移動の魔法
「さて、そろそろ人も居なくなったしティアを探そう」
ミホはさっきいた所まで戻ったはいいが、その先の順路が分からない。
仕方ないと、フラフラ歩き出す。
1個1個教室を覗いてはティアを探すけど、見当たらない。
覗いていると気になることをやってる教室があった。そこにはリーナーがいて、なんと教鞭を振っている。
「辞めたんじゃなかったっけ。なんでいるんだろう。気になる、気になるから隠れて見てようかな」
どうやらリーナーは魔力指導をしているっぽい。
先日リーナーからもっと詳しい事を聞いたが、今生徒に話していることはそれの10分の1も無い。
「……ちょっとごめんね」
リーナーがそう言って出口に向かう。
ばれるっ、と思ったけど別に悪いことじゃないしなーと思い、平然とその場に居座ることにした。
「何やってるんですか、ミホさん」
呆れたように、驚きもしないでミホに話しかける。
何事かと生徒たちが覗いているのが見える。
「ソフィーを探してたけどリーナーが居たから何やってるか気になったの」
「ソフィーを?」
「ここの人達のことが気になって。こっそりと」
「うちの師匠に言ってくれれば編入なりなんなり出来るのに……。とりあえず今日はって……もうこんなに使いこなせるようになったんですね」
リーナーが説教をしてくるので、その場から廊下端まで、文字通り飛んで逃げる。
視線を廊下の壁に固定して魔力を巡らせる。
そして、願えば移動の魔法が発動して、いきなり目の前に壁がある。
発動が容易になったと喜べるけど、移動したあとが不安定という不満もある。
何はともあれリーナーから逃げおおせた。