真打登場
ブレットは血が滲む視界で、どうやって全員を逃がすかを考えていた。
(グロリアスの道具の中にはティアの作ったものもあるが、肝心のグロリアスが意識を失ってる)
錬金術士の道具には適性が設けられていて、強い道具は、より強い適性が求められる。
錬金術士の道具は錬金術士に。
そう言われる所以である。
グロリアスは錬金術士の中でも上に位置するからこそ、ティアの道具を借りて使うことが出来た。
ただ、相手はそれを見てグロリアスを集中狙い。
庇った神父共々倒されてしまった。
幸い息はあるが、とどめを刺されればもちろん終わりだ。
睨みを効かせているから、そうさせていないだけで、ブレットもジリジリと削られている。
「さすがは『力』の一族ですね。個体数が減ってより強固になっている」
大袈裟に手を叩きながら、言葉こそは褒めているが、馬鹿にしきった口調で月の化け物は口を歪ませる。
気力で立っているのも限界がきて、片膝立ちになる。
月の化け物が動いた。
自分の力不足に嫌になる。情けない。悔しい。
そういった思いと、申し訳なさを噛み締め最後を迎える覚悟を決めた時、パリンとガラスが割れる音が響く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!!」
ブレットは思わず笑った。
だって、そうだろう。
白夜の登場はまるでティアを連想させてしまったのだから。