04.一緒に
そうつぶやいた瞬間、熊が視界から消えていた。
その直後すさまじい音があたりに響く。見ると熊が10m先に吹っ飛ばされている。
吹っ飛ばしたのは、お察しの黒猫。
「ニャッ!」
黒猫がこちらを振り返り、鳴いた。
なんだか向こうへ逃げろって言ってる雰囲気?がして。
慌てて逃げる。
すると私が離れたのを確認して、また攻撃を再開する。
黒猫が吹っ飛んだ熊の上に飛び上がり鋭い爪で一裂き。
決着はあっけなくついた。
熊はこと切れたようだ。
とことこ尻尾をゆらゆら揺らしながら上機嫌でこちらへ戻ってくる黒猫。
「うわ~、熊を瞬殺した!なんて強いの!なんて強くてかわいいの!
本当にさっきも今も助けてくれて本っ当にありがとう!!黒猫様、尊い、大好き!!」
そう言ったら、ドヤ顔が気のせいかちょっと増した気がする。
「本当にこの黒猫がいなかったら、熊に襲われて死んでたかもしれないんだよね。本当に本当に感謝してもし足りない。君は命の恩人だね!ありがとう!」ともう1度お礼を言った。
もう1度自分を襲おうとした熊(死骸)を恐る恐る見てみると、熊の胸元からキラキラしたのが覗いている。
「なんだろう、あれ?」
熊を見ていると、「にっ」と鳴いた。
「あの心臓のあたりにあるキラキラ何かな?」と話しかけてみる。
すると黒猫が熊の元へ行き、心臓の当たりをシャッと切り裂くと宝石のようなものが落ちてきた。
黒猫が宝石を手でパシッと払うようにしてこちらへ転がしてきた。
少し残っていたペットボトルの水をかけ、ティッシュで拭き綺麗にする。
すると赤いようなオレンジ色のようなキラキラした宝石が。
綺麗にした宝石を黒猫に返そうとするも興味がかけらもないと言う仕草を見せたので
仕方なく鞄にしまい、保管することに。
ひとまずここにいてもまた熊やら巨大な虫が出てきても困るので移動することに。
「ねぇ、森の出口知らない?人里の方に行ける道、知ってる?」
ダメもとで黒猫に聞いてみた。
するとこっちへこいと言わんばかりにちらちら振り返りながらこちらを見ている。
一人で山の中を歩いても下山できる気がしない、というか生き残れる自信がないのでひとまずついていくことに。
歩くこと4時間。。。
「つっかれた~!!!もう足しんどっ!ていうか痛い!オフィスワークで運動不足の私に
この長距離移動しんどすぎっ!!」
と一人悪態をつく。
もうメイクは汗でどろどろだし、足元も泥だらけである。
「本っ当に足元スニーカーでよかった!」
うちの会社はスニーカー(地味目)がOKなので、日によってスニーカーだったりパンプスだったりで
通勤している。昨日はスニーカーを履いていたのだが、これがパンプスだったら足が死んでる、今頃本当に動けなかったかも。
「んにゃっ」
なんだか黒猫にあとちょっとと言われているようで、もうひと踏ん張りして足に力を入れ歩くことに。
数十分後、とうとう森一色から土を踏む固めた幅1m程の道へ出た!
「もう無理~!!」
と言いながら、地面に倒れこむ私。
仰向けになると大きく息を吸い込んだ。
綺麗な青空が広がっている。しばらく目をつむり深呼吸を繰り返す。
「マジでしんどかった!」
「にゃにゃ!」
よく頑張ったと言ってくれているように思えた。
そのまま20分ほど寝転がったまま死んだように休憩を取った。
「さてとどっちに行こうかな?」
「ねぇ、こっちとこっちどっちの方が人がたくさんいる?」
「にゃっ」
ダメもとで聞いてみらた、なんと黒猫は顔を反対へ向けた。
もしかして?この黒猫言葉がわかる?
「ねぇ、君。もしかしなくても私の言葉わかるの?」
ぷいっとそっぽを向かれた。
なんかこの反応、わかっててそっぽを向いてるっぽい。
立ち上がって大きく伸びをして、足のストレッチをし
また歩くことに。
歩く方向はもちろん黒猫が教えてくれた方向。
歩き出すと後ろを黒猫がついてくる。
「ん? なんかなつかれた?」
「君も一緒に来るかい?」
聞いてみてたがしっぽをゆらゆらさせながら歩いているだけで
返事は返ってこなかった。
「まっいいか!旅の友は多い方がいいし!」