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禁忌と覚悟
「お前、噂の奴だな?」
「なんの噂でしょうか……」
この人一々圧のある言い方で怖い。
そのせいで震え声になりながら返すのでやっとだ。
「色々予定は狂ってるけど、そんな事で足踏みはできない。だろ?」
「フン。アイツの錬金術を当てにしている部分が大きかったプランがミスだったな」
「うっせー。だが」
ブレットが私を見る。その期待した眼差し。
ズンッと肩に何がのしかかる。
「白夜、それは常にティアが背負ったものだ」
ミラクルがここに来て初めて口を開く。
私の肩に手を乗せてその重圧の意味を知る。
「錬金術士は便利だ。それ故に期待も大きくなっていた。次第に当たり前に。失敗は無い。歴代の錬金術士は優秀で、そうなるのは当たり前にしてしまった」
「待て、なんの話し……」
「だから、錬金術士は自衛のために己を忌避される存在だと世界に誤認させる道具を作った」
「……それ、話してもいいヤツなの?」
「駄目だ。禁忌だ」
「な、何話してるさ!」
「さて、白夜よ。覚悟はあるか?」
「……ッ!」