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上書き
「えっ、なに」
「どうしたの、ソフィーちゃん」
ソフィーが苦しげに口元を抑える。
気持ち悪そうにその場にしゃがみこんでしまう。
燈火が異変を探す。
部屋の中は乱雑な廃墟。元々の生活は思い出せそうもない部屋。
部屋自体に違和感は無い。ならばと、
「皆気を付けて!何かしらの魔法で干渉を受けてるわ!」
魔力サーチが出来るソフィーが一番最初にやられてしまった。
何が起きているかを把握するにはどうすればいいか頭をめぐらす。
ノアは全員の顔色を伺った。
焦りが滲んでいる。こんなにも動けない人達だっけ。そんな疑問が浮かぶ。
良くないことが起きている。
「流れを変えないと……」
そう考えてもノアが魔法を使える訳では無い。
そういえば、ティアさんから何かしら受け取っていた。
それがどう言ったものか、どのような場面で使うべきか。本当に今使っていいか。
そのような邪念が行動を阻害する。
けれど、本能が叫ぶ。
やれ。と。それは少女の声に聞こえた。
「えいっ!」
部屋中に霜が降りる。
部屋の温度が一気に下がる。
何かが凍るまでも行かずとも、陰鬱とした空気感は清涼感に上書きされた。