07.一緒にごはん!
「いらっしゃいませ~!1名と1匹ですか?」
「はい。」
「かしこまりました!こちらの受付表に記載してください。」
受付表に記載し、荷物を持ってくれるというので預ける。
部屋は2階で清潔感のあるこざっぱりした部屋だった。
気が付けばもう夕暮れだった。
明日は朝一番に冒険者ギルドに行って仕事を探さなきゃ!と決意!
夕飯を食べるために1階の食堂へ降りる。
「いらっしゃい。お好きな席へお座りください。ちなみにあの辺は酔っ払いの常連が集まるので、
こっちがおすすめですよ~!」と教えてもらった。
席に付き、「今日の夕飯メニューはこちらです。どちらを注文しますか?」
肉と魚だったので、肉を注文することに。
「そちらの従魔ちゃんも同じものでいいですか?」
「ん?従魔って人間の食べ物は害になるのではないんですか?」
「えっ、今まで従魔連れのお客さんたくさん来ましたけど、どの従魔ちゃんも人間と同じものを食べてましたね。なので問題ないと思いますよ。」
「そうそう。従魔は何でも食べるし、何食べても腹壊さないし人間より頑丈だから心配ないよ。」
と突然後ろから声がかかった。見ると猿の従魔を連れた男性がいた。
「そうなんですね。生体に詳しくなかったので、心配だったのですが人間と同じ食べ物でも大丈夫ならよかったです。」
「そうそう。一昔前は従魔には生肉や生魚、野菜のみあげるなんていう風習があったみたいだが。
今じゃ生体への研究も進んで従魔が人と同じ食べ物を食べても害にならないことは証明済みだ。
むしろうまいものを食わせた方が従魔のやる気もあがるってのがもっぱらの常識さ。
俺たち人と一緒だろ。」
「確かにおいしいものを食べると幸せになりますし、おいしいものを食べるために頑張ろうって思えますもんね。」
「そういうことだ。」
男性に教えていくれたお礼を言い、クロに肉と魚どっちがいいか聞いても特に反応がなかったので魚にしてもらった。
料理が運ばれてきた。
こんがり焦げ目がついた豚肉っぽい分厚いステーキに、じゃがいものような付け合わせが山と盛られている。
クロに運ばれてきた魚は、大きな白身魚の焼き目が付いた切り身が真ん中にあり、そのほかイカや野菜などが入ったアクアパッツァに近いものだった。
クロがキラキラした目で私を見ている。
「クロ、食べよっか?いただきます。」
その合図でクロがパクパク食べだした。一心不乱に食べている。
私も食べようと肉にナイフを入れる。じゅわっと肉汁が染み出す。
焼けた肉の香ばしい香りと肉の甘味が口の中に広がる。そのあとに微かに臭みけしの爽やかなハーブの香りがして、いくらでもたべれそうである。
気付けばあっという間に半分を食べきっていた。
視線を感じそちらを向くと、クロが私の皿をじーと見ている。
既にクロの皿はスープの一滴すら残っていないありさまだ。
気にせず食べ進めようとすると、私の膝にクロの前脚がかかった。
それでもなお気にせず、半ば意地で食べ進めるも徐々に体重がかけられていく。
「もうクロっ!クロの分は食べたでしょ。だ~め!」
と言うと尻尾がだらんと垂れ下がった。
「うっ!罪悪感が。」
「仕方ない、ちょっとだけだよ。」といい少し分けると前脚を元に戻し、勢いよくガッツく。
私も最後の一切れを食べ終え、残るはポテトが半分くらい残っているだけ。
このポテトもなめらかで丁寧に味付けされており、ポテトだけでも飽きずに食べ続けられる。
少し視線を感じたので、ポテトも少し分けてあげるとしっぽがゆらゆら揺れた。
クロのせいでちょっと物足りない夕食にはなったが比較的満足。
戻る前にモーニングコールをお願いし、部屋へ戻る。
ベッドに横になると、疲労困憊で瞼がくっつきそう。
このまま寝る訳にもいかないので、鞄に入っていた汗拭きシートで拭いて歯磨きして寝ることに。
本当はお風呂に入りたいけど、風呂なしだから贅沢は言えない。
よし、寝るぞっと思いベッドへ戻ると先客が、、、。
そうクロである。
クロが私の寝るはずだったベッドを占領している。
これでは眠れないではないか!
「ちょっとクロ、もうちょっとどいて。」
とクロを力技でどけて少しスペースを作ることに成功した。
「こんな狭いベッドで寝るはずじゃなかったのに、、、、」
とちょっと不満になりながらもあっという間に寝落ちた。
翌朝。
ドンドン!ドンドン!
「お客さん朝ですよ~!起きてくださ~い!!あっさでっすよーーーーー!!!」
大音量で起こされた。
絶対に目が覚めること間違いないのモーニングコールである。
眠い目を擦りながらドアを開け、起こしてくれたお礼を言う。
「いえいえ。それより本日の朝食のパン、今なら焼きたてなのでお早めに食堂に降りてきてくださいねー!」
身支度をし、1階の食堂へ。
「お客さん、改めておはようございます!
パンは各3個までなら無料で、それ以上のおかわりは有料になります。
スープはおかわり自由です。朝は酔っ払いがいないので、どの席でも大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。ではあちらの席にします。」
「はい!」
宿屋の娘さん、朝から元気いっぱいで微笑ましいな~と思いながら席に着く。
焼きたてパンの香りが食堂中に広まっている。
焼きたてパンの香りってなんでこんなにいい匂いなんだろう。
ぐうっ~。
お腹がなったので、さっそくいただくことに。ちなみにクロも同じ朝食を食べている。
だがパンにはあまり興味がないのか1個食べたところで、おかわりせず食べるのをやめていた。
よし食べようと、焼けたばかりのパリッとしたパンを手でちぎろうとしたがちぎれなかった。
パンの表面がとにかく硬い。硬いフランスパンの×5倍くらい、夏みかんの皮より硬い。
仕方なくスプーンをパンに勢いよくぐさっと刺して割る。中は表面とは違い柔らかそうだった。
割ってみるとパンの香ばしい香りが広がった。だがこれをそのまま食べると口の中を怪我しそうなので、スープに浸す。しばらくつけるとパンの硬い表面がふやけて食べやすくなった。
周りを見るとみんなパンにスープをつけていたので、この食べ方で正解のようだ。
「クロ、パンで口の中怪我してない?大丈夫?」
「にゃっ!」
と涼しい顔で鳴いたので大丈夫なんだろう。
今度食べるときはクロのパンもスープに浸そう。
食べ終えたので、今後の予定を考える。
快適な宿だったので、もう何泊かしていこうと思いお金を先払いで手続きを済ませる。
外に出る支度もし、いざ冒険者ギルドへ出発!