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咲、白銀、黒霧
ガタガタガタとカフェの中が揺れる。
地震のように下からでは無い。
「冬華さん!」
マリーさんが外を見ながら叫んだ。
その光景は恐ろしいものだった。
「街が……」
目の前すら視認できない黒。
とても怖いと感じた。
それが何故だかはすぐに分かる。
微かに聞こえてくる声だ。
ドス黒い感情だ。
黒霧があるとそれらが嫌という程に感じ取れてしまった。
「任せて」
咲さんが立ち上がる。
白銀さんがギョッとして何かを言おうとする。
咲さんは左手の人差し指を白銀さんの口元に当てる。
白銀さんはなにも言えなくなっていた。
照れてるとかじゃなくて、畏怖とかそういう感じ。
ダンッと足を踏むと咲さんの周りに茨が渦巻き、収束していき杖に変わる。
「わぁ、魔法だ!」
思わず子供のようなことを言ってしまって口元を抑える。
出てしまった言葉は取り消すことはできませんけど。
恥ずかしい。