861/988
そういう事にする
「わっ、すっご」
ノアは薄暗い部屋が霜によって白銀の世界へ変わっていく光景をみて素直な思いを呟いた。
早回しの映像を見ているような気分で、みるみるうちに部屋全体が霜におおわれた。
「ちょっと!何したの!?」
青の魔法使いであるミホが杖を構えノアに詰め寄る。
空中には水の玉が6つ浮かんでいる。
今にも魔法を行使しようとするミホをヨロヨロと立ち上がったソフィーが止める。
「ケホッ、ケホッ……待って。楽になりました、ありがとうね」
ノアは寒さと殺されるという恐怖で縮こまっていた。
そこに、天使のようなソフィーの笑顔を向けられて緊張が溶けたようだ。
「ごめんなさい、ソフィーさん!」
「いいの、私の為だったんでしょう」
そういう事にして話を流すソフィー。ノアはウインクしたソフィーの意図を汲んで大袈裟に肯定するのだった。