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プロローグ 死の底で目覚めた男

冷たい闇の中、俺はただただ、何も感じなかった。


身体を貫く痛みも、息ができない苦しさも、もうどこにもない。


「終わったんだ……」


そう思った瞬間、微かな光が視界の隅に映った。


そこに手を伸ばしたら、俺の意識は闇に吸い込まれるのではなく、ゆっくりと引き戻された。


気がつけば、見知らぬ場所にいた。


黒く濁った空。冷たい風が顔を撫でる。


地面はざらざらとして、枯れた草がひとひら、俺の頬に触れた。


身体は重く、動かない。だが、生きている。確かに。


「ここは……どこだ……?」


呟く声は枯れていた。記憶が断片的に戻る。


そうだ、トラックに轢かれたんだ。――死んだはずだった。


「なんで、俺は……ここに?」


不安と混乱の中、背後でかすかな音がした。


――ガサッ。


振り返ると、黒い影が近づいてくる。


骨のような手が伸び、鋭い目が俺を見据えていた。


アンデッド――死者の亡霊だ。


逃げる間もなく、影は迫った。


だが、その時だった。


俺の手に冷たい感触が走る。


そこには一本の剣が浮かび、青白く淡く輝いていた。


「――グラディア」


剣から声が響いた。


「お前が俺を呼んだのか」


「え……?呼んでない、はずだが……」


戸惑いながらも、剣の声は続く。


「覚悟しろ、これから地獄だ」


その言葉と共に、俺は剣を握った。


刹那、体に力が満ち、目の前のアンデッドを一閃で斬り裂いた。


だが、剣の声は冷たく、敵か味方か分からない。


「俺は隼人。名前はそうだ」


「桐生隼人か……なるほどな」


声は何かを悟ったように響いた。


そこへ、一人の少女が現れた。


銀色の髪、透き通る瞳。


「……リシア」


彼女は俺をじっと見つめて言った。


「あなたは、特別な存在よ」


その言葉の意味を知る由もなかった。


――こうして、俺の物語は動き始めた。

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