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無双天魔王は学園教師  作者: 星河
一章~最強の男~
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第十三話

 土曜日の深夜。

 愛の寝かしつけを終え、自身も寝ようとしてた神也だったのだが、何故か寝付けず、テレビを見ていた。

 突然スマホに着信音が鳴る。

 非通知着信だ。

 神也は基本非通知や知らない番号からの電話は出ない。

 今回も同じで、電話には出ず、無視をする。

 しかし、一度着信が切れても再度鳴る。

 計三回、非通知での着信があったが、神也は電話には出ない。

 だが、今度は安藤徹からの着信だ。

 そして嫌な予感が漂う。

 「こんな時間にどうしたのおじさん」

 一言目に徹へ尋ねる。

 『すまん。悪いが、今から一人で横浜港倉庫街の五番倉庫に来てくれないか。頼む』

 徹はそれだけ述べると電話を一方的に切った。

 同時に気を広げ、横浜倉庫街に向ける。

 数百の人しかもほとんどがハンターだ。

 その中に神也が良く知る人物もいる。

 三笠夫妻と安藤親子だ。

 三笠夫妻は捕らわれているようだが、安藤親子はそうではない。

 神也は普段オーラを一切出さない。

 相当な実力者でも自分から出る僅かなオーラを完璧に仕舞う事は不可能。

 つまりそれが可能な神也は常識では測ることのできない実力者という事を意味する。

 しかし、今の神也は怒りが滲み出ていて、僅かなオーラが溢れていた。

 愛が眠っているベッドへ向かい、ゲートを開く。

 武林世界の教主執務室のソファに愛を寝かせ、点穴を軽く付き後十二時間は眠り続けるようにする。

 そして愛の周辺に神也が行使可能な最強防護の結界を張る。

 つまりこの結界を壊せる者は神也以外には存在しない。

 「少しだけ待っててね」

 ソファで眠る愛を優しく撫でて再びゲートへ入る。

 自宅に戻った神也は横浜倉庫街へ飛空術で向かう。




 「まだ来ないのか?」

 米軍司令官アンドリューが隣にいる安藤徹を威圧するように聞く。

 「もう間もなくかと――」

 徹は止めどなく噴き出す汗を必死で拭きながら答える。

 徹の後方では翔太が父親を軽蔑、侮蔑、憤怒が籠った眼差しを向けているが、徹はそれを知らない。

 そしてそうした眼を向けるのは翔太だけではない。

 三笠夫妻もだ。

 「先輩、貴方にはとことん失望しましたよ」

 三笠肇の侮蔑の籠った言葉に徹は一瞬肇を見るが、しかし、無視をする。

 「ふん! 弱小国の弱小ハンターが偉大なるアメリカに楯突くからこうなるのだ」

 アンドリューはまるで虫けらを見るかのような眼つきで足元で両手両足を背側で縛られている三笠夫妻を見下す。

 「ほぉ。アメリカがいつ偉大だったことがある?」

 突然聞こえるこの場の誰でもない声に倉庫内にいる全員が辺りを見渡す。

 そして一部のハンターが護衛の為にアンドリューへ駆け寄る。

 「一度だけ警告する。二人を放せ。そして二度と日本に関わるな。アメリカを灰燼に帰しても良いなら別に良いが」

 暗闇の倉庫奥から現れたのは神也だった。

 そして三笠夫妻と翔太は絶望する。

 愛する息子が、尊敬する兄貴が来てしまった――と。

 肇と翔太はこう思っていた。

 確かに神也は強い。だが、S級ハンターが数十名にA級ハンターが数百名いる現状では神也に勝ち目はない。

 確実に殺されてしまう。

 だからこそ絶対に来ないでくれと思っていたのだ。

 「何で来たの!」

 三笠美枝が泣きながら絶叫する。

 その隣では肇が今にも泣きそうな表情になっていた。

 「は! 弱小国で強い強いと言われていたら自分が最強になった気分になったか? 現実を教えてやる! 真の最強は我がアメリカだ!」

 アンドリューの言葉が終わると共に一人のハンターが神也の前に現れる。

 「レイモンド、その男を殺せ。出来るだけ惨めに」

 レイモンド・パッカート。アメリカS級ハンターのランキングトップに君臨する名実ともに最強の称号を得ている男だ。

 「ふん! 日本のような弱小国に来てこんな雑魚を相手にしなければならんとはな」

 レイモンドは眼前にいる神也を完全に見下していた。

 しかし、神也はどんなハンターであろうと自分の敵ではないと理解していて、更に今神也の脳内にはアメリカ軍、アメリカ政府の殲滅しかなかった。

 だが、三笠夫妻を開放すればそれは止めてやるという冷静さも残っている。

 「ごちゃごちゃうるせぇよ。さっさと来い。三秒で終わらせてやる」

 神也はレイモンドを威圧する。

 その威圧を受けてレイモンドは指先一つ動かせなくなっていた。

 「早く来いよ」

 更に神也の威圧。

 レイモンドは理解が追い付かなくなっていた。

 目の前の弱者が一言二言発しただけで最強である自分が一切動けなくなった。

 意味が分かっていなかった。

 緊張しているのか、恐怖しているのか。

 「レイモンド! 何をしている!」

 アンドリューの怒声が飛ぶが、レイモンドはそれでも動けない。

 「もういい。たったこれだけの威圧で恐怖し、動けなくなる者など俺の前に立つに値しない。死ね」

 神也は無形剣による斬撃で動けないままのレイモンドの首を断ち切る。

 斬られた首からは大量の血が噴き出し、辺りに飛び散り、血溜まりとなった。

 何が起きたのか理解が追い付かないのはアンドリューだけではなかった。

 この場の神也以外の人間すべてが理解できていなかった。

 強いとは知っていたが、ランキング一位の最強と呼ばれる男すら何も出来ずに死んだ。

 レイモンドの死亡から数秒、ようやくレイモンドが神也によって殺されたと理解したアンドリューはハンターたちに怒鳴る。

 「何をしている! 早くこいつを殺せ!」

 その怒号と共にアンドリューを護衛する者達以外の倉庫内にいるハンターが神也に襲い掛かる。

 魔法使い、近接戦闘職、弓使いなど様々なハンターがいる。

 しかもその多くがS級だ。

 しかし、圧倒的な力を前に数など何の意味も成さない事を誰も知らなかった。

 ハンター十数名が一斉に神也へ飛び掛かると同時に神也の奥義の一つ【大神聖域】を発動する。

 【大神聖域】は一種の結界で、結界内の主は当然神也。

 その結界内は絶対的な君主である神也の領域であり、その領域内では敵対者にはデバフが付与され、神也が指定する者にはバフが与えられる。

 バフ、デバフの種類は領域の君主が指定する事が出来る。

 今回神也の指定するデバフは【死】である。

 このデバフは自身よりも圧倒的な格下にしか使用できない。

 そして即死無効、デバフ無効などのスキル効果を持つ相手にも通用しない。

 しかし、この場のハンターは全て神也よりも圧倒的な格下であり、デバフ無効などの効果を持つスキル所持者も居なかった。

 


 「何が起きた……」

 一斉に飛び掛かったはずのハンターが一瞬にして全員が倒れた。

 アンドリューの顔には恐怖が滲み出ている。

 「き、貴様……アメリカと戦争を起こすつもりか!」

 アンドリューは神也を指さし、唾を飛ばしながら怒鳴り散らす。

 「黙れよゴミが。貴様らが先に仕掛けた戦争だろ。お前らが手出ししない限り俺も手を出すつもりはなかった。そして俺は警告したはずだ。今すぐに二人を開放しろと。それを拒否して攻撃してきた時点でアメリカの末路は決まった」

 神也の言葉は決して冗談でもその場の取り繕いでもない事は最早この場の全員が理解していた。

 「もういい――」

 アンドリューはプルプルと豚のように丸い顔を震わせながら何かのスイッチを取り出す。

 「神也、我が息子よ。愛と共に幸せにな」

 突然神也へ肇が笑顔で語る。

 「神也、ずっと辛い人生だったのに、ここまで立派な大人になってくれて母さん嬉しいわ。愛ちゃんと幸せにね」

 美枝まで泣きながらも、笑顔で言う。

 「何を言ってるんだ?」

 神也は戸惑っていた。

 突然最後の言葉のように言う二人に普段焦りを滅多に見せない神也は焦りだす。

 そしてアンドリューはスイッチを押した。

 瞬間、三笠肇と三笠美枝は絶命した。

 二人のうなじには小型の爆弾が仕掛けられていて、二人の命を盾に神也をアメリカ政府の管理下へ置こうと画策してたのだ。

 しかし、人知を超えた力を前にアンドリューは政府からの命令を放棄し、この場からの逃亡を図る為、二人を殺害した。

 だがここでもアンドリュー、安藤徹の意図しない行動を神也は起こす。

 「義父さん……。義母さん……」

 神也は膝から崩れ落ち、五メートル程先の横たわる二人を見る。

 「俺のせいで……。俺が専守防衛に徹したから……。最初から殲滅していれば……」

 神也は武林世界の英雄であり、人格者であり、絶対者。

 しかし、それはあくまで味方に対して――。

 本来弱肉強食の世界である武林世界で生き残ったのは何も死に戻りスキルだけのおかげではない。

 敵対者には徹底的な殲滅を行っていたからというのもある。

 それは太平の世になったことで鳴りを潜めた。

 しかし、今神也は大切な人を失った事でかつての【絶対者】としての行動、在り方を思い出した。

 そしてこれが終わったら武林世界に戻り、愛とそこで暮らす。

 このまま米軍、米国政府を放っておき、武林世界で暮らすことも出来るが、その選択肢は既に神也の頭からは消えていた。

 【絶対者】としての消えていた自覚が再び燃え出した事で、アメリカ政府、そしてアメリカに迎合した日本政府、ハンター協会、安藤徹を決して許さない。

 だからこそ最後の仕事として【敵対者】を殲滅する意を固めた。

 「安藤、貴様は殺さなさい。俺が居なくなった後の世界を眺めてそのまま死ね」

 神也はどす黒いオーラを纏い、かつては『おじさん』と慕っていた安藤徹を睨む。

 神也は世界の意思によって選ばれ、そして世界の侵略を止める事を第二の使命としている。

 しかし、それは愛が第一優先であり、愛が危険に晒される今の状況では地球にはいられない。

 そして地球に出現するゲートは日に日に強大になっているのも知っている。

 「今まで俺が貴様らにしてきた恩も忘れ、自分が生き残りたいがために他者を捨てる貴様らにはもう用はない」

 神也の言葉が徐々に強くなっていく。

 神也と協会で結ばれた密約によって、ここ数か月、神也の時間がある時に協会からの『お願い』を何度も解決していた。

 当然報酬は貰っていたが、それでも他のハンターでは解決できないから神也に回されたもののはずであり、神也が居なくなったらどうなるかも想像が出来ない政府、協会そして安藤徹に神也はもうどうでも良くなっていた。

 「動くな」

 神也の視線がこそこそと逃げようとするアンドリューに向けられる。

 そして『蹂躙』が始まった。

 後世の世界史にはこう記載されている。

 『アメリカは眠れる獅子、決して怒らせてはならぬモノを怒らせ、一夜にしてアメリカ合衆国の三十の艦船、百五十を超える戦闘機、そしてアメリカ全土の基地が蹂躙され、十五万を超えるハンターと軍人が死亡。これは全て一人のモノによってもたらされた災害であり、アメリカの超大国としての地位は失墜し、これ以降姿を消した襲撃者だったが、世界中に強力なゲートがいくつも現れ、世界中が更なるパニックに陥る中、日本国では総理大臣の辞任、ハンター協会会長の辞任などが続き、日本領土の半分近い土地が氾濫によってモンスターに占領された』


第一章・完

第一章はこれで完!

第二章以降も普通に続きますので、引き続きよろしくお願いします!

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