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賢者
「下がってなさい」
賢者が言う。
いつもの穏やかな雰囲気はない。
黙って従う。
賢者の後ろ姿はどんな危機があっても安心感を与えてくれるだろう。そんな気がしました。
ボソボソとものすごい早口で恐らく呪文を唱えて硝子の部屋を作り出しました。
真四角な部屋には黒霧の人形が閉じ込められました。
敵は抵抗する素振りはみせません。
賢者が掌を正面から真横に降るとパキンと音がして硝子の部屋が破裂しました。
内側からの衝撃。
「こんな、風魔法の使い方があるの?」
クレアちゃんは今の魔法が風系統ものと分かったようで、口元を歪ませます。
なるほど、賢者はクレアちゃんに風系統の魔法を見せた訳ですね。