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黒霧と少女
ティアとトーマスが黒霧の屋敷にたどり着くほんの少し前。
わたしは逃げた。人の声から。
どうしてあんな楽しそうなの?私はこんなにも苦しんでるのに!
もう何回月が沈み太陽が昇ったか分からない。
どんどん憎悪が増えていく気がする。私が私じゃ無くなる感覚がある。
その度に私の周りを黒い霧が漂う。
まるで大丈夫だと言ってるようだ。逃避かもしれないそれでも今の私が縋れるものはこの正体不明の霧だけ。
宛もなく人が少ない方へ少ない方へと進む。
途中で記憶後抜けることは何回かあったし意識を取り戻す度に人が転がっていた。
私は進んだ。導かれる様にひとつの屋敷の前に辿り着く。