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母
「月の化け物……」
情報量が多すぎる。
知らない言葉が次々とでてくる。
実際は、私は、知っているのかもしれない。
分からないことだらけで、嘘も本当もこの人次第だけど、知らなくては行けない。
「貴方はなんでそんなにも知っているの」
そう、トーマスは知りすぎている。
私の、この家の事なのに。部外者が知りすぎている。
……違うのか。
「その場に居たからね」
「なぜ」
「君の父親の研究に興味を持ってね」
そう言ってトーマスは私を指さした。
「黒い、霧。それはなんだと思う?ああ、言い方を変えよう。何が元だと思う?」
「知らないわよそんなもの」
「アッハッハッハッハッ!これは傑作だ!その黒霧は、君の母親の魂そのものだよ!」
ぶわっと黒霧が私を覆う。その形はまるで髪の長い女性が私を抱きしめるようじゃないか!
「では、経緯を説明しようか」
私は虚ろな瞳で目の前の人物を見る。
私は信じれるものは全て無かったのか。……偽物だもの当たり前だ。
動けず、呆然とする私に淡々とトーマスは説明を続ける。