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第7話 面倒な奴

「そう言えば……今回の旅行は菰田が来るんだよな」


「菰田先輩?管理部の……あの人苦手なんで……」


 かなめの言葉を聞いて誠達の『特殊な部隊』の管理部門のトップである主計曹長の三白眼が誠の脳裏に浮かんだ。


「菰田君は……カウラちゃんの担当でしょ?」


 アメリアは苦笑いを浮かべながらカウラの表情を窺った。カウラは訳が分からないというように、ただ烏龍茶を飲み、串焼きを頬張った。


「そう言えば管理部って……普段何をしてるんですか?」


 あてずっぽうでそう言った誠に、三人の女上司は大きくため息をついた。


「あのなあ……うちは『組織』なんだよ。誰がうちの経費の計算してると思ってるんだ?誰がオメエの残業手当を計算してると思ってるんだ?」


 かなめはあきれ果てたというようにラム酒をあおった。


「でも……事務仕事なら、アメリアさんの『運航部』でやってますよね」


 誠は馬鹿にされて少し怒ったようにそう言った。


「うちはあくまで管理部の『下請け』だから。経費の計算は本当は『管理部』の担当なのよ。そこの部長代理が菰田邦弘主計曹長なの。まあ……嫌な奴よ。今回の旅行もしっかり来るみたいだけど」


 そう言うアメリアの表情にはあざけりの色が見て取れて、誠は少し菰田と言う先輩に同情していた。


「一応、アイツは下士官寮の副寮長だぞ。まあ……シンパを集めて珍妙なことをするばかりであまりリーダーシップとかは無いから島田よりは影が薄いがな」


 かなめはそう言うと葉巻をくゆらせる。


「シンパ?」


 誠はかなめの言葉が理解できずに聞き返した。


「そう。あの馬鹿はカウラちゃんの欠点である『盆地胸』に執着する馬鹿よ!私やかなめちゃんみたいに胸が大きいのは不潔なんですって!馬鹿にして!」


 怒りに任せてアメリアがそう言ってビールのグラスを叩きつける。誠は何とか彼女をなだめようと、空いた彼女のグラスにビールを注いだ。


「まあ、菰田の計算は正確だし、判断も適格だ。私は所詮作られた存在だ。どう思われようが仕方がない」


「カウラちゃんがそんなだから連中が増長するのよ!それに、『ラストバタリオン』なら運航部の女子全員がそうじゃないの!まあ連中はみんな頭の中がキモいからこっちからお断りだけど」


 落ち着いた様子のカウラと対照的にアメリアはかなりエキサイトしていた。


 二人の人造人間の様子を眺めながら、誠はビールを飲んで酔ってしまおうと考えた。


「でも……確かに菰田さんは僕のこと嫌ってますよね」


「いいじゃねえか。神前。アイツに好かれてうれしいか?」


 かなめはニヤニヤ笑いながら小夏が運んで来た焼鳥盛り合わせを受取った。


「まあ誰にでも得意不得意はある。人間関係でもそうだと言うだけだ」


 ネギまを手にそう言ってカウラは苦笑いを浮かべた。


「まあ私は菰田君は嫌い!彼ったら笑いものにされると怒るんだもの」


「それは誰でも怒ると思いますけど」


 アメリアのボケに誠は思わずそうツッコんでいた。


「今回の旅行も当然来るのよアレが……あー気持ち悪い」


 アメリアにとって菰田は生理的に受け付けないタイプらしくそう言ってビールを飲み干した。


「確かに僕を嫌ってるのは間違いなさそうですけど……一応僕は新入りなんで」


 誠は控えめにそう言った。かなめはうなづきながら自分の皿のレバーを誠の皿に移した。


「まあいいじゃねえか。アイツも子供じゃねえんだから好き嫌いで残業手当をカットしたりとかしねえだろ?」


「それは……困りますね」


 かなめの言葉に誠は一抹の不安を覚えた。


「まあ、そんなことしたらパートのおばちゃん達に絞められるからね……菰田君は菰田君でまあ苦労してるんだわ……たまには息抜きさせてあげないと……ねえ、カウラちゃん♪」


 そう言ってアメリアは串から一つ一つ肉を抜く作業に没頭しているカウラに声をかけた。


「私が何をすればいいんだ?」


「甘い言葉の一つもかけてあげなさいよ……これ以上、誠ちゃんが菰田君にいじめられたら困るじゃないの……生中もう一つ!」


 ビールを注文しながらアメリアはカウラに向けてそう言った。


「別に実害は今のところないので……カウラさん、気にしなくてもいいですよ」


 控えめに誠はそう言ってみた。確かに誠は菰田から怖い目で見られる以上の被害は誠はまだ受けてはいなかった。


「なあに、アイツもいい大人だ。手は出さないだろうな……島田とは違う」


「島田と違って陰湿に根に持つタイプだからな」


 カウラの言葉にかなめはそう添えた。


「陰湿に根に持つタイプ……」


 誠はレバーを口に運びながらねちねちと小言を言ってくる菰田を想像してうなだれた。


 この旅行では何かが起きる。誠にはその確信だけがあった。

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