第十四話
『太平洋上に展開されていたアメリカ海軍の艦船やアメリカ本土の全ての基地が何者かによって攻撃を受け、数万のハンター、軍人の死亡から三か月が経過しました。事件直後に当時の大統領、アッカーマン氏による衝撃の告白も世界中に衝撃を与えました。アメリカ政府の指示の下、犯罪組織に諸外国へ裏工作や破壊工作、要人の殺害などをしていた事を明らかにし、その一人が全世界に指名手配されていたブシドラ容疑者である事が明かされ、謝罪し、辞任しました。そして軍への攻撃は破壊工作を行っていた際に怒らせてはならぬ人物を怒らせてしまったとしか述べず、何者による攻撃なのかなどは一切説明をしませんでした。辞任したアッカーマン前大統領の後任を決める大統領選は明日投開票が行われます。続いてのニュースです、阿川総理の辞任に伴う後任の総裁選挙が明日投開票を迎えます。一身上の都合の為という理由で辞任した阿川前総理ですが、辞任と同時に議員辞職もしており、政界引退を明言しています。更に時を同じくしてハンター管理協会会長、安藤徹氏も辞任を発表し、本日午後三時に投開票が行われます。続いてのニュースです――』
午前のニュースが流れている間、三笠学園の講堂では全校生徒が集合していた。
前ハンター協会会長の息子、安藤翔太が三笠学園の臨時理事長に就任したことを発表していた。
三か月前、交通事故により、急逝した三笠夫妻に変わって就任した――事になっている。
翔太は神也からの【命令】に従っていて、アメリカ政府、日本政府、ハンター協会の全てが神也に対して無条件降伏をした。
原因は当然神也によるアメリカ軍への蹂躙劇だ。
あの日、大切な存在である両親を失った神也は他を見下し、他を我が物にする為にすべてを支配しようとするアメリカそしてそれに迎合する日本政府、日本ハンター協会を殲滅する意を固めた。
そしてそのまま行動に移し、その場にいたアンドリューをその場で殺した。
この世で最も残酷と言える、拘束した状態で、使い魔の一種である犬型式神を召喚し、生きたまま喰わせた。
次に倉庫の周囲を見張っていた軍人、ハンターを気による索敵で場所を特定し、索敵の結果で対象をロックオンして無形剣の意気馭剣で殲滅。
その後、昼間に索敵した際の結果で太平洋上に米軍艦隊が展開している事を把握していたため、それらの殲滅に移行する。
飛空術で艦隊に近づくと、レーダーで警戒をしていた艦隊に捕捉され、警告の音声と共に戦闘機も飛び立ったが、それらには意を介さず、何事もなかったかのように艦船から飛びだった、警告用の戦闘機を滅する。
その様子を見た艦隊は一斉に攻撃を始めた。
ミサイル、砲弾、銃弾。
しかし、それらは何の意味も成さなかった。
真の強者を前にして銃弾はもちろん、ミサイルすら何の意味もない。
そして僅か三分ほどで艦隊は沈黙する。
神也はなんとそのままアメリカ本土へ飛ぶ。
音速を超えた速度で飛び、戦闘機すら追い付けない程の速度を出し、数分でハワイへ着く。
まずはハワイ基地を殲滅。
しかし、全員を殺しはしなかった。
アメリカ政府への警告及び宣戦布告として証言する者を生かしたのだ。
神也がハワイ上空から去ると、意図通りハワイ基地の生存者は本国の軍本部へ緊急連絡し、その結果アメリカ軍はすべての基地で厳戒態勢を敷いた。
だがそんな警戒態勢で居ても意味はなかった事を数時間後には知ることになる。
アメリカ西岸から上陸した神也だが、既にアメリカ軍が多数配備されていて、神也を見つけるなり一斉攻撃を開始する。
だが、神也の実力を過小評価していた軍は即座に殲滅された。
今度は皆殺しだった。
そのまま前進を続ける神也だったが、軍の他にアメリカのハンターも多数やってきていた。
そのどれもを殲滅し、アメリカ本土の軍基地、施設を壊滅させ続け、更にアメリカハンター協会本部までが壊滅された頃、アメリカ政府は降伏した。
大統領の他複数の閣僚が降伏せずに攻撃を続けるべきだと反論していたが、多くの部下が現在のアメリカの行動を快く思っておらず、むしろ嫌悪していたため、降伏に賛成する一部の閣僚、軍の大将級を含めた者たちを筆頭に、大統領と閣僚を『国家安全保障法違反』で現行犯逮捕した。
そしてホワイトハウスに現れた神也に降伏を宣言したのだ。
しかし、神也はそれを拒否する。
神也はアメリカが腐った国であることを理解していた。
ここで許してしまえばまた同じことを起こす。
そのため、見せしめとして徹底的に叩かなければならなかった。
神也は気づいていなかったが、神也の内面にはその時『心魔』が迫っていた。
復讐の為に襲撃を始めて見せしめに大量虐殺を行う。
それらを実行に移していたために神也の核にある【神格】が薄らぎ、【魔】が迫ってしまったのだ。
神と魔は対極にあり、魔は極悪非道の者が宿す核。
神也の【神格】、【格】と【核】が汚染され始めた。
核と格は似て非なるもので、格はその者の【存在としての格】であり、核はその者の宿す【意思】及び【善性と悪性】である。
核は常に変動するもので、その時に思っている事などが反映される。
そして今久しく宿していなかった【憎悪】から来る大量虐殺が神也の格を落とし、核を汚染する形となっているのだ。
ホワイトハウスの庭で降伏の為、ホワイトハウスの全ての職員と拘束された大統領一派、一派を拘束した軍関係者が両膝を地面に付け、両手を上げている。
降伏を訴える者達を前に神也はそれを拒否する。
慌て始める者達だが、それでもこの場で抵抗するのは無意味であり、逆に既に触れている逆鱗を更に逆なでしてしまう恐れがある。そう判断したため、誰もその場から動かなかった。
神也は右手をホワイトハウスへ向け、一気に振り落とす。
そしてホワイトハウスは音を激しく鳴らしながら全館が『潰れた』
その状況に恐怖する一同であったが、流石は軍人というべきか、大統領たちを拘束した軍人は恐怖を押し殺して神也を真っすぐ見ていた。
神也の心中には『白旗を上げた者たちが暴れてくれないか』という思いがある。
それをしてくれれば神也には何のためらいもなく殲滅出来る。
しかし、眼前の者達は恐怖こそすれど、決して逃げ出したり牙を剥こうとする者はいない。
だからこそ神也の感情はかき乱されている。
このままアメリカの降伏を認めればどこに怒りを向ければ良いのか。
同時にこれ以上虐殺をしたくないという思い。
『神也、もう止めるんだ……。君は心優しい子だ。私たちはそんな行為を望んでなんていないよ』
『あなたには待ってくれている可愛い愛ちゃんがいるでしょ? 愛ちゃんに顔向け出来なくなってしまうわ』
幻影、幻聴が神也に映る。
その幻影は神也の両親、三笠夫妻だった。
神也には幻影魔法や関連のスキルは一切通じない。
だから神也に見えているこの幻影は神也の心の内を反映した一種の幻覚。
神也はまだ踏みとどまることが出来る事を意味していた。
「アメリカ合衆国及びアメリカ旗下の全ての国、組織、個人に告げる。俺は今後地球に何があっても二度と助けん。貴様らが選んだ道だ。貴様らが解決しろ」
幻覚の出現から一分ほどして目を伏せていた神也が深く息を吐き、目の前で降伏している者たちに告げた。
「貴様らが真に反省し、全世界に謝罪の上で貴様らの罪を償った際には助けてやらんこともない」
神也はそれだけを言うと、ゲートを開け、そのまま消えていった。
ホワイトハウスの庭にいた全員が暫くその場を動けず、ようやく動けたのは救助隊が駆け付けた十分後だった。
これらがその日に起きた事である。
神也がアメリカを去り、武林世界の天魔神教教主執務室に入った時、システムからのポップアップが出現した。
『基軸世界との時間同期が解除されました』
これは神也が現状では二度と地球に戻らず、地球に何があっても決して手を貸さないという決意を表明したことでそれを反映した形だ。
アメリカとそれに追従するすべての者が罪を償ったとき、はじめて地球は【絶対者】に赦されるという事だ。
神也は知る由もないが、地球世界にとって、【絶対者】から見放されるという事は即ち【死刑宣告】を意味していた。
当然地球に住む人々もそれを知るはずがない。
絶対者である神也が居たからこそ地球は侵略されず、ゲートもそこまで開いていなかったのだ。
しかし、絶対者から見放された世界ではゲートが開き放題となり、侵略も容易となってしまう。
無数にある世界でゲートを人工的に開くことが出来ない者たちが大半である以上、ランダムに出現するゲートやランダムなゲートを出現させるスキルなどで出たゲートが地球に繋がっている可能性は限りなくゼロに近い。
それでも強力なモンスターや偶然地球に繋がる他世界のゲートが現れた場合は瞬く間に地球は蹂躙される。
地球世界の武力はすべての世界の中でも下位に位置する。
今まで蹂躙されていなかったのはただの偶然であり、更に絶対者である神也が消えた以上偶然他世界のゲートが開く可能性はゼロに近いとしても、強力なモンスターが出現するA級以上のゲートの出現頻度は今までの比ではなくなる。
これは世界の摂理であり、世界に強力な者が居れば世界の均衡を保つためにゲート出現頻度は低くなる。
しかし、強力な者がいない場合は高くなってしまうのが摂理なのだ。
それは世界の意思とは別の世界の摂理というもので決まっているシステムのようなもの。
神也が消えた地球では近いうちに70年代以上の混乱が待ち受ける。
「き、教主様……」
神也が教主執務室にゲートから現れると、愛を守るように結界の外で立っていた神也が帰って来たと知っている数少ない人物である神也の弟子、宝生が稽首で迎える。
しかし、神也を見るなり武林世界でも強者の部類に入る宝生が恐怖に震えている。
宝生は心の底から神也を尊敬し、崇拝している。そんな神也に恐怖などかつてしたことなかった。
宝生から見るいつもの神也は神々しいオーラを放っており、まさに聖人君主そのもの。
しかし今の神也はどす黒いオーラを纏い、全くの別人であると言われてもある意味納得してしまう程の変貌ぶりだった。
「暫く愛を頼む。今の俺では愛の父でいる資格はない。暫く閉関修練に入る」
神也はそれだけ告げると、教主執務室の隠し部屋にある教主修練室に入っていった。
宝生の恐怖から来る動悸は次第に治まり、神也が修練室に入って姿が消えた後、稽首のまま応える。
「お任せくださいませ! お嬢様は命に代えてもお守り致します!」
本当の第二章は次回から始まりますが、暫し、更新が遅くなるかもしれないです・・・
設定とか、執筆とかなんかめちゃくちゃになっててw
すみません!




