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ミスティ、転生してアポリアの大地に立つ
神林は舌打ちしながらも、わずかに笑った。
「ミスティ……お前も転生していたのかよ。」
「あら、神林。お久しぶりね。」
ミスティは冷たく笑みを浮かべ、指先で髪を弄ぶ。
神林は唇を吊り上げて睨む。
「よくも現世じゃ俺をコケにしてくれたな。あの恨みは、ここで晴らしてやるつもりだ。」
「いつでも良いわよ。ただ……もうあなた、私の術の中に取り込まれているかもしれないわ。」
神林は瞬きし、鼻から深く息を吐いた。
その目の奥に微かな恐怖がよぎる。
ミスティの恐ろしさを、誰よりも知っているのは神林自身だからだ。
「ああ……かもな。」
神林は目を伏せ、わずかに乾いた笑いを漏らした。
「またいつの日か、お前と戦うことになりそうだ。」
「ええ。神林。楽しみにしているわ。」
神林の胸の奥に、小さな棘のようにミスティの恐怖が刺さった。
時間が経つごとに、それは静かに増殖し、肉を裂く。
そして怯える獲物は、いずれ自分から袋小路へ逃げ込み、周囲を見失う。
ミスティにとってそれは、罠を貼るのに十分すぎる獲物だった。
神林はもう、とっくにミスティの術にはまっていたのだ。




