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仕留め……
ピタリと時が止まったような。
実際、止まった。
それはこちらの式神もおなじ。
微動だにせずこの時に動けるのは俺だけ。
「それも制限があるな」
他人の術式を借りて使っている分、制度は落ちる。
なんだか錬金術士の下に着いたと噂になっている天才の魔法。
『起源の魔法、時』
奴は戻す事に特化していたのに、俺が使うと止まる。
「俺が遠隔が得意でよかった」
今居る足場からは動けないが手は動く。それで充分だった。
偉く拡散しているのが厄介ではあるが、この場一帯で封印してしまえば問題ない。
札は動かせる。
十字に並んだ札は空間に溶け込むようにドロドロになり、次元の裂け目を生む。
ゆっくりと確実に黒霧を吸い込んで行った。
「チッ、制限時間か……」
全てを飲み込む前に止まっていた時は動き出し、黒霧は少量の霧となり霧散していく。
「仕留め損なってんじょねーか」
「……最低限はやったさ」
大きく息を吐く。
後は任せるとしよう。どこぞの誰かさんに。