06.冒険者になろう!
カランカラン
ドアを開けると、ドア上につけてあるベルが音を立てた。
中の様子を見てみると、人がまばらだ。
壁にはびっしり紙が貼ってある。
「こんにちは」と窓口の女性に声をかけられた。
「こんにちは。」
「どのようなご用件か伺います。依頼ですが、それとも登録ですか?」
「えっっと。私ギルドのことがよくわからないので、簡単にご説明いただいてもよろしいでしょうか」
「えぇ、いいですよ。当ギルドは西ギルド支部で、冒険者に依頼を出す際にはこちらの用紙へ記載して提出していただきます。ただし依頼内容は何でも受け入れる訳ではないのでご了承ください。
次に登録ですが、冒険者登録のことをいいます。登録料は300ダル。この用紙に記載し、魔力登録していただくとどなたでも冒険者になれますが、冒険者とはいつ死んでもおかしくない職業なので、そこを覚悟した上で書類をご提出ください。また登録料がない方は、素材売買でギルドへ300ダル貯まるまでお金を預けるという方法もあります。素材売買は冒険者以外の方ですと10%手数料を上乗せしていますが、この制度を使用している間は冒険者と同じ手数料にしております。」
「ご説明ありがとうございます。そういう制度があるんですね。」
「はい。ちなみにこの制度は孤児から冒険者になりたい方への救済措置として始めたのがきっかけです。」
「そうだったんですね。そのような制度があれば助かる方はたくさんいるでしょうね。」
「そうですね。今ではお金を貯めるのが苦手な方も、この制度を利用して冒険者になった方がたくさんいます。」
受付の女性に色々教えてもらい、素材というと熊の宝石があるがあれを売ってもいいか小声で黒猫に
一応聞いてみることに。するとくわぁ~っと大きなあくびをして興味の欠片もなさそうだ。
「すみません、今回は冒険者登録をしたいのですが持ち合わせがないので素材売買でもいいでしょうか。」
「はい、構いません。」
というわけで熊の宝石を売却するために窓口に出した。すると受付の女性がちょっと慌てて。
「少々お待ちください。」と言って受付の奥に行ってしまった。
戻ってくると何やら用紙をもっている。
「あの、この宝石はどこで取ってきましたか?」
「今朝森の中で2mの熊に遭遇し、この黒猫が倒したものを持ってきました。」
「森というと、ここから近い森は魔の森よね。魔の森から持ち帰ったということでしょうか?」
「森の名前はわかりませんが、門を出てずっと行った先にある森です」
「であれば、魔の森で間違いありませんね。あそこは魔物の巣窟で時折魔物が村へ下りてきて
被害を出すので、その度に駆除依頼がなされていたのです。
今回も緋色熊の討伐依頼が出ており、討伐隊が組まれ村へ向かう予定でした。
ですので、ありがとうございます。」
「えっでも、これがその討伐依頼の出ていた熊と同じ確証はないどこにもないんですが、、、」
「それは大丈夫です。偵察した魔法使いが目印をつけており、熊の個体判定ができるようになっているんです。今回売買で預けていただいた魔石が討伐対象個体と同じなので問題ないですよ。」
と説明を受けた。
持ってきた用紙は討伐依頼用紙で、そこに受領サインをした。
討伐依頼料はBランクの個体だった為、1000ダルだった。
「こちらの討伐料で登録料をお支払いできますが、魔石はこのまま売買して問題ありませんか?」
う~ん、元手は多いに越したことはないしな。うん、売却しよっ。
「売却でお願いします。」
「かしこまりました。査定しますので少々お待ちください。」
結局あの魔石は1200ダルになって返ってきた。ギルドでお金を預ける(銀行のように)ことも可能なので、いくらか預けた。
冒険者登録用紙をもらい、記入しようとして止まった。
「(出身かあ。どうしよう、日本て正直に書いてもいいのかな。もし異世界なら面倒なことになったりしないかな。)」
「どうされました?」
「出身が、、、」
「あ~、もしかして村の名前がわからないとかですか。地方だと村の名前を知らずとも生活ができるので、登録しようとして初めて村の名前を知らないことに気が付く人もいるんですよ。ですので空欄でも大丈夫ですよ。それと生年月日もあいまいな方が多いので、だいたいでいいですよ」
とのことで、受付の女性に自分の年齢を言ってそこから逆算した歴と月を教えてもらい、記入した。
名前、どうしよう。ゲームだと真明?明かすと魔法で縛られるとか聞いたことあるから、ここが異世界なら無難に偽名にしよう。戸籍確認とかないだろうし。
という訳で偽名は「ソラ」にした。一通り書き終え提出した。
「これにて冒険者登録手続きは終了ですが、使い魔がいらっしゃるようなので従魔登録をおすすめします。いかがいたしますか。」
「従魔登録って何ですか?」
「従魔登録とは文字通り従魔を使役する契約ですね。この契約を結んでいれば従魔が盗まれた時にギルドで被害届を受理できます。それに宿屋やたまに門で従魔登録済みか聞かれるので、しなくても問題はないですが、していた方が何かと便利ですよ。」
「そうなんですね、ちょっと考えさせてください。」
「ねぇ、君。私の従魔になる気はある?このまま一緒にいるなら従魔登録をした方がいいけど、
どうしよう。してもいい?」
「にゃっ」
「本当にいいの?」
「なーお」
「従魔登録しても大丈夫そうなので、お願いします。」
「ふふっ、さすがはテイマーですね。意思の疎通がバッチリです。
登録料は200ダルになります。」
「これでお願いします。」
登録料を支払い終わると、従魔の魔力を登録するそうだ。
「この板の上に前脚を載せてください。」
「君、前脚ここに乗せてくれる?」
そう言うとすんなり乗せてくれた。
「これで従魔の方は契約が終わりです。最後にこちらに従魔の名前を記入してください。」
「名前。名前ですね。どうしよう、何て名前がいいかな。」
「(黒猫だからクロとか?安直かな?ちょっと呼んでみよう)」
「クロ~」
「にっ」
「おっ反応した、君の名前はクロでいいかい?」
「にゃっ」
ということでクロに決定した。こんな単純に決めてよかったんだろうか。
もう少し捻ればよかったかなと考えたが、本人がよさそうなのでひとまずこれでいくことにした。
「あの、もし従魔の名前を変更したい時はどうすればいいですか?」
「その際はギルドで手続き修正していただければ問題ありません。」
「そうですか。では変更したい時はそうします。」
「ねぇクロ。もしその名前が気に入らなかったらいつでも言ってね。変えることもできるからね。」
クロは優雅にしっぽを振るばかりできいちゃいなかった。
そのほか受付の女性から依頼を受ける際の注意点や街や森で活動する際の注意点を聞いた。
「以上で説明は終了となりますが、他に聞きたいことはありますか?」
「物価や通貨の単位がわからないので教えていただけますか?それと近くに服屋と従魔連れでも泊まれる安宿はありますか?」
「そうですね、では通貨から教えましょうか。
通貨は半ダル、1ダル、10ダル、100ダル、1000ダル、5000ダルとなっております。
半ダルが半鉄貨1枚ですね。1ダルが銅貨1枚、10ダルが鉄貨1枚、100ダルが銀貨1枚、1000ダルで金貨1枚。5000ダルで白金貨1枚となっています。
物価は1ダルでパン2~3つ程買えます。果物なら2ダルです。
街の食堂でしたら5ダルあれば食べれますね。
あと服は古着なら10ダルから。討伐時の装備品はギルドの売店で一式100ダルで販売しているので
どうぞ寄ってみてください。
それから宿屋は20ダルからですね。ですが安いところは治安が悪いのでおすすめしません。
私のおすすめの宿はツバメ屋ですね。値段は40ダルですが治安がいいし宿も清潔で店主も気さくな方なのでよかったら行ってみてください。服屋はこのギルドを出ると右手3ブロック先と5ブロック先にあります。おすすめは5ブロック先ですね。店主がたくさん買ったお客さんには値引きしてくれます。」
「色々教えていただき、ありがとうございます。」
「いえいえ、またわからないことがありましたら、いつでも聞いてください!」
お礼を言って受付を後にした。
「あっ、受付の人の名前聞き忘れた。あんなに色々丁寧に教えてくれたから今度お礼したいな」
と思いつつ、売店で装備一式を購入し、さらに教えてもらった5ブロック先の服屋さんへ向かった。
服屋で上下一式と下着を3日分と鞄、それから靴を買った。たくさん買ってくれたとのことで10%オフにしてもらえた!
それから教えてもらったおすすめ宿ツバメ屋に向かった。
日本の服装だったので、町で大分浮いてました。
通行人の視線がチラチラ。
ひとまず洋品店で町でも浮かない服装をGetしました!
それと通貨を日本円で簡単にご説明します。
半ダル(半鉄貨)=50円
1ダル(鉄貨)=100円
10ダル(銅貨)=1000円
100ダル(銀貨)=10,000円
1000ダル(金貨)=100,000円
5000ダル(白金貨)=500,000円となっております。