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遠い過去7
「その後、少女だった者は月日をかけて2つの存在に別れました」
「2つに……。今の乃愛さんみたいですね」
「劣化に劣化を重ねてますけれどね。もはや、魔法の性質と、魔力。そのうち乃愛もノアも、居なくなります」
私が口をはさもうとしても、手を翳されると、声が出なくなりました。
恨めしく睨みつけても、そもそも私を認識していないかのようになんのリアクションもありません。
淡々と続けます。
「原初の黒霧はそれこそ『起源の魔法』の初めての発症でした」
「……っ、あ。声が出る。そもそも『起源の魔法』ってなんなの?」
「それは言えませんね」
「なんでですか。言えないなら、私にこの光景を見せる意味もありませんよね」
「選んでる訳じゃない。自惚れがすぎる」
「……ムッ」
「ただ、奇跡的な偶然ではありますね。貴女はその意味を知る時得るものがあるでしょう」
「得るもの?」
「貴女の師匠とか。無駄話はここまで。最後です。二つに分けられた黒霧は1つは種族、1つは今の黒霧となりました」
「その種族って」
「吸血鬼」