1.突然の異世界
朝起きて安く売り出されていた古着に腕を通し、朝食をとったら荷物を持って大学に向かう。
いつもと変わらない朝を僕、青原一樹は今日も過ごしていた。
「あ、お~い!一樹、早く来いよ!」
「涼介、朝からうるさいよ...」
同じ大学に通う親友の涼介が、いつもの交差点で手を大きく振りながら僕を呼ぶ。
まだ人通りの少ない朝だったから良かったけど...。
少し呆れながら駆け寄ると、涼介が突然僕の顔を冬の寒さで凍えた手で挟む。
「冷たっ⁉︎」
「へへっ一樹はあったけぇな!」
「いやいや、冷たすぎでしょ⁉︎どれくらい外にいたんだよ...」
「え~っと...30分くらい?」
「30分⁉︎何でそんなに早く家出るんだよ...」
「だって早く一樹と会いたかったしさ~」
「それなら家に直接来ればいいじゃんか、ここから目と鼻の先なんだし...」
「え、一樹の家上がって良いのか⁉︎前来るなって言ってなかったか?」
「そ・れ・は涼介が僕の家で泥酔して吐きまくったからだろ!......素面の時ならいつでも来ていいし」
「やった!じゃあ今日大学終わったら一緒に一樹の家でビール飲もうぜ!」
「僕の言うこと聞いてた?」
他愛のない話をしながら大学への道を歩く。
涼介は酒癖が悪いからちゃんと見ておかないとな...。
「それとさ、この前言ってた遊園地の件だけど__」
そのまま2人で横断歩道を渡っていた時、涼介の向こう側からトラックが猛スピードでこっちに向かってくるのが見える。
あれ、この距離でスピードが落ちてない?
「___それでさ!一樹」
「涼介‼︎」
明らかにスピードを落とさないトラックに危険を感じ、涼介を進行方向から突き飛ばす。
その瞬間圧倒的な衝撃が僕を襲い、体が遠くに吹き飛ばされる。
「一樹‼︎‼︎‼︎」
そのまま猛スピードで駆け去っていくトラックを尻目に涼介が駆け寄ってくる。
体のあちこちが痛い。中学の時に体育の授業で突き指した時とは比べ物にならないくらいだ。
「りょ、すけ...」
「一樹!しっかりしろ、すぐに救急車呼んでやるから!」
目の前が真っ暗になっていく。
涼介、泣き顔でもイケメンなんだな。僕みたいなフツメンとは大違い...。
「一樹、なぁ頼むから...俺を置いていかないでくれ」
僕ももっと涼介といたかったよ。
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「んっ__」
小鳥の囀りと頬を撫でるように吹く風で目を覚ます。
目を薄く開くと、先ほどまでいたコンクリートジャングルとは真逆の緑に満ち溢れた木々が目に入る。
「え⁉︎」
慌てて体を起こすと、先ほどまで身体中を蝕んでいた傷が綺麗さっぱり無くなっていることに気づく。
「どういうこと...」
呆気にとれる僕を揶揄うかのように鳥の囀りだけが森の中に響いていた。
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