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リーナーとスカーレット
「ようやく来た。さぁ、殺しなさい」
リーナーが索敵魔法で検知したスカーレットの場所へ向かう途中、何事もない普通の日の事のように、つまらなさそうにスカーレットは歩いてきた。
ただ巡る日に面白みを感じない疲れきった中年のような佇まい。
街中で偶然出くわして、手を挙げて軽く挨拶するようなノリでそんなことを言うのだった。
「……今、貴女はどういう状況ですか」
リーナーは慎重に尋ねる。不意に襲われても大丈夫な様に後ろ手に杖は持ちながら。
リーナーは推測する。
自分自身と同じくNo.の烙印を押されてしまったのではないかと。
知らずの内に『自分』が崩壊しているのではないかと。
そうなっていたら、『卑怯』という言葉は無くなり、非人道的な事はこの世には無いと錯覚する。
「別に。しくじったなぁとしか。私はあの子達に報いてあげられなかった。それだけ。だから死にたいわ」