黒の錬金術士、グロリアス・アストライア
スカーレットは手を横に薙ぎ、空中に雹を作り出す。
パッとすぐには数え切れない程の量。
1個でも食らったら質量から来るダメージは計り知れない。
動きが鈍ればたちまち全てが飛んできて全てを喰らうことになるだろう。
それだけは避けないといけない。
最悪なイメージが頭によぎり冷や汗が流れる。
「……これ程の魔法を有していながらどうして!」
リーナーは風の盾を構築して対抗するしかない。
魔力が切れるまでは受け流し続けるだろうが。
「月の化け物には勝てなかった!それだけだァ!」
弾丸の様な雹は風の盾を易々と通過した。
想定外だ。全く防げないなんて……!
悔みきれない判断ミスに自分を責めるが後の祭り。
人の防衛本能で腕を顔の前に持ってきて体を縮こませる。
しかし、痛みは来なかった。
「……フン」
黒のローブを翻し、右手に何やら色とりどりの『玉』を遊ばせて鼻で笑う男。
「アイツの参謀と聞いていたのにこの程度か。ガッカリた」
「誰」
「貴方は」
スカーレットとリーナーの問いかけが同時になる。
一瞬の膠着が生まれ、男はリーナー側へ歩みを進める。
「黒の錬金術士、グロリアス・アストライア」
「アストライア!?」