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クロと旅を。  作者: 春野蒼
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08.力持ち

昨日の受付の女性は見当たらなかった。

今日は休みかな。

ひとまず仕事が張り出してある掲示板を見に行くことに。


薬草採取から魔物討伐、お使いの依頼など様々だ。

ひとまず資料室へ行き、植物や魔物の特徴を調べることに。

スマホで資料の写真を撮りたいが、充電も残り少ないのであきらめる。

なお、相変わらずの圏外である。会社無断欠勤になっちゃったていうか、失踪扱いになるのかな。

もはや絶望的である。

考えてもしょうがいないので気を取り直し、クロもいるし近くの森にでかけることに。


「あっ!あった、薬草!」

毒消しに使える薬草を見つけた!


「クロ、見て!冒険者になって初めて薬草ゲットしたよ!」


クロは大きなあくびをするばかりで全然こちらを見もしない。


「ねぇ、クロってば。」


しかたないとばかりにしっぽで返事をするクロ。


う~ん、猫は大きくても気分屋だ。


「クロ、この薬草がたくさん取れたら、お金が手に入るんだよ。お金が手に入ればおいしいご飯が食べられるよ。だからクロも探さない?」


とことここちらへ近づいてきて、薬草の匂いを嗅ぐクロ。


「にっ!」


まるで付いてこいと言わんばかりのしぐさをするので付いていくと、先ほどよりも沢山の毒消しの薬草が生えた場所に出た。


「クロ~っ、天才!匂いを嗅いだだけでこんなにすぐ見つけちゃうなんて本当に天才だね!

さっすがクロ!」


ちょっと心持ちドヤ顔をしている気がする。


せっせと薬草を集め続けて、気づけば昼に。

昼ご飯を忘れたのでバッグに入っていたカロリー○イトをお昼ごはんにすることに。

クロに小分けの一袋を開けて渡し。自分も2本食べて食事が終わる。


「クロ、そんなにじーっと見てももうないからね。

お腹減ったら、適当に獲物狩ってきていいよ。ただし、遠くへはいかないでね。」


「にっ!」


心得たとばかりにスタッと伏せの状態から立ち上がり、あっという間に森の中へ。


「あっ!クロ待って。獲物狩るなら、素材売れるから食べないところ持ってきてくれると

うれしい。」


「にゃー!」

と返事するが早いかいなくなってしまった。


ひたすら薬草採取に励むこと2時間。

気付くとクロが戻ってきていた。もう戻ってこないかもってちょっと心配したので

ほっとした。


「クロ、戻ってきたんだ。どこにも怪我がないようで安心したよ。

お腹いっぱい食べれた?」


「にゃあ」

と満足そうに顔を洗っている。


「そっか、お腹いっぱい食べれたみたいでよかったよ。今度からちゃんとお昼ごはん忘れず用意するからね。」


「にゃあ」

くわーっと大あくびをしながら返事した。


ふと後ろを振り返ると、3m近くある牛の魔物が!


「ヒッ!」


よく見ると死骸だった。

まだかなり肉がついている。ちょっとグロイ。


もしかして、と思ってクロ見ると夢の中だった。

この大きな牛をクロ1匹で運んできたと思うとちょっと想像がつかない。

どうやって運んだんだろう。クロの倍近い大きさがあるのに。

ひとまずこれを運ぶにはとても時間がかかりそうなので薬草採取を切り上げて町へ戻ることに。


「クロ~。起きて。早く起きないと帰れなくなっちゃうよ~。クロ~。」


のっそり起きたクロと帰り支度をする。


「クロ。これどうやって運んだの?全部持って帰りたいけど、私の力じゃ持って帰れないし。

素材になりそうなものだけ持ち帰るか。どうしよう。」


「にっ!」

なんとクロが牛の下へ入り込み、背中に乗せて歩き出した。


「まさかこうやってここまで運んできたの!!重くない!大丈夫!?」


「にーっ!」


大丈夫と言っているように聞こえたので、ひとまずそのまま歩くことに。


「クロ、重かったら無理はしないでいいからね。」

と言ってみても軽い足取りで歩き続けるクロ。


門の近くまで来ると、衛兵が慌てて走ってきた。

「おい、止まれ!!魔物を町へ入れる訳にはいかん!」


「あの、よく見てください。牛の魔物は死骸で、私の従魔が運んでいるんです。

牛の体が覆いかぶさってよく見えないだけで、下に従魔がいます。」


「本当だ!これは失礼!いや~とんでもない力持ちの従魔だ。

ただこのまま町へ入ると先ほどの私のように勘違いするものがでるだろうからちょっと待っていなさ

い。」


「この荷車を貸そう。見たところ君は冒険者だろう。これはギルドからこの間借りたものだから、

これに獲物を載せてついでに返してくれると助かる。」


「ありがとうございます。ただ荷車そのままではクロが引っ張れないのでどうしたらいいでしょうか?」


「あぁそうだな。馬に荷車を引かせるのと同じにすればいいんだ。ちょっとパーツを取ってくるから待っていなさい。」


そう言ってパーツを持ってきてテキパキと荷車に取り付けてくれる。


「うん。これで大丈夫だ。このパーツは次ここの門を通る時にでも返してくれ。

では気を付けていくんだぞ。」


「ありがとうございます!必ず返します。

私はソラと申しますが、よければお名前伺ってもよろしいですか?」


「俺か。俺はトールだ。よろしくな!」


「はい、トールさん!よろしくお願いします!」


「じゃあ俺は仕事に戻る。またな!」


「はい!また!」手を振りながら別れ、冒険者ギルドを目指す。


「クロ、荷車引き平気そう?どっかに負荷かかって痛いとかない?」


「にゃあ」


平気そうな顔をしているので、大丈夫そうだ。


冒険者ギルドに付いた。

受付の人に行って荷車を建物後ろにまわして、解体場へ直接運び込む。クロの食べかけであることも一応説明した。

それと荷車も井戸があったので、そこで綺麗にしてから返却した。

もちろんパーツは外して持っている。


牛の魔物の査定を待つ間、薬草の査定も済ませてきた。薬草は50ダルだった。朝から5時間採取して50ダル、まずまずと言ったところか。


やっと牛の査定が終わった。金額は1100ダルだった。

クロが美味しいところだけを食べていたらしくてそれで査定が下がったようだ。

買い取り額が下がってもいいなら肉も持ち帰れるそうだ。


「クロ。今日の晩御飯、牛の魔物のお肉食べたい?私は食べてみたいなぁ。

きっと宿屋の人に調理をお願いすれば(別料金)きっともっとおいしくなるよ!」


途端クロの目がちょっとキラキラした。

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