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第53話 『特殊な部隊』での特殊な寮のルール

 遼州同盟司法局実動部隊男子寮の前にタクシーが横付けされた。タクシーを降りた誠の前には腕組みをした島田が立っていた。


「いい身分だな……タクシーでお帰りとは」


「そんないい身分だなんて……だって、あそこのバスは豊川駅行きしかなくって……本数も少ないし……」


 誠の口を突いて出る言い訳に島田は呆れながら口にくわえたタバコに手をやる。


「今の時間で帰ってきたってことは、なんもしてねえってことは分かる。もし何かしてたらこの寮から出て行ってもらう。それが寮長である俺が決めたルールだ」


「かなり無茶苦茶なルールですね」


「無茶だろうが何だろうが関係あるか!寮長は俺!俺がここでは一番偉いの!」


 そう言うと島田は誠に背を向けて寮の玄関に消えた。


 誠は少し言いたいこともあったが、とりあえず手にプラモデルの箱を持ったままなのもなんなので、そのまま自室に向かった。


「でも……ここ男子寮だったよな……あの三人が来たら……男子寮じゃ無くなるじゃん」


 寮の階段を上りながら誠はぶつぶつとつぶやいていた。


「そんなに私達が来るのが嫌なのかな?」


 こういう時にはアメリアが現れるのが誠の生活ではもはやお約束になっていた。


「アメリアさん……嫌じゃないですけど……寮長は島田先輩ですよ。あの人無茶苦茶ですよ。それでもいいんですか?」


「誠ちゃんはまだ世の中を分かってないわねえ」


 誠の手からプラモデルの箱を奪い取るとアメリアはそう言って笑った。


「島田君は准尉。私達は将校。軍では階級がすべてなの」


「そんな理屈あの人に通用しますか?」


 島田の馬鹿さ加減をこの一月で思い知っている誠はそう言ってアメリアからプラモデルの箱を奪い返した。


「大丈夫よ。それに島田君はサラの言うことなら大体きくから。いざとなったらサラをけしかければオールオッケーなわけ」


「そんなもんですか……」


 そう言って誠は階段の踊り場を通り抜けて自室に向かった。


「そう言えば女子の下士官の方はどうしてるんですか?ひよこさんとか……確かあの人は軍曹でしたよね」


 誠は何気なくアメリアにそう尋ねてみた。運航部は女性士官だけで構成されているが、医療班のナースである神前ひよこは軍曹で、技術部にも何人か女子の下士官が所属していたはずだった。


「ひよこちゃんは実家から通ってるわよ。確かお父さんと弟と一緒。他の女子の下士官は県警の女子寮に入ってるはずよ」


 アメリアはそう言うとにんまりと笑った。糸目がさらに細くなる。


「そうか……県警の女子寮なら家賃が安いでしょうからね……大変ですね、士官は」


「そうなのよ……でもこれで住居費が一気に減るから……お財布には優しい暮らしになりそうね」


「良かったですね……」


 アメリアには浪費癖があるらしいことを聞いているので誠は心から納得した一言を彼女に返した。


「今日はこれくらいにするわ。家で持ってくる家具を選ぶから」


 そう言うとアメリアは身をひるがえして寮の玄関から出て行った。


「明日から……大変そうだな……」


 明日から闖入する三人の女上司のことを考えながら誠はプラモデルの箱を手に玄関から自室のある二階の部屋に足を向けた。



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