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無双天魔王は学園教師  作者: 星河
一章~最強の男~
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第六話

 安藤徹による衝撃の仮説が飛び出し、一同は思う所がありながらも今日の本題を話し合った。

 ゲートの管理権だ。

 所有者は神也。管理権限を協会に売る。これは事前に口約束で交わしたもので、今日は本格的に決める為に会長自ら来た。

 神也の条件である、神也の情報秘匿。

 これは既に会長権限によって匿名ハンターとすることが決定している。

 通常はあり得ない措置だが、協会が得る莫大な利益の前では無意味という事で、受け入れる事となった。

 そして匿名ハンターという事で通常の交渉会議を飛ばして直接会長との交渉となった。

 結果として【管理権限一日/五億円】【ゲート内資源利益/一割】という条件で合意した。

 S級ゲートの相場、そして既にゲート内にモンスターは存在しない事を考えるとあり得ないほどの格安であることは神也自身も理解しているが、神也はギルドも運営していないし、子育てするうえで一日に無条件で最低五億円は入ることから、それだけで十分だという判断をした。

 更に言えば友人と昔から世話になっているおじさんへのお礼という気持ちもあった。

 神也のそんな思いに感謝しながら徹は契約書にサインをする。

 そして内密の極秘契約も交わすことになる。

 【協会及び国民にゲート、モンスター、ハンターによる大規模な災害が予想される際には報酬と情報の秘匿の確約を以て天道神也の協力を得る】

 というものだ。

 但し、これは拒否することも出来る。

 拒否権に関しては神也が自ら言いだした。

 大規模な事件が起きたとして、必ずしも神也が協力できるとは限らない。

 愛の事もある為、優先順位として愛が第一優先とする旨を伝えたところ、徹はそれを当たり前だとして了承した。

 そして報酬はモンスター災害、事件の規模などによって変動する。

 変動率などは一切決めず、協力要請の際に交渉可能となっている。

 無事に二種類の契約が締結されたが、極秘契約の事は協会のごく一部にしか知らせないという事になっている。

 




 話し合いが終了し、久々に家族ぐるみで食事に行くかという徹の言葉に全員が賛成し、協会本部の近くにある料亭を予約したとのことで、予約時間である十八時に集合となり、解散となった。

 三笠も帰宅し、神也は愛と公園に行くことにした。

 「愛ねぇ、保育園でね、先生にお歌教えてもらったんだよ!」

 神也に肩車をしてもらっている愛はご機嫌で教えてもらったという歌を歌い始める。

 因みにその歌は童謡のようではあるが、神也には一切聞いたことのない歌だった。

 愛のご機嫌なお歌発表会は公園に着くまで続き、いざ公園に着くと神也がマンションから持ってきた愛の砂場用具を持って砂場へ駆け出して行った。

 公園では他にも顔見知りのママ友、パパ友が居て、その人たちがいる場所へ神也も歩いていく。

 「こんにちは」

 神也の挨拶にその場のママ、パパも皆挨拶を交わす。

 「そういえば愛ちゃんパパってハンター養成学園の先生をされているんでしたっけ?」

 パパママ同士で子供たちを見守りながら雑談をしていると、一人のママさんが神也に聞く。

 「えぇ。三笠学園の実戦格闘術を教えています」

 神也の言葉にへぇという関心の声が上がる。

 「いやね、実はうちの夫もハンターなんだけど、F級のハンターで、しかも生産職だからまともに稼げなくて、勤めている工房でもまともに稼げないから、学園での就職とかは出来ないかなぁっていつも言ってるのよ」

 ハンターとして、ハンターのみで生活が出来るのは生産職、採取職、戦闘職、補佐職全てにおいてD級くらいからだ。

 ハンターランクは実績やステータス次第でいくらでも上昇する。

 しかし、覚醒が遅い場合、肉体年齢もあってなかなかステータスが上昇しない。

 故にランクも中々上がらない。

 そして生活に困窮してしまうケースが後を絶たない。

 そうした現実があるにも関わらず、大人になってから覚醒したプレイヤーがハンターになるのはやはり『夢』だ。

 幼いころから夢に見たハンター。大金を稼ぎ、家族に楽をさせたい。

 そうした思いでハンターになり、現実を知る。

 そうした者が後を絶たず、神也のママ友である拓くんママもそんな現実を知った夫の現状を嘆いているのだ。

 「因みに旦那さんの職は?」

 神也の問いには思惑がある。

 神也に指導できる分野の生産職ならば、自分が指導しつつ、理事長で義父の三笠肇に頼んで教師とは言わずとも学園で雇ってもらえるかもしれない。

 雇ってもらえずとも、神也に指導できる分野ならば神也の指導力は相当なものであるため、すぐにランクも上がるだろうという思惑があった。

 「えっと……錬金術師――? 錬丹術師? 確か薬を作る職だったはずです」

 薬を作る生産職で、錬金術師、錬丹術師の職名が出るという事は間違いなく錬丹術師だ。

 そして錬丹術は神也の専門分野の一つ。

 神也の職は総合武術家だが、神也のチュートリアル世界は武林世界であり、その世界で神也はすべてを極めた。

 その一つが武人にとっては重要である【錬丹】だ。

 「錬丹術師ですね。もしよかったら旦那さんと少し話せませんか? もしかしたら自分が力になれるかもしれません」

 神也の言葉に、旦那の現状への愚痴のつもりだった拓くんママは驚いた。

 「え? 良いんですか?」

 思わず返す拓くんママに神也は笑顔で「えぇ」と頷く。

 感謝を述べ、拓くんママは急いで旦那へ電話をかけ、休日だった旦那はすぐに公園へ行くという事で、暫く待つことになった。

 因みに拓くん一家の自宅と神也の自宅は同じマンションなのだ。

 徒歩五分ほどで公園に着くという事で、待つことになり、その間子供たちの成長の早さについてお互いの意見を交換しあう親たちだった。




 


 「お待たせしてすみません!」

 息を切らし、汗だくで挨拶をするのは拓くんパパだ。

 生産職では体力が付かないのも当然だ。

 神也は拓くんママに了承を貰い、拓くんパパと二人で話すことになった。

 愛は他のママ、パパが見てくれるという事で、公園の隅に行き、話を始めた。

 「拓くんパパは錬丹術師で合ってますか?」

 神也の問いに汗をハンカチで拭いながら肯定の返事をする。

 「錬丹術なら俺が教える事が出来ます」

 神也の言葉に拓くんパパは驚愕する。

 神也の職は【総合武術家】これはパパ友、ママ友なら知っている事で、拓くんパパも当然知っている。

 「えっと――」

 力になってくれるかもというから来たのに――という苛立ちを押し込み、言葉を探すが、中々出てこない。

 「証拠を見せましょう」

 神也はそう言うと、スキル【虚空収納】に収納していた様々な薬草を取り出す。

 「え? 収納スキル!?」

 収納スキルは通常採取職が取得出来るスキル。

 戦闘職も持つことはあるが、稀だ。

 だから拓くんパパはそこに驚いたのだ。

 薬草をいくつか取り出した神也はそれを宙に浮かせたまま両手を胸の前でパチンと音を鳴らしながら合わせる。

 錬丹術は本来丹炉を使用しなければ作れない。

 上級の錬丹術師ならば丹炉なしでも作成出来るが、質はかなり落ちる。

 しかし、錬丹術を職ではなく自分の技術として昇華し、極めた神也には何の障害もない。

 華麗に舞うように神也の腕が動き、それに合わせて薬草も動く。

 次第に薬草のエキス、刻み、合わせが出来上がっていき、それを超凝縮させる。

 そして最終段階である加熱に入るのだが、そこで神也は驚愕のモノを見せる事になる。

 「三昧真火……?」

 拓くんパパは驚愕超え、言葉が出なくなっていた。

 赤ではなく青白く光る焔は凝縮された薬物を熱している。

 そして三昧真火と薬物を包み込むように手に収める。

 「完成です」

 神也は完成した丹を拓くんパパに見せる。

 「あり得ない……」

 三昧真火だけでなく、その丹を見て発した言葉だ。

 神也が錬成した丹は【神化境】の丹なのだ。

 丹にもランクが存在する。

 F級が作れる丹はせいぜい十級~八級程度。

 神化境の丹は最上級であり、この世に作れる者はいないとされるランクだ。

 それを神也は作った。

 それも丹炉もなしに。

 「俺の職は総合武術家です。つまり、俺の錬丹術は全て技術によって成し遂げたもの。つまり、錬丹術の職を持つあなたなら俺以上――とは無理かもしれませんが、俺程度の実力なら得られるはずですよ。しかも俺は錬丹術を極めました。その極めた錬丹術をあなたに教える事が出来る。どうですか?」

 神也は自分の利など一切考えない。

 自分に損しかなくても真正のお人好しである神也はこうした提案を平気でしてしまうのだ。

 『困っている人が居たら助ける』これは武林世界でも常に心掛けていたことだった。

 天魔神教という武林世界で嫌われ者だった集団が人々に愛され、慕われる集団になったのは弱きを助けるという信念を持った教主が誕生した事と『困った人が居たら助ける』という信念の結果だった。

 その信念は未だに変わっておらず、友人とは言えない世間的な『パパ友』である拓くんパパに自分の弟子へ誘ったのだ。

 拓くんパパはまるで神を見るかのような表情で神也を見ていた。

 そして、告げる。

 「弟子にしてください!」

 九十度に曲がった礼に神也は笑顔で応える。

 「えぇ。もちろんです。それから、師弟関係である以上俺はもう敬語は使いません」

 拓くんパパこと、湯浅穂浪は正式に神也へ弟子入りを果たした。

 武林世界では幾多の弟子が居たが、この世界での弟子は初だった。

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