アポリアの彼方外伝【魂の車窓から】
「昨日まで光っていた祈り石が、今日は黙ってるの」
少女はそう言って、胸の奥で小さく壊れた。
誰にも届かない祈りは、ただの石になる。
この街では、祈りに値段がつく――魂に刻まれたまま。
わたしの願いは、まだ誰にも換金されていない。
魂の車窓から
──この世界を旅する者へ。
列車は魂をのせて走る。名を喪いし者たちの願いを胸に、アポリアの風を越えて。
◆ 第一駅:ザラム教国(Zaram)
荘厳なる祈りと共に築かれた、戒律の国。
高位律法術士の詠唱が石畳を響かせ、神聖文字が空に舞う。
絶対的な信仰が支配するこの地では、魂さえも法の秤にかけられる。
・政治形態:神政国家 ・宗教:唯一神タウヒード信仰
・GDP:3,200万エーテル ・人口:約45万人
・観光名所:浮遊する大聖堂、記録の塔
・旅人の財布ガイド:
宿泊費(簡易房)…5エーテル/泊
祈祷の水…2エーテル/瓶
律法菓子(砂糖断ち)…1.5エーテル
「神とは秩序だ。だからこそ、魂にも罰が要る」
――セオドア(アポリアの彼方2 より)
◆ 第二駅:ノアフリガ自由連邦(Noafliga)
貨幣が信仰となった金融都市圏。経済と魂が融合し、MPが新たな通貨となった世界。
都市のビル群には魔法陣が組み込まれ、共感値が値動きの指標となる。
・政治形態:議会制民主連邦 ・経済:共感市場+MP通貨
・GDP:1億1000万エーテル ・人口:約850万人
・観光名所:エーテル証券塔、共感広場
・旅人の財布ガイド:
ビジネスホテル…8エーテル/泊
共感パン(名物)…0.8エーテル
情報端末レンタル…3エーテル/日
「弱さは、資本にならない。だから私は、ただ情報を売る」
――ジェイド・ルミナール(外伝:陰を歩むもの より)
◆ 第三駅:カルセリア王国(Karselia)
騎士と信仰、栄光の血筋が交錯する封建国家。
聖なる魔導騎士団が国の誇りを守り、都市国家との外交は複雑な利害で揺れ動く。
名の継承が力とされるこの国では、魂は“家系”に縛られる。
・政治形態:封建制王政 ・宗教:聖騎士教会(正統多神連合)
・GDP:5,800万エーテル ・人口:約430万人
・観光名所:金剛の騎士塔、天頂の城砦
・旅人の財布ガイド:
馬上の宿(騎士亭)…6エーテル/泊
名誉証(名の贈与)…50エーテル~
神殿パス(巡礼証)…3エーテル/1日
「剣は正義に。名は誇りに。魂は、神に返せ」
――アルベルト騎士団長(アポリアの彼方2 より)
◆ 第四駅:ヴァルト辺境領(Valt)
精霊と土が交信する、森の国。防衛の魔法陣が揺らめくこの地では、五賢者ゼルガの結界が今も森を守り続けている。
共鳴都市エンパシアを訪れたユウトが「魂の共鳴」に目覚めたのもこの領域。
・政治形態:賢者評議制 ・宗教:自然精霊信仰
・GDP:1,600万エーテル ・人口:約90万人
・観光名所:共鳴都市エンパシア、魂の樹海
・旅人の財布ガイド:
精霊小屋(木製宿)…4エーテル/泊
風のパン(自家製)…0.5エーテル
結界体験ツアー…10エーテル/回
「風が教えてくれた。誰かが、私を呼んでいるって」
――リリスの幻影(第八章「魂なき祝詞」より)
◆ 第五駅:カルミア公国(Karmia)
魂の医療が発達した癒しの都。祝福の木の下では、ガルフ賢者が今も祈りを捧げる姿が見られる。
命の価値が、通貨ではなく“共鳴石”で測られるこの国では、魔法は癒しのかたちをとる。
ユウトが初めて「人を救いたい」と願った場所でもある。
・政治形態:共和制 ・経済:共鳴石医療市場
・GDP:2,900万エーテル ・人口:約160万人
・観光名所:祝福の木、癒しの泉、魂の施療院
・旅人の財布ガイド:
治癒宿(魔法診療つき)…10エーテル/泊
癒しの薬茶…1エーテル/杯
魂の診断…7エーテル~
「命は数えられない。だから私は、共鳴に賭ける」
――エレイン賢者(教育の賢者)
◆ 特別駅:ミラティス ― 廃都・豊穣の記憶(Miratis)
旅の終着駅は、湖の底に沈んだかつての繁栄の都。
共感経済の奇跡と、記憶通貨メモリウムの罪。そして、歌姫レアの悲しき封印――
この駅では、列車は止まりません。ただ、夜の湖面にその影を映すだけ。
・政治形態:存在せず(崩壊) ・かつてのGDP:約6,500万エーテル ・人口:ゼロ(全員転出・死亡)
・遺構:豊穣の泉跡、封印の鏡殿、記憶中枢神殿
「私はもう歌えない。でも、あなたが呼んでくれるなら……」
――レア(封印前の記憶)
──名もなき者よ、君の魂はどこへ向かうのか。
この列車の窓から見える景色が、少しでも君の旅路に寄り添えますように。
※本作およびその世界観、登場用語(例:メモリウム™、魂経済、共感通貨など)は、シニフィアンアポリア委員会により創出・管理されたオリジナル作品です。無断転用や類似作品の公開はご遠慮ください。