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遠い過去6
「死が広がっていく……。これじゃまるで」
「『死』の起源?」
村が飲まれていく様子を見ながら呟いた言葉を誰が拾って返してくる。
誰もいないと思っていたから驚き、後ろを向けばノアが居た。
「今の貴女は?」
「失礼な、全員同じノアですよ。初めっからね」
そうは思えなかった。だって、今目の前のノアは表情なんて無くて、たた冷たい氷像の様に思えてしまったから。
「現代の『起源の魔法』は劣化版になっています」
指をさしながら言う。
その視線の先は、既に無かったことになった村と、自身を霧と変えて、雨雲に消えていった黒霧の少女だけ。
「あの少女だったものは死を運ぶ化け物になりました。あの少女だったものがそう教えてくれました」