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第五章 解放の代償

カイとともに廃墟の地下へ潜り込むと、すぐに敵の気配を察知された。

「侵入者だ! 捕らえろ!」


数十人の敵が押し寄せてくる。

「くそっ、正面突破しかない!」

カイが短剣を抜き、先頭の男の喉を切り裂いた。


俺もグラディアを握りしめ、突撃する。

数人を斬り伏せたその時、奥の魔法陣から禍々しい気配が溢れ出した。


「……お前が隼人か」


低い声と共に、一人の男が現れた。

黒いローブに身を包み、全身に不気味な呪符が貼られている。

その片目は赤黒く光っていた。


「……お前が幹部か」


「リシアを取り戻しに来たか。だが間に合わん」

男は指を鳴らし、魔法陣を活性化させる。

その中央には、鎖で拘束されたリシアの姿があった。


「リシア!」


「……は、隼人……っ!」

必死に俺の名を呼ぶ彼女の声が胸に突き刺さる。


「貴様を倒し、鍵の器を完成させる」

幹部が手をかざした瞬間、黒い魔力の刃が飛んできた。


俺は咄嗟にグラディアで受け止めるが、凄まじい衝撃に腕が痺れた。

「ぐっ……なんて力だ……!」


『隼人、このままでは勝てん』

グラディアの声が響く。

『俺の“封印された力”を解放しろ』


「……封印された力?」


『かつて世界を滅ぼしかけた力だ。だが今なら幹部を斬り伏せられる』


「……代償は?」


『お前の命の半分。そして……お前の心を俺に明け渡すことになる』


「……!」

全身が凍りついた。


「さあ、どうする?」

幹部が再び魔力を放ち、床を爆砕した。


カイが背後で叫ぶ。

「隼人! あのままじゃリシアが儀式で取り込まれるぞ!」


「……ッ!」


リシアの瞳が俺を見ていた。

「……隼人……来ないで……! 私のためにそんなこと――」


俺は剣を握り締める。


『隼人、選べ。解放しなければ勝てんぞ』


グラディアの声が耳を刺す。

だが、俺は首を振った。

「……お前の力なんていらない。俺は、俺自身でリシアを助ける」


『バカな……!』


幹部が不気味に笑う。

「英雄気取りか……だが、その甘さが命取りだ!」


黒い魔力の刃が再び襲いかかる。

俺は身を翻し、ギリギリでかわすが、腕に深い裂傷を負った。


「ぐっ……!」


「隼人!」

リシアの悲鳴が響く。

だが立ち止まる暇はない。


「おおおおおおっ!!」

俺は全身の力を込めて突撃した。

グラディアが振り下ろされ、幹部の魔法刃とぶつかる。


――凄まじい衝撃。

骨が軋む。腕が吹き飛びそうになる。

だが俺は踏ん張った。


「お前を……ここで止める!」


幹部が舌打ちし、さらに魔力を放出した。

「愚か者がッ!」


俺は全身の血を振り絞り、反撃に転じる。

「リシアを……返せえええっ!!」


その瞬間、グラディアが淡く光を放った。

『……隼人、お前の覚悟、見せてもらったぞ』


「……?」


グラディアの刃が黒い魔力を切り裂き、幹部の体を貫いた。


「……な、何……!? 封印を解いていないのに……!」


「これは俺の力だ!」

俺は叫び、幹部を突き飛ばした。


男は絶叫を上げながら崩れ落ち、動かなくなった。



「……はぁ、はぁ……」

俺は片膝をつき、荒い息を吐いた。


「隼人!」

カイが駆け寄ってくる。

「よくやったな。だが終わりじゃない。儀式はまだ動いてる!」


中央の魔法陣が脈動を始めた。

リシアの体が光に包まれ、鎖が一層きつく締まっていく。


「……隼人……来ないで……私が……壊れる……!」


「行くに決まってるだろ!」

俺は再び立ち上がった。


『隼人……もう時間がない。お前の力だけでは彼女を助けられん』


グラディアの声が再び響く。

だがその時、カイが短剣を魔法陣に突き立てた。


「待て、カイ……お前まさか……!?」


「“鍵”の力は……俺の目的にも必要なんだよ」

カイの瞳が、怪しく光った。


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