毎に増えていき、錬成に失敗する事はいつしか無くなっていった。

 







 修行開始から二か月、様々な課題、気づき、鍛錬を経て穂浪はとうとう【最上級】の丹藥を作り上げた。

 そして【上級・上】【上級・中】が大半を占め、【中級】以下の丹藥の錬成など無くなっていた。

 つまり穂浪が丹藥を錬成すれば少なくとも【上級・下】は保障されるという事だ。

 スキルも大幅に進化し、三昧真火の獲得はならなかったものの、ステータスも大幅に増え、魔力に至ってはC級の戦闘職と同等程度まで増えていたのだ。

 そして修了試験と称してランクの更新に行けと指示を受けた穂浪はその日のうちに【ランク再判定試験】を翌日に予約をする。



 五人の試験官、記録員一人が見守る会場に一人再判定試験を受ける穂浪が立っている。

 戦闘職以外のハンターのランク判定はステータス値は重要とはされない。

 実際に見られるのは技術だ。

 もちろんステータス値が高ければ加点される。

 ステータス値測定水晶に深呼吸をして手を置き、魔力を流す。

 一秒足らずで測定結果が水晶の上にウィンドウで表示される。

 【体力:980・魔力:2580・筋力:1200】

 基礎ステータス値が表示されると試験官が驚愕する。

 当然だ。

 生産職の基礎ステータス値の平均は概ね500前後である。

 多い者であっても1000を超える事は稀だ。

 にもかかわらず、F級であるはずの錬丹術師が見せたステータス値は平均を大幅に超えていて、魔法系の戦闘職と言われても納得してしまうような数値を見せた。

 一通り試験官の驚きが過ぎた後、いよいよ実技の披露となった。

 試験官ではない、試験管理員が錬丹術に使用する丹炉を持ってこようとしたが、穂浪はそれを遮る。

 「丹炉は不要です」

 穂浪の言葉に試験官の眉がピクリと動く。

 今回の再判定試験は錬丹術が受ける為、試験官も協会が指定したB級とC級の錬丹術師だ。

 現在日本にはA級の錬丹術師はいない。

 そしてB級やA級であっても試験で無丹炉錬成などしようものなら『生意気』と吐き捨てられるのがオチだ。

 しかし、それは実力がない者という前提である。

 穂浪は既に一流の錬丹術師であり、日本では穂浪以上の錬丹術師と言えば穂浪の師匠である神也だけであろう。

 故に穂浪は純然たる自信を持って試験に臨んでいた。

 「受験者が不要と言っているから丹炉は不要だ。さて、改めて実技の内容だが、好きな丹藥を錬成してくれ。ステータスは問題ない――どころの話ではないが、まぁすべては実技の結果がモノを言う。錬成した丹の品質と錬成に使用した材料を加味して昇級するか、また、昇級の場合はどこまで昇級するかを決めるでは始めて」

 試験官五人の中心にいる国内トップのランクであるB級錬丹術師が偉そうな口調と態度で実技試験の開始を告げる。

 使える藥材、薬草は限られているものの、見た限りでは十分な量と質であった。

 そして一通り確認を終えた穂浪は錬丹を始める。

 華麗な舞と見まがうような動きで藥材、薬草を宙に浮かせ、成分の抽出などを行う。

 そして必要な分の材料調薬が終わったところで凝縮、圧縮を開始。

 十数秒で凝縮と圧縮を終えると、そのまま無丹炉錬成を開始する。

 【焔】から更に進化した【極焔ごくえん】を凝縮圧縮された物に徐々に当てていく。

 そして時を見計らい、徐々に火の温度を上げ、火の中心に丹が来るように動かす。

 最後に炎と共に【封丹】から更に進化した【真圧丹】を発動し、仕上げの圧縮を行う。

 修行時の経験によって分かる『取り出すタイミング』をしっかりと計り、ベストと思えるタイミングでスキルを解除した。

 すると宙には三つの丹が浮いている。

 その丹は黄金色に輝いており、薄らと神々しいオーラも放っているように見える。

 「ご確認ください」

 自信満々に錬成した丹を試験官に渡す。

 試験官は目の前で起きたことが全く信じられなかった。

 試験官長を務める国内トップの錬丹術師であるB級の遠藤ですら無丹炉錬成を行えば失敗するか低品質の物しか作れない。

 それは海外にいるトップクラスの錬丹術師でも同じだ。

 無丹炉錬成は質が大幅に落ちる。常識である。

 しかし、目の前にいるF級ハンターは無丹炉錬成を成功させただけでなく、完璧な錬成を行った。

 しかもそれで終わりではない。

 受験者が提出した丹を見ただけで分かった。

 【超級】であると。

 最上級の更に上のランクで、国内はおろか、海外でも作れる者はいない。

 それをF級ハンターが成功させた。しかも三つ。

 先ほどまで偉そうな態度を取っていた遠藤は身震いするとともに酷く興奮していた。

 『不世出の逸材が出てきた』

 試験の結果は満場一致で【S級】への昇格だ。

 しかし、試験において試験官らが昇級出来る権限は【A級】までである。

 S級は単に実力だけではなく、社会への貢献度やハンター、協会からの信頼があって初めて協会から認定される。

 つまり、実力を見れば穂浪はS級だが、S級にする権限がないため、A級への昇格となった。

 「大師、どのような修行をされたのですか?」

 昇級が正式に決定し、記録員が書類を作成している間に、先ほどまで偉そうな態度を取っていた遠藤が自分よりも二回り近く年下の穂浪を『大師』と呼び、修行内容を尋ねた。

 「申し訳ありませんが、それはお答えできません。自分も師匠に教わった身ですし、勝手にお教えする事は出来ません」

 毅然と返答する穂浪だったが、それでも遠藤だけでなく、他試験官であり、錬丹術師でもあるハンターが次々と質問をする。

 その中には『師匠は誰なのか』と言ったものもあったが、神也との約束がある為、神也に関係する事と神也から得た技術、知識は一切答えなかった。

 神也との約束は簡単なもので、【師匠が神也であることを他言する事を禁じる】【修行内容、教え、技術、知識を神也の許可なく伝授しない】この二つだ。

 



 試験官たちはこれ以上聞いても答えてくれないと判断し、管理員の書類完成と共に試験は正式に終了した。

 新たな認定証には【A級ハンター】としっかり印字されている。

 認定証を受け取った穂浪は笑みを浮かべながら、神也に電話をし、無事にA級に昇格したことを報告した。

 神也から誉め言葉と【修了】認定と共に、【皆伝】の許しを得た。

 【天魔流錬丹術】

 これは神也が武林世界に居た頃に独自の錬丹術を作り上げて武林世界一の規模を誇った錬丹術の一大門派だ。

 天魔神教の下部組織という扱いだったが、富裕民、貧民分け隔てなく丹藥を処方していたため、民からの人気、信望共に天魔王と同様の物だった。

 そして地球では穂浪が初めての【天魔流錬丹術・免許皆伝者】という事になる。

 これは事前に聞かされていたが、いざ皆伝を得るとやはり嬉しいものであり、穂浪が心から尊敬する神也が開祖の天魔流錬丹術を教えてもらえたことが何よりの誇りだった。

 そしてA級となったことでB級以上から持てる独自の工房を持つことが出来る。

 更にA級は今まで日本にいなかったが、制度としてA級の製薬関係のハンターは【特例医師】扱いとなり、医師免許と同様に【診療】【治療】を行うことが出来る。

 但し、正式な医師ではない為、手術などの外科的治療などは不可だ。

 あくまでも丹を使用する治療が許される。

 つまりは内科的治療だ。

 これでようやく家族に楽をさせることが出来る。

 そして師匠に恩返し! そんなバラ色の未来を見ながら穂浪は家路に着く。

三連休最終日にも投稿します!

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