08:シャルル王女
「アシエ! アシエ・ノプテルはいるか!!」
倒れたディーンをベッドに寝かせていると、また名前を呼ばれた。
やれやれ、今日は来客の多い日だ。
こんな田舎の村なのに。
「はいはーい」
ディーンを警備兵たちに任せて外へ出ると、そこにはデカい甲冑が並んでいた。
そしてその甲冑たちの奥から見知った少女が姿を現した。
「アシエ、お久しぶりです。先日のお礼に参りました」
「おー、元気だったか? ケガとかなくてよかったな」
「なっ……おい、貴様!! シャルル王女になんて無礼な態度を!!」
少女の背後に並んでいたデカい甲冑の人たちに怒られる。
……え?
「げっ!? マジで王女さまだったの!?」
勇者パーティの一員として、王様には何度か会ったことあるんだけど、王女様にはあったことがないんだよな。
まさかこの前に助けたこの子が王女さまだったとは……。
「だからその無礼な態度を止めろ!?」
「こら、お止めなさい! 良いんです。アシエは特別です! この人は私の命の恩人ですよ?」
「ハ、ハッ! 申し訳ござません!」
騎士がガシャンと甲冑を揺らして膝をつく。
肩のエンブレムは王宮騎士たちの証だ。
ディーンが憧れた最高の騎士たちも、王女様の前では形無しだな。
「改めまして私はシャルル。シャルル・オルレアンです」
シャルルが優雅にお辞儀をする。
銀色の髪と眼は王族の証って聞いてたけど……マジかぁ。
ってことは俺、王女さまを抱きかかえてしまったのか!?
「あわわ! 先日はそうとも知らず、無礼な態度を……!!」
やべぇ。
超やべぇ!
確か国王って王女さまを溺愛してるんだよな。
王女に無礼を働いたら即、処刑……なんて有名な話だ。
うん。
死んだな、俺。
噂によると両目を抉って口にぶちこまれたまま斬首されるらしい。
ひでぇな。
「止めてください! アナタは私の命の恩人なんですから!!」
「いえ、良いんです。おとなしくえぐられた両目をくわえたまま斬首されますから」
「処刑方法が今まで聞いたことないくらいエグい!? そしてとっても具体的!?」
やっとディーンっていう友達も出来そうで、新しい居場所を見つけられそうだったんだけどな……。
「もう! 妙な噂を真に受けないでください! あれくらいで処刑なんてされませんよ! と言うか私がさせませんから!!」
「そ、そうなんですか……?」
「敬語もやめてください。アナタには対等な1人として私を見て欲しいんです」
「そ、そうか……わかったよ王女さま」
「シャルル、です」
「シャ、シャルル……」
「はい、アシエ♪」
シャルルが満開の花みたいに笑顔を咲かせる。
さすが王女さま、見たことないくらい眩しいぜ。
「私はずっと対等なお友達が欲しかったんです! 私と同じくらいかわいい女の子なんて初めて出会えたんですから♪」
この子、見た目に寄らず自信家だな!?
……確かに美少女だとは思うけど。
「って、いや俺、男なんだけど……ほら、悪役令嬢(♂)って新聞にも……」
「わかっています! 理解っていますよ! そんなのデマなんですよね!? 悪役令嬢……しかも男だなんて! この世の男なんてクズばっかりなのに! こんなに優しくてかわいいアシエが男なワケがない!! 勇者のこんなデマを信じているおバカさんたちはどこに眼をつけているんでしょうね!?!?」
「お、おう! 確かにデマではあるんだけど……」
いや、でも男って所は本当で…………
「この前もアシエだったから良かったですけど、男に抱きあげられるなんて考えたくもないです! もし男だったら斬首してたところですわ♪」
男だってバレたら俺の首がなんか大変なことになりそうだな!?!?
「あぁ、良かった! 改めて近くで見ても本当に可愛い! すごぉい、お肌ツルツル、もっちもっちぃ!! ハァ、ハァン……! やっぱり私たち最高のお友達になれると思いますのよ!! アハァン……!!」
これ本当に友人として見られてるか!?
「そ、そうだな??」
とにかくシャルルは楽しそうだけど、こっちはそれどころじゃないんだよな。
だってシャルルの背後の騎士たちからすごい怨念みたいなオーラが出てるから。
もう『王女さまになんたる無礼を!!!!!!』とか聞こえてきそうだから。
「ま、まぁ、良かったら上がっていくか? 王女さまを招いて良い家じゃないかも知れないけど……」
ボロボロのボロ小屋だからな。
斬首か?
「いえ、気持ちはありがたいのですが用事がありますので……アシエも見ていたのでしょう? 勇者に与えられる試練の話」
そう言ってシャルルは俺が手に持っていた新聞に視線を向けた。
「あぁ、さっき見たところだよ……本当だったのか、この話」
「えぇ、そうです。今日は勇者レオンに試練を与えに来たのです。ダンジョンまで勇者を見送ったのですが、ちょうど、近くだったのでこちらにも立ち寄らせていただきました。またすぐに戻らなければいけないのです」
「え? ダンジョン? 近くにあんの?」
初耳なんだけど?
それこの村が危なくね??
「そうです。なぜか昔からこの村の近くには危険なダンジョンが多いらしくて、ダンジョンの主を討伐する予定があったのです。ですからその内の一つを試練として選びました。ダンジョンの名は【絶零竜アイスドラゴンの巣】です!」
ドラゴンの巣って、これまたヤバそうなダンジョンだな。
マジでヤベーじゃんこの村。
「勇者レオンには単独でのドラゴン退治を依頼しています。アナタを追放した勇者が、アナタにできた単独でのドラゴン退治をできないなんて言わせません!」
「シャルル……」
なるほど、シャルルも俺の理不尽な追放に怒ってくれていたのか。
思ったよりも身近なところに俺を信じてくれる人がいたんだな。
やっぱり、ディーンの言う通りだ。
俺は目の前がちゃんと見えてなかった。
諦めないで前を向けば、もっと俺の話を、俺の事を信じてくれる人は必ずいる。
俺はもっと…………ん?
「絶零竜アイスドラゴン……だと!?」
なんだよ、それ。
そんなヤツが村の近くにいた?
嘘だろ?
そんなのって……
「行かないと……」
「え? アシエ!? どうするつもりです!?」
「どうするって、助けるに決まってるだろ!!」
「え? アシエ!? そんな……自分を追放したゲス野郎を助けるだなんて! なんてやさしい人! それでこそ私のお友達!! あぁ~、興奮しますわ!!!!」
俺は居ても立っても居られなくなって家を飛び出した。
シャルルがなんか言っていたけど良く聞こえなかった。
だって、それどころじゃないんだから。
アイスドラゴンだって?
そんなの…………そんなの絶対すごいアイス作れるヤツじゃん!!!!
「待ってろよ!! 今、助けるからな! アイスドラゴン!!!!」
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