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魔法戦
「分かった、分かった」
そう言っておもむろに杖を顕現させる。
目を閉じて、ゆっくりと開ける。
右目は青の揺らめき。左目は黄色の揺らめきの『魔眼』と変貌していた。
立ち振る舞いに責任を負うものとしての貫録がある。
曲がりなりにも2人を従えるリーダーなのだ。
それも、命を賭して繋いだ関係性。
生半可な生き方では無い。
「ふぅ……。闘うのは苦手なんですけどね」
リーナーとて、常に過去が黒い手を伸ばし首を絞める。
影が囁く。『お前は、のうのうと生きていい人間では無い』と。
しかし、それらの闇をたった一人の錬金術士が明るく照らした。
無くなった訳では無い。
輝きの前にその闇は現れないだけで。
本当に、自分が情けない。
少しティアさんから離れただけでこんなにも気持ちが落ち込んでしまうなんて。
大人としてあるまじき情緒。
「ソフィーさんにも顔向け、出来ないですもんね」
リーナーは杖を構えた。
見据えるのは魔眼使い。
対してコチラは風の魔法使い。分は悪い。
一陣の風が吹き荒れる。魔法戦が始まる。