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今にも泣き出しようだった。
リーナーさんがとある階段まで慎重に進み、階段を降りる訳ではなく、壁に向かって歩き出す。
「えっ!えっ?えっ!?」
驚き、疑問、驚愕の3段活用をしながらペルシャに背中を押されながら着いていく。
真っ暗な空間。閉じ込められるの2回目だなと思いながら1人増えたしと能天気に思うのは、ママが無類の信頼を置く相手の一人が目の前にいるからかもしれない。
リーナー。ブレットと1悶着した後に、ブレットが少ないけど、太い人脈を手繰り寄せてリーナーがやろうとしている『何か』に介入しようとする相手。
彼は裏切りから始まり、安定の地が無い。そんな彼に手を差し伸べた人は何人も居る。
スプラウトさん、ブレット、ティア。
そして、なんどもその手を離してきた男。
それでも、彼を見限ることはしない人達。人が良すぎると思うけど、彼の魔力は澄み切っている。
淀みこそあれど、信用しようと、期待しようとする気もわかる気がした。
「どうして来たんです。……白夜さんですね」
奥歯を噛み締めて、睨みつけながらそういうリーナーは今にも泣き出しようだった。